日本歯周病学会会誌
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56 巻, 4 号
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巻頭言
ミニレビュー
原著
  • 新井 貴子, 今井 奬, 花田 信弘, 鴨井 久一, 沼部 幸博
    2015 年 56 巻 4 号 p. 379-389
    発行日: 2015/01/30
    公開日: 2015/02/18
    ジャーナル フリー
    口腔内空気の分析により歯周組織の状態と歯周ポケット内歯周病原性細菌レベルの予測が可能か検討した。 被験者 30 名の口腔内空気または揮発性硫黄化合物(VSC)濃度を電子嗅覚装置(electronic nose),ガスクロマトグラフィー(GC)および官能試験で分析した。また,歯周病の臨床パラメーターを測定し,刺激唾液中,舌苔および,歯肉縁下プラーク中の歯周病原性細菌数(P. gingivalis, A. actinomycetemcomitans, T. forsythia, P. intermedia, T. denticola)をリアルタイム PCR で算定した。その結果, 1.口腔内の最深 PD 値は官能試験値,Electronic nose total mode および CH3SH/H2S 比と有意な正の相関を示した。 2.Electronic nose total mode と CH3SH/H2S 比の 2 種の測定値と歯肉縁下プラーク中の 5 種の歯周病原性細菌総数との間に有意な相関が認められた(調整済み R2=0.690,p<0.027)。また,歯肉縁下プラーク中の 5 種の歯周病原性細菌総数の予測値と実測値においても有意な正の相関が認められた(R2=0.447,p<0.001)。 以上から,口腔内空気の分析測定により歯周組織の状態や歯肉縁下プラーク中の歯周病原性細菌レベルを判定できる可能性が示唆された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(4):379-389,2014
  • 武井 美佑紀, 中山 洋平, 豊嶋 泉, 廣松 勇樹 , 池田 寛, 小方 頼昌
    2015 年 56 巻 4 号 p. 390-398
    発行日: 2015/01/30
    公開日: 2015/02/18
    ジャーナル フリー
    アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)は,組織傷害時に放出されるため,歯肉溝滲出液(GCF)中の AST 量を測定することで,疾患活動度の判別が可能である。そこで,歯周基本治療と歯周外科治療(エムドゲイン®ゲルを用いた歯周組織再生療法)前後に Periodontal Tissue Monitor(PTM)キットを使用して GCF 中の AST 量(PTM 値)を測定し,probing pocket depth(PPD),clinical attachment level(CAL)および bleeding on probing(BOP)との関係を検索した。歯周基本治療後に 38 部位中 22 部位で PTM 値が改善し,PPD は 22 部位中 20 部位,CAL は 15 部位,BOP は 21 部位で改善または変化しなかった。歯周外科治療後に PTM 値が改善した 42 部位中,PPD は 39 部位,CAL は 32 部位で改善し,BOP は 41 部位で改善または変化がなかった。歯周外科治療後に PTM 値が改善した 42 部位では,平均 PPD と CAL が有意に減少したことから,PTM 値の改善部位は,PPD の減少と付着の獲得が得られる確率が高く,付着の獲得量が大きいほど歯周外科治療後の PTM 値が改善することが示された。以上の結果から,GCF 中の AST 量を臨床評価に応用することは,歯周病の予後判定に有用であると考えられた。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(4):390-398,2014
  • 若林 健史, 中山 洋平, 小方 頼昌
    2015 年 56 巻 4 号 p. 399-405
    発行日: 2015/01/30
    公開日: 2015/02/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,紫外線励起酸素種(O*)と紫外線(UV)を用いた殺菌システムの殺菌効果に関する検討を行った。歯周治療で機械的歯面清掃に頻用されるラバーカップに大腸菌またはカンジダ菌をそれぞれ植菌し,紫外線励起酸素のみ(O*),紫外線のみ(UV),紫外線励起酸素と紫外線(O* + UV)による殺菌を 5 分間および 25 分間行い,コントロール(紫外線励起酸素と紫外線なし)と比較し,残存菌数を 10 倍希釈法および ATP 法にて評価した。 ラバーカップに植菌した大腸菌およびカンジダ菌の殺菌効果を 4 つの群で比較した結果,両菌群で O* + UV,UV,O*,コントロールの順に強い殺菌効果を示した。また,O* + UV と UV を比較すると,有意な紫外線励起酸素の付加的殺菌効果を認めた。 これらの結果から,紫外線励起酸素と紫外線の両者による殺菌効果は,ラバーカップのような非耐熱性および立体的構造の歯科用器具の殺菌に有用であると考えられた。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(4):399-405,2014
  • 大石 匠, 深谷 千絵, 笠井 俊輔, 太田 淳也, 国分 栄仁, 齋藤 淳, 石原 和幸, 中川 種昭
    2015 年 56 巻 4 号 p. 406-413
    発行日: 2015/01/30
    公開日: 2015/02/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,in vitro バイオフィルムに対するシタフロキサシン(STFX)の効果を検討することを目的とした。歯周病においてバイオフィルムは複数菌で構成され,抗菌薬に耐性を示すことが知られている。 STFX はニューキノロン系経口抗菌薬であり嫌気性口腔細菌を含む幅広い抗菌スペクトラムを示す。我々は微量流体デバイス BioFlux を採用した。BioFlux は嫌気条件下で自動的に培地を排出可能であり,本研究に有用と考えた。Porphyromonas gingivalis ATCC33277 および Streptococcus gordonii ATCC35105 の 2 菌種混合液を用い,37℃,2 時間かけバイオフィルムを形成させ,顕微鏡にて確認した。STFX または対照薬アジスロマイシン(AZM)を添加後,嫌気条件下で 5 日間作用させた。薬剤濃度は経口常用量投与時の歯肉組織および歯肉溝滲出液中濃度に基づき,STFX は 0.65 および 1.30 μg/ml,AZM は 2.92,3.95 および 7.90 μg/ml とした。薬剤作用後の生存率は,染色後の画像解析にて定量した。 その結果,抗菌薬作用群すべてにおいて,生存率の減少を認めた。STFX 作用後の生存率は,AZM 各群と比較して有意(p<0.05)に少なかった。以上の結果より,STFX はバイオフィルム中の歯周病原細菌に対して破壊効果を有することが示唆された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(4):406-413,2014
  • 太田 淳也, 深谷 千絵, 笠井 俊輔, 赤松 真也子 , 森川 暁, 田子森 順子, 江口 徹, 税所 芳史 , 河合 俊英, 伊藤 裕 ...
    2015 年 56 巻 4 号 p. 414-422
    発行日: 2015/01/30
    公開日: 2015/02/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,糖尿病患者の歯周病のスクリーニングテストとしての,歯周病原細菌に対する血清 IgG 抗体価(以下抗体価)の有用性を検索するために行った。被験者は,2010 年 7 月から 2011 年 12 月までに慶應義塾大学病院内科に教育入院した 2 型糖尿病患者 28 名(平均年齢 56.6±10.7 歳,男性 18 名,女性 10 名,平均罹患期間 8.7±6.3 年)(平均±標準偏差)とした。初診時に歯周組織検査と血液検査を施行後,歯周基本治療を行い,基本治療終了 1ヶ月後に再評価を行った。抗体価検査はPorphyromonas gingivalis(Pg), Prevotella intermedia(Pi),Eikenella corrodens(Ec), Aggregatibacter actinomycetemcomitans(Aa)の4菌種に行った。 今回検索した検査値の中では,Pg 抗体価と歯周病の病態に関連が認められ,抗体価 1.0 を境界値とした場合に低抗体価群と高抗体価群では,歯周ポケット深さにおいて有意差を認めた。 また初診時の Pg 抗体価と歯周ポケット深さにおいて,有意に高い相関関係を示した。基本治療後の抗体価は低下傾向にあるものの,初診時との有意差は認めなかった。 以上の結果から,糖尿病患者の歯周病スクリーニングに Pg に対する血清抗体価が有用であり,その境界値は 1.0 付近にあることが示唆された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(4):414-422,2014
  • ―脈波伝播速度を用いての検討―
    玉澤 かほる, 玉澤 佳純, 島内 英俊
    2015 年 56 巻 4 号 p. 423-434
    発行日: 2015/01/30
    公開日: 2015/02/18
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は高血圧症患者の冠状動脈系心疾患(CHD)の原因となる動脈硬化の進行と歯周病の状態との関連を検討することにある。動脈硬化の進行は,血圧脈波検査装置を用いて脈波伝播速度(PWV)を測定して評価した。71 人の高血圧症患者(61.1±9.6 歳)を本研究の対象者とした。歯周疾患の臨床的パラメータとして, 6 歯に対して 6 部位のプロービングによるポケット深さ(PD)とプロービング時の出血(BOP)を調べ,また, 4 歯に対して培養法により縁下プラークの細菌叢を調べた。 被験者は PD と BOP の中央値を基に,高値群(PD≧3.8 mm,BOP≧40%)と低値群(PD<3.8 mm,BOP <40%)の 2 群に分けて統計解析を行った。 結果は以下の通りである。 36 部位の PD の平均値は 4.0±1.0 mm ,6 部位の最深 PD の平均値は 6.2±2.2 mm,BOP の平均値は 43.6±29.4%であり,これらの結果より,被験者の歯周病が進行していると推察された。 PWV は BOP 高値群の方が BOP 低値群より有意(p<0.05)に高かった。Prevotella属菌の検出は,PD 高値群の方が PD 低値群より,BOP 高値群の方が BOP 低値群より有意に(p<0.05)高かった。 これらの結果から,BOP 高値群の高血圧症患者では,CHD のリスクが示唆された。さらに,歯周病の進行にPrevotella属菌の関与が推察された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(4):423-434,2014
症例報告レビュー
症例報告
  • 白方 良典, 山本 芳丈, 野口 和行
    2015 年 56 巻 4 号 p. 442-450
    発行日: 2015/01/30
    公開日: 2015/02/18
    ジャーナル フリー
    重度歯周炎患者においては病的で著しい歯の移動(Pathologic tooth migration:PTM)による歯列不正が認められることが少なくない。こうした患者において歯列不正が存在するとブラッシングが困難であるばかりか,さらに咬合の不調和や外傷性咬合が発現することにより歯周炎の増悪や再発が起き易いと考えられる。今回,骨格性下顎前突症と多くのPTMを伴った広汎型重度慢性歯周炎を有する49歳女性患者に,歯周基本治療,骨移植術を含む歯周外科治療,可撤式バイトプレートと矯正用アンカースクリューを利用した部分的矯正治療,および修復・補綴治療を包括的に行った。この結果 , 低侵襲かつ効率的に歯周組織の環境改善と歯列の連続性,適切なアンテリアガイダンスが獲得された。現在,supportive periodontal therapy に入り3年経過したが,良好に歯周組織と咬合の安定が維持されている。本症例から PTM を有する重度慢性歯周炎患者においては,矯正治療を含む包括的治療により PTM を解消し,炎症と力のコントロールを行うことが歯周治療を成功させるために極めて有効であることが示された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(4):442-450,2014
  • 十川 裕子, 竹内 康雄, 片桐 さやか, 木村 文香, 難波 佳子, 小田 茂, 足達 淑子, 和泉 雄一
    2015 年 56 巻 4 号 p. 451-456
    発行日: 2015/01/30
    公開日: 2015/02/18
    ジャーナル フリー
    尋常性天疱瘡は皮膚や粘膜に上皮内水疱を形成する自己免疫疾患であり,歯肉を含む口腔粘膜にもその病変がしばしば認められる。本報では尋常性天疱瘡により著しい浮腫性の腫脹や剥離性のびらんが認められた患者に対し,徹底した口腔清掃指導を軸とした歯周基本治療により,非外科治療のみでも良好な臨床症状の改善を図ることができた一症例を示す。患者は 56 歳女性で,全顎的な歯肉の腫脹,ブラッシング時の出血,歯の動揺を主訴に来院した。30 代で尋常性天疱瘡を発症し皮膚科への通院はしていたものの,継続的な歯科の通院歴はなかった。初診時は歯肉および口腔粘膜に浮腫性の腫脹と剥離性のびらんがあり,4 mm 以上の歯周ポケットが79,7%の部位で認められた。また,疼痛を伴うためブラッシングができないとのことで,プラークや歯石の沈着も多かった。エックス線写真上では中等度の骨吸収が確認された。治療では最初に口腔内の症状に合わせてきめ細かい清掃指導を行ったことで,セルフプラークコントロールが良好となり症状も軽快した。引き続きスケーリング・ルートプレーニングや口腔機能回復治療を行い症状の改善に努めた結果,現在,浮腫性の腫脹と剥離性のびらんは認められず,良好な経過を維持している。プラークは尋常性天疱瘡の口腔内の症状を憎悪させる大きな要因であり,変化する口腔内の状態に合わせた丁寧な指導が天疱瘡に罹患した歯周炎患者に対して歯周治療を進める上で重要であると考えられた。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(4):451-456,2014
教育賞受賞
歯科衛生士コーナー
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