日本歯周病学会会誌
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53 巻, 2 号
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巻頭言
原著
  • 秋本 泰介, 中島 啓介, 松本 知久, 村岡 宏祐, 横田 誠
    原稿種別: 原著
    2011 年 53 巻 2 号 p. 113-124
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/12
    ジャーナル フリー
    我々は, 歯周炎により歯の移動と挺出が引き起こされること, 歯周基本治療後に患者の不安傾向が減少することを明らかにした。これらから「歯周炎による歯の移動と挺出がまず始めに引き起こされ, その後, 早期接触が生じる」という仮説を立てた。本研究の目的は, 早期接触が唾液中ストレスマーカーに与える影響を評価することであった。本研究の被験者は19歳から28歳までの健常者22名(男性15名, 女性7名)であった。実験的に早期接触を付与するために1mm厚のポリエステルレジン製プレート装置を作製し, 被験者の下顎右側第一大臼歯に装着させた。また, 不安傾向を評価するために, 全ての被験者にState-TraitAnxietyInventory(STAI)を記入させた。実験的早期接触が咬合力, 咬合接触面積に与える影響は, Dental Prescale®システムにより評価した。早期接触付与前後のパラフィン咀嚼時の全唾液を採取し, 唾液中のクロモグラニンA濃度, コルチゾール濃度, アミラーゼ活性を測定した。咬合力及び咬合接触面積については早期接触付与前後で有意差を認めた。しかし, 唾液中コルチゾール, クロモグラニンA濃度については有意差を認めなかった。唾液アミラーゼ活性は, 早期接触付与後で有意に増加していた。これらの結果から, 実験的な早期接触によりストレス反応が引き起こされる可能性が示唆された。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)53(2) : 113-124, 2011.
  • 西村 実佐子, 佐々木 好幸, 木下 淳博
    原稿種別: 原著
    2011 年 53 巻 2 号 p. 125-132
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/12
    ジャーナル フリー
    われわれは以前に日本歯周病学会専門医が勤務する歯科医院を対象に歯周基本治療における歯科医師と歯科衛生士の連携の実態を調査し報告した。本研究では同調査で得られた202件のデータについて因子分析を行い考察した。
    主因子法・バリマックス回転による因子分析によって因子を抽出し, 回帰法により因子得点を算出した。次に, 院長経験年数, 日本歯周病学会認定歯科衛生士(準備中含む)数, 1人の歯周基本治療患者に1来院あたり歯科衛生士が主として接する時間割合(歯科衛生士チェアタイム比率)の3項目について, 回答によって対象者を複数の群に分け, 因子得点の平均値を比較した。
    因子分析により5因子が抽出された。寄与率の高い順に, 専門的技術の発揮の程度, 治療方針・計画への関与度, 任されている程度, リソース充実度, ユニット稼働状況とした。院長経験年数が13年を超える群では, 専門的技術の発揮の程度, 治療方針・計画への関与度が高かった。日本歯周病学会認定歯科衛生士(準備中含む)数が多いほど, 専門的技術の発揮の程度, 治療方針・計画への関与度, リソース充実度が高かった。歯科衛生士チェアタイム比率が高いほど, 専門的技術の発揮の程度, 任されている程度, リソース充実度が高かった。
    歯科衛生士にとってやりがいのあるチーム医療は, 院長経験が長く, 認定歯科衛生士が多く勤務し, 歯科衛生士チェアタイム比率が長いことと関連が高いことが示唆された。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)53(2) : 125-132, 2011.
  • 村岡 宏祐, 中島 啓介, 横田 誠
    原稿種別: 原著
    2011 年 53 巻 2 号 p. 133-140
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/12
    ジャーナル フリー
    プラークコントロールは, 基本治療において最も重要な治療である。良好なプラークコントロールは, 歯周治療を成功裏に収めるために必要とされている。横田らの報告では, モチベートされた患者においてブラッシング後に上顎臼歯口蓋側, 下顎臼歯舌側, 上顎第二大臼歯頬側にプラークが残存していたことを明らかにした。そこで我々は, ドーム型の改良型歯ブラシを開発し, 改良型歯ブラシのプラーク除去の有効性を調査した。対象者は, インフォームドコンセントが得られ, 全顎的に歯周組織が健康である九州歯科大学附属歯科衛生学院2年生13名であった。歯磨きを実験開始前2日間中止した。コントロールとして, ストレートタイプの平型歯ブラシを用いた。実験開始前のプラーク付着率をO'Learyのプラークコントロールレコード(PCR)を用いて評価し, バス法によるブラッシングを10分間行った後, 再度プラーク付着率を求め, その差から除去率を求めた。改良型歯ブラシは, 平型歯ブラシではプラークが残存しやすい上顎大臼歯頬側, 上顎小臼歯口蓋側, 上顎大臼歯口蓋側, 下顎大臼歯頬側, 下顎前歯舌側, 下顎小臼歯舌側, 下顎大臼歯舌側, 上顎大臼歯隣接面, 下顎大臼歯隣接面において有意に除去率が高かった。改良型歯ブラシは, 完璧なPCRへの鍵になるかもしれない。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)53(2) : 133-140, 2011.
症例報告
  • 小野 智弘, 濱地 貴文, 前田 勝正
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 53 巻 2 号 p. 141-153
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/12
    ジャーナル フリー
    本報では, 九州大学病院歯周病科に来院された重度慢性歯周炎罹患歯を有する患者に対してEMDOGAIN®(EMD)を使用し, 歯科用CBCTを用い3次元的に解析して良好な結果を得た症例を報告する。
    患者は50歳男性, 全身疾患を有さず喫煙歴はない。患者の主訴は右側で噛めない事であった。初診時のプロービングポケットデプス(PPD)は平均4.9mm, また4mm以上のPPD部位は82.7%であった。プラークコントロール及び全顎的なスケーリング・ルートプレーニング, 保存不可能な歯の抜歯などの歯周基本治療後, 垂直性骨欠損部位にEMDを使用した歯周組織再生療法や, 水平性骨欠損部位には歯肉剥離掻爬術を行った。その後, 補綴処置を行いメインテナンスに移行した。現在歯周外科後18カ月であるが, PPDは平均2.2mm, 全顎的に3mm以下で, 歯周組織は安定している。またEMDを用いた25近心側や37遠心側でクリニカルアタッチメントレベル(CAL)の改善が認められた。25近心側はCB MercuRayTM(日立メディコテクノロジー)から得られた画像より, 骨再生が認められ, EMDの有効性や画像診断における歯科用CBCTの有効性が示唆された。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)53(2) : 141-153, 2011.
調査・報告
  • 清水 千津子, 坂井 雅子, 大塩 薫里, 岡 成樹, 八木 宏明, 高見澤 俊樹, 宮崎 真至, 伊藤 公一
    原稿種別: 調査・報告
    2011 年 53 巻 2 号 p. 154-162
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/12
    ジャーナル フリー
    近年, プロフェッショナルメカニカルトゥースクリーニング(Professional Mechanical Tooth Cleaning : PMTC)に, 回転式器具とともにエアスケーラー接続型ナイロン製ブラシ(ナイロンブラシ)が使用されるようになってきた。このナイロンブラシの使用法によっては, 歯面を損傷させる可能性があるものの, これに関する報告は少ない。そこで, このナイロンブラシを用いたPMTCが歯面に与える影響について, その硬さが人のエナメル質および象牙質に近似した擬似エナメル質(ステンレス板)および擬似象牙質(アクリル板)を対象として, PMTC後の表面性状について検討した。PMTCは, 注水下, PMTCペーストのRDA #40およびRDA #250を用いる3条件とし, 操作時間は5, 10および15秒間とした。PMTC終了後の試片については, 表面粗さ(Ra)の測定を行うとともに走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った。その結果, ステンレス試片におけるRaは, 他の条件に比較して#250群で大きくなる傾向を示した。一方, アクリル試片におけるRaは, いずれの条件においてもステンレス試片と比較して表面粗さが増大し, 操作時間が長くなるとその傾向は著明となった。SEM観察の結果からは, 注水および #40群では, 比較的平坦な表面性状を呈していたものの, #250群では試片調整時の削条痕とは異なる粗そう面が観察された。以上のように, 本実験の結果から, 注水下でのエアスケーラー接続型ナイロンブラシの使用は, 歯質表面に及ぼす影響は無視できる程度であることが明らかとなった。しかし, 研磨ペーストを併用するとその種類および作用時間によっては表面が粗そうになることから, PMTCペーストの併用には注意が必要であることが示された。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)53(2):154-162, 2011.
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