日本歯周病学会会誌
Online ISSN : 1880-408X
Print ISSN : 0385-0110
ISSN-L : 0385-0110
54 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
巻頭言
ミニレビュー
原著
  • 田胡 和浩, 光家 由紀子, 東 一善, 宗正 憲和, 根本 賢治, 辻上 弘, 菅谷 彰, 高橋 理, 出口 眞二
    2012 年 54 巻 2 号 p. 155-166
    発行日: 2012/06/28
    公開日: 2013/04/24
    ジャーナル フリー
    現在,歯周疾患により喪失した歯周組織を再生のために種々の研究が行われている。我々は,細胞・足場・成長因子を兼ね備えた細胞凝集塊(スフェロイド)をヒト歯槽骨骨膜由来細胞(HABPCs)を用いて作製し,歯周組織再生の臨床応用への可能性を検討した。下顎の歯周外科処置時に骨膜片から採取した細胞をヒト歯槽骨骨膜由来細胞とし,10 日間平面培養後,細胞をシート状のまま剥離し遠心沈殿させスフェロイドとした。スフェロイドは,1,3,7,14 日間培養後,微細構造学的,免疫組織化学的検索を行った。スフェロイド中の細胞の分布は,形成 1 日目では,ほぼ均一であったが,経時的に,細胞の形状や配列の差異で,表層,中層,深層の3 層に区別できた。また,7 日目以降,深層部の細胞数は減少し,14 日目では,中層を構成する細胞数も減少した。細胞数が減少した部位では,広い細胞間隙が観察された。コラーゲン線維は,細胞間隙を埋めるように深層部より増加し,順次,中層部,表層部と拡大していった。細胞質中の高電子密度の顆粒やオステオポンチン(OP),オステオカルシン(OC)陽性反応も同様の傾向を示した。これらのことから,スフェロイド内の細胞が経時的に深層から表層にかけて分化していく可能性が示唆された。ヒト歯槽骨骨膜由来細胞スフェロイドは,歯槽骨内への移植により骨再生が起こる可能性が示唆された。日本歯周病学会会誌(日歯病誌)54(2):155-166, 2012
  • 美原(和田) 智恵, 徳永 格, 瀬戸 浩行, 坂本 英次郎, 廣島 佑香, 木戸 淳一, 永田 俊彦
    2012 年 54 巻 2 号 p. 167-174
    発行日: 2012/06/28
    公開日: 2013/04/24
    ジャーナル フリー
    オステオプロテジェリン(OPG)は,骨芽細胞に発現する NF-кВ受容体リガンド(receptor activator of NF-кВ ligand:RANKL)のおとり受容体であり,破骨細胞の分化誘導や活性化を抑制する作用がある。すでに骨粗鬆症や癌性骨転移やリウマチ様関節炎などに対する臨床試験で OPG の効果が得られている。歯周病に関しては,ラット実験的歯周炎に対して OPG の全身投与が有効であり歯槽骨吸収が減少することが報告されている。本研究では,ラット実験的歯周炎における OPG の局所投与効果を調べた。上顎第 2 臼歯をナイロン糸で結紮した後,5 日目および 14 日目の当該組織の変化をマイクロ CT および酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ(TRAP)染色の組織観察によって調べた。OPG は結紮後 1 日おきに局所注射した。マイクロ CT 画像でセメントエナメル境から歯槽骨頂までの距離を計測すると,結紮 5 日目および 14 日目とも結紮による明らかな歯槽骨吸収が認められ,結紮し OPG を投与した群(OPG 投与群)での歯槽骨吸収量は結紮対照群よりも有意に少なかった。また,結紮 5 日目において,歯槽骨頂部位での TRAP 陽性細胞数は,OPG 投与群では結紮対照群の1/3 であり,破骨細胞数は有意に少なかった。これらの結果から OPG の局所投与により歯槽骨吸収が抑制されることが示され,将来の歯槽骨吸収予防薬として OPG が有用である可能性が示唆された。日本歯周病学会会誌(日歯周誌)54(2):167-174, 2012
症例報告レビュー
症例報告
  • 五十嵐(武内) 寛子, 伊藤 弘, 沼部 幸博
    2012 年 54 巻 2 号 p. 183-192
    発行日: 2012/06/28
    公開日: 2013/04/24
    ジャーナル フリー
    歯周組織に生じる角化異常の一つに剥離性歯肉炎がある。剥離性歯肉炎は,歯肉の辺縁に慢性潰瘍,剥離性びらんと浮腫性紅斑が特徴的に現れる歯肉炎である。その病態本体は不明な点があり治療法の多くは対症療法が主体となるが,難治性として認められており,その報告例は少ない。本症例は強い疼痛のため口腔衛生が悪化していた慢性剥離性歯肉炎を伴う慢性歯周炎を有する患者に対し,テラ・コートリル軟膏®およびデキサルチン軟膏®を併用し口腔衛生の改善を図ることで良好な経過を辿っている。そこで我々は SPT より長期的に安定した経過を示している症例について報告する。日本歯周病学会会誌(日歯周誌)54(2):183-192, 2012
  • 冨川 和哉, 岩本 義博, 大江 丙午, 新井 英雄, 山本 直史, 前田 博史, 高柴 正悟
    2012 年 54 巻 2 号 p. 193-202
    発行日: 2012/03/28
    公開日: 2013/04/24
    ジャーナル フリー
    歯周病に対する感受性が高い侵襲性歯周炎患者の治療においては,徹底した感染コントロールを行い,疾患活動性を抑制する事が要求される。近年,歯周病原細菌の感染量や歯周炎の活動性を評価するために,PCR 法を応用した細菌 DNA 検査や血清抗体価検査が活用されるようになってきた。今回報告するのは,好中球貪食能が低下傾向であった広汎型侵襲性歯周炎患者の症例である。患者は 25 歳の女性であり,歯周 基本治療,歯周組織再生療法を含む歯周外科治療,そして最終補綴治療を経て SPT に移行し,初診から 15 年間にわたって,臨床計測値の変化および歯周病原細菌に対する血清 IgG 抗体価の変動をモニタリングしている。これによって,SPT 期間中に歯周組織の破壊が進行した 26 の臨床所見と血清 IgG 抗体価の変動を捉えることができた。26 以外の歯周組織は SPT 期間を通して安定した状態を示していたが,血清 IgG 抗体価は 26 の組織破壊の進行と連動して高値を示した。本症例においては局所的な歯周炎の活動性が血清 IgG 抗体価検査によって評価できたと考える。日本歯周病学会会誌(日歯病誌)54(2):193-202, 2012
歯科衛生士コーナー
feedback
Top