レーザーとインドシアニングリーンナノ粒子を使ったポケット外からのレーザー照射による抗菌光線力学療法(a-PDT)を開発し,認定臨床研究審査会の審査を経て,試験研究を行った。a-PDTは,レーザーを光感受性物質に照射し,一重項酸素を発生させて殺菌する方法である。810 nmの波長のレーザー光は,その吸光スペクトルの特徴から生体透過性があることが知られており,この性質を利用し,ポケット外からのレーザー照射でポケット内細菌を除去する新たな方法を試みた。SPT期の歯周病患者40名を実験群とコントロール群に無作為にわけ,ポケット内細菌のコントロールが基礎研究で得られた条件で可能かを検討した。結果歯周ポケット外からのレーザー照射で,ポケット内細菌の除去は可能であった。このa-PDTの原理を紹介するとともに,平成30年から施行された臨床研究法に則った認定臨床研究審査委員会の審査を受けた諸手続きについて紹介する。
研究目的:2020年度昭和大学歯学部(本学)臨床実習は,COVID-19対策で登院学生数の調整のため外来実習日数の半減とシミュレーション実習時間を削減した。実習を補足する目的でWeb自宅学修を実施したが,臨床実習を補足する教育効果がどの程度であるか明らかではなかった。本研究の目的は,2020年度(試験群)と2019年度(対照群)の臨床実習実技試験(鎌型スケーラーによる模擬歯石除去)点数を比較評価することで,臨床実習におけるWeb自宅学修の教育効果を明らかにする。
方法:第5学年臨床実習生(2019年度111名,2020年度90名)を対象とした。実技試験点数(OSCE点数)の平均値を試験群と対照群毎に算出して比較した。また,Web自宅学修およびシミュレーション実習の履修時期,Web自宅学修評価(鎌型スケーラーによる模擬歯石除去)との関連を解析した。
結果:試験群のOSCE点数は対照群より低かったが,有意差は認められなかった。また,Web自宅学修およびシミュレーション実習の履修時期の違いによる影響はみられなかった。Web自宅学修,シミュレーション実習後のOSCE点数はWeb自宅学修評価と比べて有意に高かった。
結論:Web自宅学修は臨床実習を補足する教育効果をある程度持つ可能性が考えられた。
現在日本において臨床で広く用いられている歯周炎分類(日本歯科医学会 JDA 2007)とCAL(臨床的アタッチメントレベル)の関係を調べる臨床研究を全国10名の臨床医が2016年から2021年まで5年間行い,1,375名のべ125,468歯の調査結果を得た。また歯周炎新分類(AAP・EFP 2018)との関係を精査することで,歯周炎指標をより有用に使用できると考えた。元々歯周炎分類はCALの検査項目はない。その為1歯毎に歯周炎分類とCAL値がひも付いた臨床研究結果から,CAL値(一部PD値,動揺度)を介して歯周炎分類と歯周炎新分類(ステージ,グレード)の関係を調べた。歯周炎新分類(AAP・EFP 2018)の重症度について「最大CAL値」から見た場合,ステージ(I,II,III,IV)各々に占める歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)の被験歯数の分布は,IはP0,IIはP1,IIIとIVはP2が大多数だった。また複雑度について「最大PD値と動揺度」から見た場合,IはP1,IIとIIIはP2,IVはP3が大多数だった。その他ステージ重症度の「歯の喪失」及びグレード進行の直接証拠「最大CALの経年変化」では両者の関係は不明であった。