日本歯周病学会会誌
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55 巻, 4 号
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巻頭言
総説
ミニレビュー
原著
  • 川津 布美, 東 一 善, 根本 賢治, 高橋 理, 出口 眞二
    2014 年 55 巻 4 号 p. 312-325
    発行日: 2014/03/28
    公開日: 2014/04/10
    ジャーナル フリー
    我々は,イヌの実験的骨欠損部に低出力超音波パルス(LIPUS)を照射すると,歯周組織の治癒が促進されることを報告した。しかし,その詳細なメカニズムは明らかでないため,今回は,ヒト歯槽骨骨膜由来細胞(HABPCs)の細胞凝集塊(スフェロイド)を作製して LIPUS を照射し,スフェロイド内の細胞形態および骨基質タンパク発現に与える LIPUS の影響を経時的に検索した。1 日,3,7,および 14 日間,LIPUS を照射したスフェロイドに対し,トルイジンブルーを用いた組織学的検索と,抗オステオポンチン(OP),抗オステオカルシン(OC) を用いた免疫組織化学的検索を行ったところ,1 日目から細胞の走行などにより区別された層構造がスフェロイドに認められたが,照射近位部,照射遠位部,コントロールの順で経時的に層構造は不明瞭になっていった。また,全てのスフェロイドに深層から中層,表層の順で OP と OC 免疫陽性反応が認められた。経時的には,照射近位部,照射遠位部,コントロールの順に,OP,OC 免疫陽性反応が認められ,照射近位部では 1 日目よりスフェロイドの表層から深層へ向けて索状構造が観察された。これらの結果から,LIPUS 照射の影響が大きい照射近位部で早期に OP,OC の発現と索状構造が認められたため,LIPUS 照射により,スフェロイド内の HABPCs の細胞分化の促進と細胞の方向性の変化が起こることが示唆された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)55(4):312-325,2013
症例報告レビュー
症例報告
  • 田中 俊憲, 坂上 竜資
    2014 年 55 巻 4 号 p. 331-339
    発行日: 2014/03/28
    公開日: 2014/04/10
    ジャーナル フリー
    広汎型重度慢性歯周炎患者に対し,非外科的に対応して 10 年間良好な経過が得られた症例を報告する。 本症例では残存歯28歯すべてが長期的に予後不安定とされる Questionable もしくは Hopeless に分類される状態であった。そのため初診時にはかなり多くの歯が保存不可能だと診断した。しかしながら,SRP を中心とした歯周基本治療および患者自身による歯肉縁上のプラークコントロール,術者による歯肉縁下のプラークコントロールおよび咬合のコントロールによって22歯の保存が可能になった。また,定期的な SPTにより10年間に渡ってすべての残存歯の歯周組織の維持安定を図ることができた。最終的に上顎は歯周補綴を行い,下顎は暫間固定にて処置を行った。定期的な SPTにて大きな問題もなく現在まで経過している。 本症例から歯周治療の成功には炎症のコントロールと咬合力のコントロールの両者がバランスよく達成できることが必要不可欠であることが示された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)55(4):331-339,2013
  • 冨川 和哉, 河野 隆幸, 山本 直史, 岩本 義博 , 下江 正幸, 山口 知子, 本郷 昌一, 宮本 学 , 前田 博史, 高柴 正悟
    2014 年 55 巻 4 号 p. 340-348
    発行日: 2014/03/28
    公開日: 2014/04/10
    ジャーナル フリー
    歯周病に対する感受性が高い侵襲性歯周炎患者の治療においては,徹底した感染のコントロールによる疾患活動性の抑制が必要である。とりわけ,歯列不正を伴う歯周炎患者に矯正治療を行うことは,長期に渡る感染のコントロールを行う上で非常に有効である。しかし,歯周炎患者に矯正治療を行う場合に,感染がコントロールされている歯周状態かどうかを決定する基準は未だ明確でない。 今回報告するのは,Agregatibacter actinomycetemcomitans(Aa)の感染が主な病態形成因子と考えられる,初診時 22 歳の広汎型侵襲性歯周炎患者に対して,矯正治療を含めた包括的歯周治療を行った症例である。初診以降,臨床計測値の変化に加えて,細菌 DNA 検査と歯周病原細菌に対する血清 IgG 抗体価検査を用いて,歯周病原細菌の感染度を評価した。その結果,歯周外科治療を含む感染源除去によって,細菌 DNA 検査でAaが検出されず,Aa に対する血清 IgG 抗体価が健常者レベルに推移したことを矯正治療移行前に確認した。すなわち,歯周病原細菌感染度が低下したと判断した後に,矯正治療を行うことで,現在まで良好な SPT を維持している。 本症例においては,Aa の感染度の低下を細菌 DNA 検査と血清 IgG 抗体価を用いて評価することによって,客観的な根拠をもって矯正治療に移行できたと考える。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)55(4):340-348,2013
  • 川本 亜紀, 岩野 義弘, 本橋 碧, 清水 千津子 , 坂井 雅子, 菅野 直之, 伊藤 公一
    2014 年 55 巻 4 号 p. 349-356
    発行日: 2014/03/28
    公開日: 2014/04/10
    ジャーナル フリー
    歯周疾患に影響を与える修飾要因の 1 つに女性ホルモンの影響が考えられる。排卵日や妊娠中の女性ホルモンの増加に伴い,特定の歯周病原菌が増殖し,また宿主の免疫応答が変化すると言われている。今回,広汎型侵襲性歯周炎患者に対し,月経周期,妊娠期,産後期を考慮して行った歯周治療の 1 症例を報告する。患者は 27 歳の女性で,前医での歯周治療後 1 週間経過しても歯肉からの出血が止まらず心配となり当歯科病院を受診した。全身的既往歴,出血傾向に問題はなかった。28 歯中 4 mm 以上の歯周ポケットの割合は 15.5% で,そのうち 27,31,32,33,37,44,47 には 6 mm 以上の歯周ポケットが認められた。初診時(排卵日)は PCR 50.0%,BOP 70.8% で,来院2回目(卵胞期)は PCR 50.0%,BOP 27.8% であった。月経周期において,女性ホルモンの分泌が少ない時期に歯周基本治療を行い,SPT 移行時(排卵日)には 4 mm 以上の歯周ポケット 0.6%,PCR 26.7%,BOP 5.4% に改善した。妊娠時および出産後の排卵日においても歯肉の状態は良好であった。本症例より,妊娠中は歯周病再発の危険性が高いためセルフケアの徹底が重要であること,また産後は患者の生活環境に合わせた口腔衛生管理が必要であることが示された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)55(4):349-356,2013
  • 伊藤 小百合
    2014 年 55 巻 4 号 p. 357-365
    発行日: 2014/03/28
    公開日: 2014/04/10
    ジャーナル フリー
    IgA 腎症は,口腔内慢性感染病巣との関連性が報告されている慢性糸球体腎炎である。50 歳の女性で,IgA 腎症を伴う限局性慢性歯周炎患者に対して 4 年間歯周治療を行い,現在はサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)にて経過観察を行っている症例を報告する。患者の歯肉には発赤,腫脹,排膿が認められ,IgA 腎症の病態に影響している可能性が考えられた。このため,歯周組織の炎症コントロールを徹底することを治療の基本方針とした。また,組織破壊が重度で炎症のコントロールが困難であった 12 と 35 については抜歯となったが,IgA 腎症に対する影響を考慮し,歯周基本治療を主体とした侵襲性の低い治療計画を立案して実践した。感染予防のために,SRP の前に抗生物質を投与した。47 を 46 の位置に移植することによって,咀嚼機能を大きく改善することができた。IgA 腎症に対するステロイド剤と更年期障害に対する女性ホルモンの投与に伴って病態が悪化した時期があったが,定期的な SPT と厳密なプラークコントロールにより歯周炎は改善し,現在は良好な歯周組織の状態が維持できている。腎機能に関しても比較的良好で,1 年に 1 回の内科検診を受けている。歯周病の悪化が IgA 腎症の再発を誘導する可能性があるため,患者の健康状態や腎機能に注意しつつ定期的な SPT と厳密なプラークコントロールを継続していくことが重要である。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)55(4):357-365,2013
教育賞受賞
  • 関野 愉, 石黒 一美, 中田 智之, 沼部 幸博
    2014 年 55 巻 4 号 p. 366-370
    発行日: 2014/03/28
    公開日: 2014/04/10
    ジャーナル フリー
    日本歯科大学生命歯学部では学生が研究・調査を実践する「生命歯学探究」を実地している。全科目の中から歯周病学領域に割当られた第二学年学生 7 名に研究についての講義を行った。前期(平成 23年4月〜9月)は,研究テーマを「歯磨剤によるプラーク形成抑制効果について」に決め,化粧品歯磨剤と医薬部外品歯磨剤(CPC 配合)のプラーク形成抑制効果を比較するランダムな比較試験を行った(研究 1)。その結果,2 種類の歯磨剤に効果の差異がみられなかった。後期(平成 23 年 10 月〜平成 24年1月)は,差がでなかった原因について議論を行ったのち,プロトコールを修正し,「洗口剤によるプラーク形成抑制効果について」をテーマとし CPC 配合洗口剤の効果をプラセボと比較するランダム化比較研究を行った(研究 2)。その結果,CPC 配合洗口剤に有意なプラーク抑制効果が観察された。研究 1 の欠点を徹底的に議論する事で,いくつかの改善点が考えだされ,研究の質を向上させる事に成功した結果,研究 2 の結果を得たと考えられる。この経験を生かし将来の歯科医療の質の発展に寄与していく事が望まれる。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)55(4):366-370,2013
歯科衛生士
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