パーソナリティ研究
Online ISSN : 1349-6174
Print ISSN : 1348-8406
ISSN-L : 1348-8406
13 巻, 2 号
(2005)
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
原著
  • ――親の養育行動と社会的要因からの検討
    前川 浩子
    2005 年 13 巻 2 号 p. 129-142
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/15
    ジャーナル フリー
    本研究は,青年期女子の体重・体型へのこだわりに影響を及ぼすと考えられる要因を検討することを目的として行われた.1005名の女子学生を対象に質問紙調査を実施し,食行動と態度,身体状況,親の養育行動,および,体型に関する指摘,やせに対する価値観,メディアの影響,家族のやせ志向,友人のやせ志向を測定した.従来の先行研究に基づき,養育行動や社会的要因から体重・体型へのこだわりを示す「やせ願望」や「体型不満」を説明するモデルを構成し,共分散構造分析による検討を行った.分析の結果,「体型に関する指摘」を経験することは「やせに対する価値観」と関連していることが明らかになった.また,「体型に関する指摘」は直接「体型不満」に影響を与えていた.「やせ願望」に対しては「やせに対する価値観」,「メディアの影響」,「友人のやせ志向」が説明力を持っていた.養育行動については,「父親の過干渉傾向」のみが「体型不満」と関連を持ち,「父親の過干渉傾向」の強さは「体型不満」を弱めるということが示された.
  • ――性の類似度,心理的重なりの効果
    登張 真稲
    2005 年 13 巻 2 号 p. 143-155
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,女子大学生,大学院生を対象に共感喚起過程と感情的結果,特性共感の次元の関係と,状態共感に対する相手との性の類似度と心理的重なりの効果を検討することである.2種類のビデオ刺激に対する反応をもとに自動的共感,役割取得,並行的感情反応,他者指向的反応,不快反応の尺度が作成された.共感喚起過程と感情的結果の変数間の関係を検討したところ,並行的感情反応は自動的共感によって,他者指向的反応は自動的共感と役割取得によって有意に説明された.特性共感の次元と状態共感の変数との関係では,共感的関心は自動的共感,役割取得,並行的感情反応,他者指向反応を予測するなど,特性共感の下位尺度は感情的結果の変数だけでなく共感喚起過程の変数を予測した.状況要因と共感喚起過程,感情的結果との関係では,自動的共感,役割取得,並行的感情反応,他者指向的反応は心理的重なりがある場合のほうがない場合より高かったが,性の類似度は共感喚起過程と感情的結果の変数に効果をもたなかった.
  • 丹羽 智美
    2005 年 13 巻 2 号 p. 156-169
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,親への愛着を測定する尺度を作成し,親への愛着がストレス状況における適応過程へ与える影響について検討することであった.Brennan, Clark & Shaver (1998) は愛着を不安と回避によってとらえられるとしたことから,本研究では親への愛着をその2側面からとらえる尺度作成を試みた.研究1において,親への愛着,自己受容,親子関係からなる質問紙に回答を求めた.親への愛着は愛着不安と愛着回避の2因子が得られ,その信頼性と妥当性が確認された.研究2では,学校間移行という環境移行に焦点をあて,親への愛着の適応過程に及ぼす影響について縦断的に検討を行った.2回の調査において,親への愛着,自尊感情,孤独感,大学生活不安からなる質問紙に回答を求めた.その結果,愛着不安高群の方が愛着不安低群よりも,第1回調査時期と第2回調査時期における孤独感と対人関係不安の差が大きかった.このことより,親への愛着不安の低い方がストレス状況における孤独感と対人関係不安を緩衝していることが示唆された.
  • 村上 宣寛, 福光 隆
    2005 年 13 巻 2 号 p. 170-182
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/15
    ジャーナル フリー
    研究Iでは,担任教師が指名した攻撃性の著しい児童23名を基準群,攻撃性の認められない児童567名を対照群とした.参加者は8つの小学校の3–6年生1701名と担任教師59名であった.問題攻撃性尺度は二群を弁別する13の質問項目から構成された.研究IIでは,児童の攻撃性についてクラスの担任教師が5段階評定を行った.参加者は小学校3–6年生224名と担任教師8名であった.担任教師の評定の信頼性は.93であった,問題攻撃性尺度と評定との相関は.46,再検査信頼性は.85であった.814名のデータをIRTで分析すると,尺度の高得点側で測定精度が高かった.研究IIIでは,実験群でアサーション・トレーニングによる攻撃性の適正化教育を行った.参加者は,実験群が3年生38名,統制群が3年生35名であった.事前・事後の尺度得点の3要因分散分析の結果,アサーション・トレーニングは攻撃性の低い児童で弱い介入効果があった.
  • ――異なるコミュニケーションメディアを用いた比較
    西村 洋一
    2005 年 13 巻 2 号 p. 183-196
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,対人不安傾向の高い人のコミュニケーション時の状態不安が,対面の場合とcomputer-mediated communication (CMC) の場合とで異なるのかという点について検討を行った(実験1).また,対人不安生起に関連すると考えられる要因について,両メディアの間における差についても検討を行った(実験2).結果は,対人不安傾向の高い人は,CMCにおいても対人不安傾向の低い人よりもコミュニケーション時の状態不安が高く,不安生起に関連する要因の検討でも多くがネガティブなものとなっていることが示された.これらの結果は,匿名性の高い,自己の特定されにくいCMCという状況にあっても,他者との関係性をネガティブに認知するために,不安が生起するという可能性を示している.つまり,対人不安とは,ネガティブにとらえている自己が特定されない場面であっても,他者との関係性が自分にとって望ましくないものと認知することで,生起するものであると考えられる.
  • 天谷 祐子
    2005 年 13 巻 2 号 p. 197-207
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/15
    ジャーナル フリー
    公的・私的自己意識と自我体験――「私」への「なぜ」という問い――の関連を検討した.自我体験とは,「私はなぜ私なのか」,「私はどこから来たのだろう」といった水準の「私」への問いである.この点について,中学生239名・大学生228名を対象に,質問紙調査を行った.その結果,中学生においては,公的・私的自己意識の分化はあまり見られなかった.しかし,自我体験を報告した群の方が未体験群よりも公的・私的自己意識間の相関が低く,より分化が見られた.そして,公的・私的自己意識双方と自我体験の間に関連が見られ,中学生においては,公的・私的自己意識と自我体験の間に密接な関連があることが示された.一方大学生では,私的自己意識だけに自我体験との間に関連が見られた.また自我体験については,118名の中学生と108名の大学生から自我体験が報告され,体験率は中学生が49.4%・大学生が47.4%であった.
資料
  • 舛田 亮太, 中村 俊哉
    2005 年 13 巻 2 号 p. 208-219
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,日常的解離尺度(短縮6項目版),日常的分割投影尺度(短縮8項目版)の構成概念妥当性を検討することであった.大学生325名(平均年齢19.47歳)を対象に日常的解離尺度,日常的分割投影尺度,精神的健康調査票 (GHQ),解離性体験尺度(NDI,DES–Tに分類)を実施した.相関分析の結果,日常的解離尺度においてはGHQ, NDI, DES–Tとの相関係数,またその大小関係から収束的弁別的証拠が得られ,ある程度の構成概念妥当性が示唆された.しかし日常的分割投影尺度についてはGHQ, NDI, DES–Tとの相関係数の大小関係が明確でなく,さらには日常的解離尺度との関連においてもやや高い相関があったことから,十分な弁別的妥当性を確認できたとはいえなかった.よって今後は,日常的分割投影尺度を更に精緻化していく必要性が示された.
  • 友野 隆成, 橋本 宰
    2005 年 13 巻 2 号 p. 220-230
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,改訂版対人場面におけるあいまいさへの非寛容尺度 (Revised Interpersonal Intolerance of Ambiguity Scale; IIAS–R) を作成し,その信頼性および妥当性の検討を行った.研究1では,自由記述調査の結果をもとに項目を作成し,確認的因子分析により初対面の関係におけるあいまいさへの非寛容,半見知りの関係におけるあいまいさへの非寛容,友人関係におけるあいまいさへの非寛容の3つの下位尺度を構成した.また,得点分布や記述統計量の確認を行った.そして,内的整合性を検討し,ほぼ十分な信頼性(α=.65~.77) を得ることができた.研究2では,IIAS–Rの各下位尺度と対人不安尺度,独断主義尺度との相関を検討し,ある程度の構成概念妥当性 (r=.22~.52) を確認することができた.研究3では,IIAS–Rの3ヶ月間の再検査信頼性を検討し,ほぼ十分な安定性(r=.66~.73) を確認することができた.以上より,IIAS–Rは信頼性および妥当性を兼ね備えた尺度であることが示唆された.
  • 藤島 寛, 山田 尚子, 辻 平治郎
    2005 年 13 巻 2 号 p. 231-241
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/15
    ジャーナル フリー
    本研究では5因子性格検査(FFPQ;FFPQ研究会,2002)の短縮版を構成し,その信頼性と妥当性の検討を行った.FFPQは外向性,愛着性,統制性,情動性,遊戯性という5つの超特性,その各超特性の下位因子として5つの要素特性という階層構造を持ち,包括的に性格を記述することができる.しかし,項目数が150項目と多いため,回答者の負担が少ない短縮版の作成が待たれていた.FFPQから,階層構造を維持するような50項目を選んでFFPQ短縮版 (FFPQ–50) とし,900名の大学生に実施して因子分析を行った.その結果,項目レベルでも要素特性レベルでも単純な5因子構造が示された.またエゴグラム (TEG) との関係から併存的妥当性が確認され,芸術大学の音楽専攻大学生の性格特徴をFFPQと同様に記述できることが示された.これらの結果から,FFPQ–50は階層構造を維持し,記述の多様性をもった性格テストであると考えられる.
  • 大森 智恵
    2005 年 13 巻 2 号 p. 242-251
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,女子大学生の中の摂食障害傾向を持つ者にはどのような性格特性があるのかについてMMPIを用いて検討することを目的とした.その結果,摂食障害傾向を持つ者は11の臨床尺度で摂食障害傾向を持たない者よりも有意差に高い値を示した.各尺度に注目すると,摂食障害傾向を持つ者は自己統制がきかず衝動的に行動する傾向を示す第4尺度(精神病質的偏倚尺度)が高くならず,活動的で自己主張性を示す第5尺度(男子性・女子性尺度)が低くならなかった.これらのことから摂食障害傾向を持つ者は摂食障害者が示すとされる受動攻撃性はみられなかった.第4尺度が高くなかったことについては過食・嘔吐を抑制する可能性が,また受動攻撃性がみられなかったことについては気持ちや感情などを歪めずに表出できる可能性が考えられ,それらが摂食障害の発症を抑制している可能性が示唆された.
  • ――対人問題インベントリー (IIP) を用いて
    白砂 佐和子, 平井 洋子
    2005 年 13 巻 2 号 p. 252-263
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/15
    ジャーナル フリー
    対人問題インベントリーは,個人が対人関係で抱える問題を8つの方向から直接的に測定する尺度である.研究1ではその日本語版を作成し,単純尺度得点の信頼性係数と尺度間相関,個人内相対得点の信頼性係数と円環モデルへのあてはまりを検討した.その結果1つの下位尺度を除いて原版とほぼ同等の信頼性が得られ,円環モデルのあてはまりでも,少なくとも順序的には円環上に配置できることが確認された.研究2では個別面接を行い,IIPの得点が対人的な問題をどのように記述するのかを検討した.その結果,断片的にしか自覚されず,従って面接でも語られにくい問題点や相手に与える対人的な印象が,この尺度で捉えられることがわかった.特に個人内相対得点による円環グラフは,対人的な特徴がイメージとして描写され,個人理解の際に多面的な切り口をもたらすことが示唆された.今後の研究方向としては,各下位尺度の改良と,実際の臨床事例に適用しその意義を実践的な面から検討していくことが考えられる.
ショートレポート
feedback
Top