パーソナリティ研究
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13 巻, 1 号
(2004)
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
原著
  • 谷(仙谷) 真弓, 山崎 勝之
    2004 年 13 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    ジャーナル フリー
    Locus of Control(統制の位置;以下LOC)は,これまでに児童の健康や行動上の問題との関連が数多く見出されている.子どもにおけるその測度では,標準化された質問紙がいくつか見受けられるが,それらの質問紙は,この領域の研究結果を混乱させるいくつかの欠点を持っている.そこで本研究では,新しい児童用外的統制性質問紙(GEQC)の開発を試みた.調査Iでは,4∼6年生466名の児童を対象に,因子構造の検討を行った.その結果,一因子構造が明らかとなり,計16項目が採用された.調査IIでは,4∼6年生1,349名の児童を対象にこの質問紙を実施し,加えて,担任教師による,外的統制性を強くもつ児童の指名(ノミネート)調査と児童自身による同特性の仲間評定調査を実施した.さらに,4∼6年生の児童205名に,約5週間の間隔で質問紙を2回実施し,再検査法による質問紙結果の信頼性についても検討した.こうして,調査IIでは,信頼性と構成概念的妥当性が検討された.その結果,本質問紙が構成概念的妥当性と安定性,内的整合性を兼ね備えていることが明らかになった.
  • 勝谷 紀子
    2004 年 13 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,2つの調査によって改訂版重要他者に対する再確認傾向尺度(以下,再確認傾向尺度)の信頼性と妥当性を検討した.研究1では,301名の学生を対象とした予備調査の結果をもとに大学生123名を対象に再確認傾向尺度,抑うつ,自尊心を含む質問紙に回答させた.その結果,再確認傾向尺度は,2つの因子(再確認願望,再確認行動)から構成されていること,比較的高い値の信頼性係数があることが示された.また,本尺度は抑うつ傾向と正の相関,自尊心と負の相関があることが示された.研究2では,大学生397名を対象に調査を行い,本尺度は他の学生サンプルでも同様の因子構造がみられること,不安,拒否回避欲求,他者からの評価の知覚とも関連があることがみいだされた.最後に,再確認傾向にもとづいた重要他者との相互作用が精神的健康に及ぼす影響について,今後の研究の方向性について述べた.
  • 安藤 玲子, 坂元 章, 鈴木 佳苗, 小林 久美子, 橿淵 めぐみ, 木村 文香
    2004 年 13 巻 1 号 p. 21-33
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    ジャーナル フリー
    従来の研究は,ネット使用により新たな対人関係が構築されることを示してきたが,このネット上の対人関係が人生満足度や社会的効力感に影響が与える程度の質を有するかについて検討した研究は乏しい.そこで,本研究は男子学生173名を対象にパネル調査を行い,ネット使用がネット上の対人関係数を介して,人生満足度および社会的効力感に影響を及ぼすかを検討した.その結果,(1) 同期・非同期ツールの使用は,共にネット上での対人関係を拡大させる,(2) 同期ツールの使用は,ネット上の異性友人数を介して人生満足度を高める,(3) 同期ツールの使用はネット上の知人や同性友人数を介して,非同期ツールの使用はネット上の知人数を介して,社会的効力感を高めることが示された.また,(4) 同期ツールの使用は人生満足度と社会的効力感に対して負の直接効果を持っていた.
  • 小堀 修, 丹野 義彦
    2004 年 13 巻 1 号 p. 34-43
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,完全主義の認知を「自己志向的完全主義がセルフ・スキーマとして活性化した結果,意識化された思考であり,できごとの解釈や注意に影響を与えるもの」と定義し,その認知を多次元で測定するための尺度(Multidimensional Perfectionism Cognition Inventory: MPCI)を作成した.研究1では,MPCIの因子構造が明らかとなり,高目標設置,ミスへのとらわれ,完全性の追求の下位次元が特定され,これらの下位次元は十分な信頼性を示した.研究2では,MPCIの構成概念妥当性と基準連関妥当性が明らかとなった.
  • 大久保 智生
    2004 年 13 巻 1 号 p. 44-57
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,個人-環境の適合性の視点から,大学生の主観的適応をPAC(個人別態度構造)分析を用いて,検討することであった.調査対象者は,大学新入生男女2名である.1名は大学環境に適応している学生であり,もう1名は大学環境に適応していない学生であった.2人の結果を比較すると,主観的適応の構造とその意味づけに違いがみられた.調査対象者Aの事例では,大学環境は肯定的に意味づけられており,大学環境と調和した形で欲求が充足されていると解釈された.一方,調査対象者Bの事例では,他の環境に比べて大学環境は否定的に意味づけられており,大学環境で欲求は充足されていないと解釈された.また,適応するのに容易な特徴という実体はなく,環境との関係によって個人の特徴の価値が決まり,個人の特徴と環境との関係によって適応は決まるのではないかと考えられた.最後に,個人-環境の適合性の視点から,適応研究を進めていく必要性が論じられた.
  • 大芦 治
    2004 年 13 巻 1 号 p. 58-66
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    ジャーナル フリー
    タイプA行動パターンと学習動機づけ,勉強時間の関係が検討された.189人の中学1年生から3年生にタイプA尺度と学習動機づけの質問紙,勉強時間に関する質問が実施された.因子分析の結果,内的動機づけの因子,実用・職業志向的動機づけの因子,手段的動機づけの因子の3因子が抽出された.この3つの因子とタイプAの相関が算出された.中学1年生では内的動機づけ,実用・職業志向的動機づけ因子との関係が比較的高かったが2年生になるとどの動機づけ因子との相関関係もみられなくなった.中学3年生になると手段的動機づけとタイプAとの間にある程度高い相関係数がみられるようになった.勉強時間に関していえば1年生から3年生までの勉強時間をグラフに描くとU字型の曲線になった.つまり,中学2年生になると1年生より勉強時間が減少し,3年生になると再び増加に転じた.ただ,タイプA者は非タイプA者に比べ2年生での減少幅が小さく,また,3年生では非タイプA者と同じように勉強時間を増大させていたため,結果的に3年生でも勉強時間は長くなっていた.以上の結果から,タイプA者は非タイプA者より時間的な切迫感が強く受験に対しても早くから意識し達成的な行動をとる可能性が考察された.
  • 内藤 まゆみ, 鈴木 佳苗, 坂元 章
    2004 年 13 巻 1 号 p. 67-78
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,合理的処理および直観的処理における個人差(Pacini & Epstein, 1999)を測定する情報処理スタイル尺度(IPSI)の作成を目的とした.調査1(回答者290名)ではIPSI38項目の内容的妥当性を検討するため,確認的因子分析を行った.分析の結果,IPSIが合理性と直観性の2因子から構成されることが確認された.また,IPSIは十分な内的一貫性および再テスト信頼性を持つことが示された.他の尺度(曖昧さへの耐性と理論志向性,自尊心,社会的望ましさ)との相関はIPSIの収束的・弁別的妥当性を示すものであった.調査2(回答者237名)では,構成概念妥当性の検討のため,確率推論課題の回答とIPSIの関連を調べた.その結果,直観性および合理性が推論エラーの頻度と関連することが示された.加えて,調査2ではIPSI短縮版24項目を作成し,その信頼性と妥当性が確認された.
  • 齊藤 千鶴
    2004 年 13 巻 1 号 p. 79-90
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,摂食障害傾向に及ぼす個人内要因と社会文化的要因を包括的に検討することを目的とした.321名の青年期と成人期の女性に,社会的変数としてやせ志向文化への態度と性役割観に関する尺度を,個人内変数として自尊感情と相互依存的自己概念に関する尺度を提示し,回答してもらった.その結果,“社会文化的な規範に過剰に適応しようとする自己理解が,自らの自尊感情を低下させて,摂食障害傾向を形成するであろう”という仮説モデルが支持された.これらの結果により,摂食障害がやせ志向文化と性別役割という社会文化的影響を受けることが明らかにされ,またその影響を受けやすくする個人の特性の一部を示すことができたといえよう.
資料
  • 鈴木 公啓, 代田 剛嗣
    2004 年 13 巻 1 号 p. 91-101
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,Thought-Shape Fusion Scale(TSFS)の邦訳版を作成することを目的とした.はじめに,TSFS邦訳版の妥当性確認に使用するために,TSFの概念の元となったThought-Action Fusionを測定するThought-Action Fusion Scale(TAFS)の邦訳版を作成し,高い信頼性と妥当性を確認した.次に,大学生女子,短期大学生女子,そして看護学校生女子あわせて342名に対し,邦訳したTSFS,TAFS邦訳版,EAT邦訳版の下位尺度のうち「摂食制限」「食事支配」,およびEDI邦訳版の下位尺度のうち「痩せ願望」「体型不満」,そして日本語版SDSを施行した.TSFS邦訳版の33項目版と15項目版の両者について高い信頼性と妥当性が確認された.使用目的によって使い分けることも可能であることから,TSFS邦訳版は,利用に際し十分に有用に活用できると考えられる.今後は,TSFS邦訳版を使用することにより,痩せ願望やダイエット,そして摂食障害のメカニズムの解明がおこなわれることが期待される.
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