TiO2の光触媒機能,太陽電池を搭載した歯ブラシが,口腔内環境の改善に有用であることが報告されているため,本研究では,それらを応用した歯ブラシであるSOLADEY N4Ⓡ(株式会社シケン)を用いて,ブラッシングによるプラークコントロールの改善効果を,臨床パラメーターから検討した。被験者は,SPTに移行した10名とし,5名ずつ第1群,第2群に封筒法にて割り付けたクロスオーバー試験とし,1クールを4週間として,TBI後に第1クール,第2クールにてSOLADEY N4Ⓡ,プラセボを各被験者に交互に使用させ,それぞれをTEST群,CONTROL群とした。診査項目は,Rustogi Modification Navy Plaque Index(RMNPI)によるデンタルプラークの付着状態,歯肉溝滲出液(以下GCF量),口腔内細菌数とした。その結果,TEST群ではCONTROL群と比較して,SOLADEY N4Ⓡの使用により,口腔内全体,平滑面,歯頚部,隣接面全ての部位で,よりプラーク付着の抑制が認められ,それに伴いGCF量の減少,口腔内細菌数の減少が認められた。SOLADEY N4ⓇをTBI後に継続的に使用することで,TiO2の光触媒抗菌作用によりプラークコントロールが良好に維持,改善され,それに付随してGCF量および口腔内細菌数の口腔内環境も改善が認められることが判明した。
糖尿病との関連は,歯周炎では検討されているが,咀嚼機能では不明である。そこで2型糖尿病患者を対象に,糖尿病と咀嚼機能および歯周炎との関連を横断研究で検討した。
2型糖尿病の教育入院患者202名(男性126名,女性76名,年齢24~86歳,平均年齢57歳)を対象とした。医科診療録から入院時HbA1c,歯科診療録から咀嚼機能値,現在歯数,咬合支持数,Community Periodontal Index(CPI)のデータを得た。年齢等の背景に性差があったため,男女別に入院時HbA1cを目的変数,年齢,CPIコード4の有無,そして咀嚼機能値,現在歯数(20歯以上の有無)または咬合支持数のいずれかを説明変数とした重回帰分析を行った。
女性被検者群は男性被検者群よりも高齢で咀嚼機能値,現在歯数,咬合支持数が有意(p<0.01)に少なかった。
重回帰分析では,女性被検者群のCPIコード4(標準化係数:0.264)と咀嚼機能値(標準化係数:-0.263)が入院時HbA1cと有意(p<0.05)に関連した。女性被検者群の現在歯数と咬合支持数,男性被検者群の全歯科指標では入院時HbA1cとの関連がなかった。
これらから,女性被検者群では咀嚼機能値が低いほど,また重度歯周炎であるとHbA1cが高いことが明らかになった。糖尿病の医科歯科連携において,歯科専門職は歯周炎に加えて咀嚼機能にも注目する必要がある。
歯周ポケット測定の際の出血(BOP)は歯肉炎症の有無を反映するものの,炎症の程度を詳細に反映するものではない。本研究は,ヒト歯肉血行動態,具体的には組織酸素飽和度(StO2)と血流量(BF)の同時測定を行い,その結果と歯肉炎との関連を明らかにすることを目的とした。
測定には東北大学病院歯科部門歯周病科外来に通院される合計13名の患者(年齢29~82歳)の協力を得た。測定対象とした前歯部唇側歯間乳頭歯肉(n=33)のBOP判定を行い,近心部と遠心部の両方で出血しなかった場合をNB群(n=14),どちらか一方が出血した場合をB群(n=8),両方で出血した場合をBB群(n=11)の3群に分類した。StO2とBFの測定は対象歯肉のブラッシング前とブラッシング後の合計2回行った。
測定の結果,ブラッシング前,BB群はNB群に比べStO2と酸化ヘモグロビン量(HbO2)が有意に低下していた。また,ブラッシングによって,BB群はNB群に比べStO2及びHbO2が有意に増加した。
本研究では,StO2とBFの同時測定によって健全歯肉と炎症歯肉での局所血行動態の違いを明らかにした。また,ブラッシング前後のStO2の推移が健全歯肉と炎症歯肉で異なることから,歯肉血行動態の測定が歯肉の炎症の定量的評価法となる可能性を示唆した。
降圧剤の一種のカルシウム拮抗薬を服用している患者は歯肉増殖を高頻度に発症することが知られている。歯周治療に際し,内科医に降圧剤の変更を依頼することもあるが,症例によっては血圧のコントロールや副作用などから変更が困難なこともある。また歯肉増殖は歯周基本治療で改善しない場合も多く,その場合歯肉切除などの歯周外科処置を応用することも珍しくない。
本症例は多発性嚢胞腎に伴う高血圧症のためカルシウム拮抗薬を服用し,慢性歯周炎と薬物性歯肉増殖を併発していた。歯周組織検査の結果,4 mm以上の歯周ポケットが55%,6 mm以上は28%であった。歯肉の増殖は上下顎の頬舌側歯間部に見られた。初診時口腔清掃状態が不良であったので口腔衛生指導やスケーリング・ルートプレーニング(SRP)などの歯周基本治療を徹底して行った。その結果,歯肉増殖は消退し,4 mmの歯周ポケットが1ヵ所に減少したため,歯周外科を行わずサポーティブ・ペリオドンタル・セラピー(SPT)に移行した。SPT開始後,約3年が経過しているが,現在も歯周組織状態は良好に保たれている。本症例からカルシウム拮抗薬による薬物性歯肉増殖を伴う慢性歯周炎患者に対し,服用薬の変更を行わずとも,SRPとプラークコントロールの維持により非外科的歯周治療で歯肉増殖と歯周組織の炎症は改善されることが分かった。
咬合性外傷を伴う歯周炎患者に心理学的手法を取り入れた歯周基本治療,エナメルマトリックスタンパク質(enamel matrix derivative:EMD)と自家骨移植併用再生療法を含む歯周外科治療,心理学的手法を取り入れたsupportive periodontal therapy(SPT)を行って11年経過した症例を報告する。
患者は55歳,女性で上顎前歯部の歯間離開を主訴に来院した。Bleeding on probing(BOP):97%,probing depth(PD):7 mm以上が9歯,上顎前歯に垂直性骨吸収が認められた。多くの歯に動揺が認められ,仕事中にくいしばる癖を自覚しており,炎症と咬合性外傷が合併した歯周炎と診断した。
治療は原因除去を重視し,歯周基本治療時に心理学的手法を取り入れ,尾谷が提唱する動機づけを行い,ブラキシズム対策に認知行動療法と職業関連ストレス軽減のカウンセリングを行った。再評価検査後,歯周外科治療,口腔機能回復治療を行い,ブラキシズム対策としてオクルーザルスプリントを装着するとともに,心理学的手法として池田が提唱する自己暗示療法を行った。SPT移行後も3か月ごとに心理学的手法の強化を図り11年間良好に経過している。
これらの結果から歯周治療への心理学的手法の導入は,患者の治療への意欲を向上させ,治療効果を高めるのに有効であると思われた。