本研究の目的は,ヒト歯肉由来線維芽細胞(HGF)を用いた積層細胞シートを SCID マウスへ移植し,生体内における経時的変化を検索することである。HGFs を 3.6×10
4 cells/ml にて初日と 7,11 日後に温度応答性培養器材の同ウェル上へ播種した。積層細胞シート作製のため,Cell Sifter を用いて各ウェルから細胞シートを回収し,一箇所のウェル上へ細胞シートを 15 枚重ねて設置した。その後,3 日間培養を行い,SCID マウス背部皮下へ移植した。移植 1,2,4 週後に屠殺し,組織学的および免疫組織学的染色により検索した。HE 染色により,移植 1,2 週後にて内部に細胞が希薄な間隙を認めた。また,完全に吸収されることは無く,4 週後まで移植片としての形態を保っていた。血管様構造の新生は移植 1 週後にて移植片の表層より認められ,経時的に内部への増加を示した。移植 1 週後より抗ヒト VEGF,FGF-2,VWF 陽性反応を認め,新生された血管様構造には抗マウス CD31 陽性反応が認められた。これらの結果より,移植片への宿主由来血管様構造の新生が認められた。本研究により,HGF 積層細胞シートは移植後も宿主組織から必要な酸素と栄養の供給を受けることが示唆された。日本歯周病学会会誌(日歯周誌)54(4):323-335,2012
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