日本歯周病学会会誌
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51 巻 , 2 号
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巻頭言
原著
  • 難波 智美, 葛山 賢司, 石井 麻紀子, 三上 晃一郎, 谷田部 一大, 小村 尚徳, 大塚 秀春, 林 丈一朗, 辰巳 順一, 申 基& ...
    原稿種別: 原著
    2009 年 51 巻 2 号 p. 141-152
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/14
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 明海大学歯学部付属明海大学病院歯周病科においてこれまで実施された歯周病患者におけるインプラント治療の治療成績を分析することにある。歯周治療終了後, 1999年12月から2005年12月の間にインプラント治療を行った患者105名を対象とした。各被験者の残存歯数, probing pocket depth(PPD), プロービング時の出血の有無(bleeding on probing ; BOP)について調査を行った。インプラント治療に関しては, インプラントの種類, 長軸長, 隣在歯の有無, 埋入部位を調査項目とし, 各インプラント周囲骨吸収量(MBL)をエックス線写真から測定した。5年生存率および5年成功率はKaplan-Meier法にて算出し, ログランク検定により比較した。成功率はMBL≦1.5mm, およびMBL≦3.0mmの2段階で定義した。各被験者の調査項目は, MBLとの相関関係をANOVAおよびTukey’s検定法を用いて調査した。結果 : 1)5年生存率は98.7%であり, MBL≦1.5mm成功率は63.6%, およびMBL≦3.0mmでは90.0%であった。2)MBLと初診時のPPD(平均, 最大値, 最小値)とは相関関係が認められなかった。3)MBLとメインテナンス時のPPD最大値とは正の相関が(p=0.045)が認められた。4)MBLとPPD最大値の改善量および初診時の残存歯数とは負の相関(p=0.0094,0.0022)が認められた。以上の研究結果から, 歯周治療が行われた患者のインプラント生存率および成功率は, 歯周治療の有無に関するこれまでの報告とほぼ同様な結果が得られた。MBLが初診時のPPDと相関せず, メインテナンス時のPPD最大値およびPPD改善量と相関することから, インプラント治療の成功率には, 適切な歯周治療およびメインテナンスによる残存歯周囲組織の安定が重要であることが示唆された。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)51(2) : 141-152, 2009
  • 小野崎 純, 佐藤 貞雄, 槻木 恵一
    原稿種別: 原著
    2009 年 51 巻 2 号 p. 153-161
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/14
    ジャーナル フリー
    歯周炎における接合上皮の深行増殖の過程には, 歯肉上皮と歯根膜の間の上皮―間葉系の相互作用が深く関わっているものと思われるが, その詳細にはいまだ不明な点が多い。歯周炎のような組織破壊を伴う病態においては, マトリックスメタロプロテアーゼの関与が指摘されているが, 中でも付着上皮基底板の主要な構成成分であるラミニン-5, タイプIVコラーゲンに強い基質特異性を有するマトリックスメタロプロテアーゼ3(MMP3)は, 重要な役割を果たしている可能性が高い。そこで本研究では, 接合上皮の深行増殖のメカニズムを明らかにするために, 歯根膜細胞, 歯肉線維芽細胞, 歯肉上皮細胞から構成された三次元培養を用いて, 上皮細胞の分化, 増殖機能を再現可能な歯周組織モデルを作製し, MMP3の挙動について検討した。その結果, 高カルシウム濃度(0.97mmol/l)の培養条件下では, 上皮細胞の積層, 基底膜様構造の構築が可能であった。またケラチンの発現もみられた。低カルシウム濃度(0.075mmol/l)での培養条件下では, 上皮細胞は増殖能を維持しながらコラーゲンゲル内に侵入していくことが明らかになり, その部位ではMMP3の発現が認められた。以上のことから接合上皮の深行増殖の過程において, MMP3が重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)51(2) : 153-161, 2009
  • 上野 健一郎, 金山 圭一, 北後 光信, 白木 雅文, 渋谷 俊昭
    原稿種別: 原著
    2009 年 51 巻 2 号 p. 162-168
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/14
    ジャーナル フリー
    歯周組織に及ぼす喫煙の影響を検討する目的で, 歯肉の創傷治癒に及ぼすニコチンの影響について組織学的に検討した。ラット上顎大臼歯部口蓋歯肉を電気メスにて切除した。濃度0.1%, 0.01%, 0.001%のニコチン水溶液を経口投与させた。対照群には蒸留水を与えた。14日後に実験部位を採取した後, 組織切片とし, 組織化学的および組織計測を行った。ニコチン水溶液摂取群では組織計測の結果から歯肉の創傷治癒が遅延した。組織化学的に観察したところニコチン水溶液摂取群では組織中に炎症性細胞の残存と結合組織再生の遅延が見られた。これらの結果からラット実験的歯肉切除後の歯肉の創傷治癒にニコチン摂取が抑制的に関与することが示唆された。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)51(2) : 162-168, 2009
  • 須田 聡, 須田 晃
    原稿種別: 原著
    2009 年 51 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/14
    ジャーナル フリー
    一般歯科医院において3ヶ月から12ヶ月間隔で15年以上32年の間メインテナンスを受けている患者291名の歯の喪失について後ろ向きの調査を行った。患者の平均年齢は39歳で女性が186名, 男性が105名であった。平均26年間のメインテナンス期間中, 1本も歯を失わなかった人は111名, 全体の38.2%であった。歯周基本治療終了後の総歯数は7536本, メインテナンス期間中の喪失歯の総数は626本 (8.3%)で一人当たりの平均喪失歯数は2.2本であった。喪失の原因は歯周疾患が157本 (2.1%), 歯周疾患以外が469本 (6.2%)であった。喪失歯数は大臼歯が一番多く, 一番少なかったのは下顎の犬歯だった。また, 歯の喪失は両側性にほぼ左右対称に進行していくことが示された。今回の我々の調査により, 長期のメインテナンスが歯の喪失を抑制するために効果的である可能性が示唆された。
    日本歯周病学会会誌 (日歯周誌)51 (2) : 169-174, 2009
症例報告
  • 佐藤 昌美
    原稿種別: 症例報告
    専門分野: -ベストハイジニスト賞受賞-
    2009 年 51 巻 2 号 p. 175-185
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/14
    ジャーナル フリー
    本論文は, 広汎型重度慢性歯周炎患者に, 歯周外科治療を行うことなく非外科的に口腔清掃指導を中心にした基本治療により治療した症例を報告する。
    患者は36歳女性で, 44, 45部の歯肉腫脹と咀嚼困難を主訴に来院した。臨床検査とエックス線写真検査の結果, 高度なアタッチメントロスと水平的骨吸収および全顎的に5∼10mmの歯周ポケットが確認された。患者は歯科治療に極度の恐怖心を示し, 非外科的治療を望んだので, 治療法として口腔清掃指導, スケーリング・ルートプレーニングを主体にした歯周基本治療を選択した。
    プラーク除去のため, 歯ブラシ刷毛部の歯肉に対する角度とストロークの回数を指導し, 1日約15分のブラッシングを2ヶ月継続した。次に, スケーリング・ルートプレーニングによる徹底した機械的プラークコントロールを行い, さらに歯ブラシを用いて擦過刺激を加えるオーラルフィジオセラピーを, 深い歯周ポケットを有する歯肉へ行うように指導し, ブラッシング時間は約20分になった。患者は動機付けが強く, 3年後プロ-ビング値は平均2.7mm, BOPは0%になり, 歯槽硬線の明瞭化も認められ歯周組織は改善した。
    この結果は, 機械的なプラーク除去と歯肉へのオーラルフィジオセラピーの相乗効果を示しており, さらにその有益性を検討したいと考えている。また, 患者の健康感を理解することは, セルフケアを効果的に促進させる重要な歯科衛生士の役割であると考えられる。
    日本歯周病学会会誌(日誌周誌)50(2) : 175-185, 2009
歯科衛生士コーナー
その他
  • 石橋 寛二, 吉江 弘正, 川浪 雅光, 池田 雅彦, 山森 徹雄, 坂上 竜資, 池田 和博, 角田 正健, 安田 登, 高柴 正悟, 渡 ...
    原稿種別: その他
    2009 年 51 巻 2 号 p. 191-212
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/14
    ジャーナル フリー
     歯周病は中年期以降の日本人の約8割が罹患する炎症性疾患であり,口腔内の健康のみにとどまらず,全身の健康状態にもさまざまな影響を及ぼすことが知られている。歯周治療の基本は炎症のコントロールであり,この目的で,歯と歯周組織に付着した細菌性プラークと細菌由来物質を徹底して機械的に除去することが必要である。歯科医師・歯科衛生士が行うスケーリング・ルートプレーニングと,患者自らが行うブラッシングなどの日々の口腔ケアがこれに相当する。
     中等度以上に進行した歯周病患者の治療においては,炎症のコントロールのみならず外傷力のコントロールが重要となる。これは支持組織の破壊によって歯の動揺や欠損が生じるため,通常の咬合力であっても歯周組織に対して外傷力として働き,二次性咬合性外傷を惹起する。外傷力が存在すると,炎症・感染のコントロールのみを進めても歯周組織の修復がうまく行われない。
     したがって,歯周病患者の治療においては,治療の初期段階から咬合力の軽減と分散をはかる必要がある。歯周基本治療の段階から,咬合調整,暫間固定,暫間補綴などを行って外傷力をコントロールし,歯周組織へのダメージを最小限に抑える。暫間補綴装置は大きく暫間被覆冠と暫間義歯とに分けられ,ともに顎位を確保し咬合力を分散するのに役立つ。また暫間補綴装置の装着は,最終補綴装置を審美的・機能的に満足のいく形態とするためにも重要である。
     しかし暫間補綴装置にはいくつかの問題点が存在する。長期間にわたって暫間被覆冠を装着すると,材質の劣化あるいはプラークの蓄積を引き起こす。さらにセメントの溶解に伴うカリエス,脱離や破損による顎位の不安定化や頻繁な修理・再製作など,患者・歯科医師の双方にとって望ましくない状況を生じることがある。さらに,暫間補綴装置の強度不足によって,歯周病変の進行抑制に困難が生じることがある。
     暫間補綴装置では歯周病変の進行抑制に限界を生じる例としては,(1)義歯の前処置としての支台歯の補綴症例,(2)多数歯に対する固定が必要な症例,(3)支台歯に側方運動のガイドを付与したい症例などをあげることができる。義歯の支台歯の場合には,レジン製の暫間被覆冠ではなく,レスト座とガイドプレーンを付与した金属冠を装着する必要がある。多数歯に対する固定においても,一定期間安定した咬合を得るためには,レジンではなく金属かセラミックなどの耐摩耗性の高い材料の使用が求められる。いずれの症例においても早期に最終補綴装置を装着して咬合の確保を得ることが好ましい。
     この歯周病患者における早期補綴の提言は,あくまでも咬合性外傷のコントロールによって歯周治療を効果的に進めることを目指しており,患者の希望に沿ってのみ行われるわけではない。咬合性外傷の関与が強く疑われる歯周病患者においてのみ,治療の選択肢の一つとして早期補綴治療を提示する。また早期補綴治療を行う場合には,当該歯の歯周基本治療は終了していることを必要条件とする。患者には,なぜ補綴歯科治療を先行するのかを十分に説明するとともに,歯周治療を完了しないまま来院しなくなると,歯周病の進行を招く結果となってしまうことを理解してもらう。さらに歯周病と全身疾患との関連が注目されるなか,歯周病の治療が口腔内の健康状態を保つことのみでなく,全身の健康に寄与することの重要性を認識してもらうことが必要である。
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