日本歯周病学会会誌
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52 巻, 1 号
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巻頭言
総説
原著
  • 松島 友二
    原稿種別: 原著
    2010 年 52 巻 1 号 p. 24-36
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/24
    ジャーナル フリー
    現在, 歯周組織の治療法の1つとしてエムドゲイン®を用いた再生療法がある。エムドゲイン®の主成分はエナメルマトリクスタンパク質(EMD)でありEMD中の分化増殖因子としてTGF-β1およびBMP-2の2つの活性物質が存在することが報告されている。一方, 歯の硬組織であるセメント質, 象牙質中にも分化増殖因子としてTGF-βおよびBMPが存在することが示され, その含有量についても報告されている。しかしこれらの硬組織に隣接し, その維持, 栄養供給などに関与する軟組織における分化増殖因子についての報告は少ない。そこで本研究では歯根膜組織中のTGF-βおよびBMPなどの分化増殖因子の存在について調べ, 象牙質に隣接する軟組織である歯髄や硬組織のセメント-象牙質と比較検討した。
    ブタ乳中切歯より歯根膜および歯髄を採取し, 4M塩酸グアニジン溶液で抽出後凍結乾燥を行い歯根膜および歯髄の抽出物を得た。また同様の方法で脱灰セメント-象牙質の抽出物も調整した。抽出物中の生理活性は, TGF-β1に対し特異的にALP活性が上昇するRos17/2.8細胞, HPDL細胞およびBMP-2に対し特異的にALP活性が上昇するC2C12細胞を用いて検出した。またTGF-βおよびBMPの確認にはルシフェラーゼアッセイを用いた。その結果歯根膜と歯髄の抽出物添加時にはRos細胞, HPDL細胞にのみALP活性が認められC2C12細胞には活性を認めなかった。また, ルシフェラーゼアッセイにおいてもBMPを確認することはできなかった。TGF-β1にはBMP-2に対する阻害作用が報告されていることからゲル濾過クロマトグラフィーによりTGF-βおよびBMPを分離しその活性を調べた。ゲル濾過クロマトグラフィーにより得た画分ではポジティブコントロールとして用いたセメント-象牙質ではTGF-β1様とBMP-2様の活性が認められたが, 軟組織の歯根膜および歯髄の抽出画分ではTGF-β1様活性のみでBMP-2様の活性を認めなかった。
    以上の結果より, 歯根膜および歯髄にはTGF-β1様活性物質が存在しBMP-2様活性物質が存在しないか, 存在しても極わずかであることが明らかとなった。このことから歯根膜中のTGF-β1様活性物質は歯根膜の未分化な細胞に対して初期の分化を促進し, セメント-象牙質中のBMP-2様活性物質は硬組織細胞への分化誘導に関与している可能性が示唆された。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)52(1) : 24-36, 2009
  • 増永 浩, 傅 亘, Zhengyang Li, Kyung Mi Kim, Hyun Oh, Jin Choe, 篠塚 直樹, 岸本 憲宜 ...
    原稿種別: 原著
    2010 年 52 巻 1 号 p. 37-45
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/24
    ジャーナル フリー
    歯周病はプラークおよびその他の口腔内因子に起因する炎症性疾患である。歯周病の病因論に対する考え方がここ数十年間で大きく変化した結果, 歯周病の治療を成功に導くためには患者の口腔内管理状態の向上が重要であることが再認識されている。
    本研究の目的は, 動機づけに際して通常のブラッシング指導に加えて, 口臭測定および定量的PCR法による細菌検査を行うことによる口腔内への影響について検討することにある。
    被験者としては, 日本大学松戸歯学部付属病院歯周科に来院した60名の慢性歯周炎患者を選択した。60名の被験者は, N, A, B, C群の4つ(各群15名)に分け, 術前の歯周組織検査の結果から各群間の検査値の標準化を行い, ブラッシング指導前後の歯周組織検査の改善程度を比較検討した。N群は通常のブラッシング指導, A群は通常のブラッシング指導に加えてブレストロンを用いた口臭検査, B群は通常のブラッシング指導に加えてProphyromonas gingivalis, Tannerella forsythensis, Aggregatebacter actinomycetemcomitansについて定量的PCR法による細菌検査, C群は通常のブラッシング指導に加えて口臭検査と細菌検査を行った。
    歯周基本治療後の歯周組織検査の結果は, すべての群で初診時に比べ改善を認めた。各群間の比較ではPlaque control record(PCR %)はN群に比べA, B, C群で有意な減少を認めた(p<0.05)。一方, Probing depth, Bleeding on probingでは減少程度に各群間での差異を認めなかった。
    本研究の結果から, 歯周基本治療のブラッシング指導の際に口臭測定および細菌検査を加えて実施することで, 患者のモチベーションの向上が図られ, 歯周基本治療の効果がさらに高まることが考えられた。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)52(1) : 37-45, 2010
症例報告
  • 木村 英隆, 市原 健太郎
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 52 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/24
    ジャーナル フリー
  • 山口 文誉, 上橋 健一, 大家 研二, 志田 哲也
    原稿種別: 症例報告
    専門分野: -専門医最優秀ポスター賞受賞-
    2010 年 52 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/24
    ジャーナル フリー
    臼歯部咬合崩壊を伴う広汎型慢性歯周炎患者に対して, 再生療法・歯周矯正治療・歯周補綴治療(AGC Galvano Br)を含む包括的治療を行った。咬合性外傷からの回避と下顎位の確立の為に改良型ホーレーのバイトプレーン(m-HBP)も使用している。現在, SPT(Supportive Periodontal Therapy)に入り4年が経過しているが, 歯周組織の状態は良好に維持されている。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)52(1) : 53-61, 2010
  • 大谷 久美
    原稿種別: 症例報告
    専門分野: -ベストハイジニスト賞受賞-
    2010 年 52 巻 1 号 p. 62-72
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/24
    ジャーナル フリー
    現在, 我が国は超高齢社会に突入している。しかしながら, 臨床の現場では適切な歯科治療を受けることができない要介護高齢者が急増している。本症例は開口障害のため口腔ケアを含めた歯科治療実施が困難な状況に陥った患者に対する病院歯科の歯科衛生士としてのアプローチを報告する。
    患者は, 81歳の女性で本院に長期入院中であった。脳梗塞後遺症の既往のため, 寝たきりで患者自身による口腔清掃が不可能な状況にあった。これまでは看護師によって日常的口腔清掃を実施し, また, 歯科衛生士によって週一回の割合で専門的口腔ケアが行われていた。しかし, 開口障害のために口腔ケアは技術的に困難であり, 口腔衛生状態は改善されないまま経過していた。そのため家族や病棟看護師から患者の強い口臭が指摘され, あらためて院内歯科に対して, その改善を依頼された。そこで, 我々はまず患者の開口障害の原因追究を試みるために医科に照会したところ, 中枢性の開口筋麻痺と診断された。歯科治療は, 継続的な開口訓練によって, 口腔清掃可能な開口量の確保を第一方針として取り組んだ。その結果, 3ヵ月後には約三横指の開口が可能になり, 専門的口腔ケアが可能になった。その後, 主訴である口臭の改善に加え, 口腔衛生状態や歯周炎症は著明に改善した。さらに口腔衛生状態の改善に相応して, 誤嚥性肺炎に起因すると考えられる発熱の頻度が減少し, 全身状態の改善も見られた。
    以上のことから, 病院歯科に従事する歯科衛生士は, 入院患者の口腔衛生状態の確保を通して, 全身の健康状態の改善に貢献することが重要な責務であると考える。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)52(1) : 62-72, 2010
調査・報告
  • 長岐 祐子, 漆崎 絵美, 高野 聡美, 三辺 正人, 漆原 譲治, 野村 義明
    原稿種別: 調査・報告
    2010 年 52 巻 1 号 p. 73-82
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/24
    ジャーナル フリー
    歯周病は, 糖尿病や動脈硬化性疾患, 喫煙と関連しており, 糖尿病や動脈硬化性疾患のリスク病態とされるメタボリックシンドロームも, 歯周病のリスクを増加させる可能性が示唆されている。本研究の目的は今回行ったアンケート調査から, 歯科クリニック受診患者の, 生活習慣, 全身疾患, 医科の受診状況を把握し, 歯周病と生活習慣病の関連性を明らかにすることである。アンケート調査対象患者は, 歯科クリニックにおいて定期健診中および現在治療中の軽度歯周病患者173名と中等度および重度歯周病患者124名である。アンケート調査は, 患者背景, 生活習慣リスク, 糖尿病および喫煙と歯周病の関連性, 医科の定期健診受診状況, 罹病歴, 服薬状況, 血糖コントロール状況, 喫煙状況について質問し, 回答結果について2群間での統計学的比較検討を行った。その結果, 1. 歯周病の重症化とメタボリックシンドロームの関連項目(高血糖, 高血圧, 肥満, 脂質異常)には, 関連性があることが示唆された。2. 中等度および重度歯周病患者群では, 健康診断の不定期受診率が高く, 生活習慣リスクを有する場合も, 同様の傾向を示した。3. 歯周病と糖尿病の関連性についての患者の認識は低いことが示唆された。4. 中等度および重度歯周病患者群では, 喫煙のリスクの認識率は高いが, 男女ともに高い喫煙率を示した。以上の結果から, 歯周病の重症化に伴い, 生活習慣病や喫煙のリスクが高くなることが示唆された。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)52(1) : 73-82, 2010
技術紹介
  • 伊藤 弘, 橋本 修一, 沼部 幸博
    原稿種別: 技術紹介
    2010 年 52 巻 1 号 p. 83-89
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/24
    ジャーナル フリー
    GCFエラスターゼに対する特異性のある基質を選択するために, 顆粒球・膵臓由来のエラスターゼならびにGCFエラスターゼ活性を各基質(Methoxysuccinyl-Ala-Ala-Pro-Val-p-nitroanilide, Pyr-Pro-Val-p-nitroanilide, Glp-Pro-Val-p-nitroanilide, Boc-D-Phe-Ala-Nle-p-nitroanilide )を用いて解析した。その結果, Pyr-Pro-Val-p-nitroanilideは顆粒球エラスターゼに対すると同様, GCFエラスターゼに対し特異的に作用する基質であることが明らかになった。さらに, 各基質に対するGCFエラスターゼ活性の相対値は, 顆粒球エラスターゼの値とほぼ一致し, 両者間に統計学的な有意差は認めなかった。よって, GCF中のエラスターゼ活性は, 大部分顆粒球エラスターゼに由来することが確認された。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)52(1) : 83-89, 2010
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