パーソナリティ研究
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14 巻 , 3 号
(2006)
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • ――感情体験尺度作成の試みを通して
    中田(北出) 薫
    2006 年 14 巻 3 号 p. 241-253
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,自分の感情に向き合いしみじみと体験するような感情体験のあり方を「豊かな感情体験」とし,それをイラショナル・ビリーフとの関連から論じていくことを目的とした.その際,イラショナル・ビリーフ傾向が高い者ほど「豊かな感情体験」の程度が低いという仮説が立てられた.予備調査では,97名の大学生のデータを元に個人の特性的な「豊かな感情体験」の程度を捉える尺度(FES)が作成され,「感情に対する統制可能感」「感情に対する尊重性」「感情の優位性」の3因子が見出された.本調査では,126名の大学生を対象とし,FESとイラショナル・ビリーフテストとの間に低い程度の有意な負の相関が得られた.特に,自己否定的なイラショナル・ビリーフ傾向が強い者ほど感情の統制の取れなさが高いことがうかがえた.研究全体を通じて,感情に巻き込まれ混乱したり,逆に過度に抑制するような両極に陥らず,その中間で抱える体験様式の重要性について論じた.
  • ――逃避型対処方略と計画型対処方略
    山崎 修道, 荒川 裕美, 丹野 義彦
    2006 年 14 巻 3 号 p. 254-265
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,大学生が妄想様観念を体験したときの対処方略が,妄想様観念による苦痛に及ぼす影響を,縦断調査と共分散構造分析を用いて検討した.まず,大学生が妄想様観念を高い頻度で体験していることを確認した.次に,(1) 逃避型対処方略が,妄想様観念に伴う苦痛を強める,(2) 計画型対処方略が,妄想様観念に伴う苦痛を弱めるという2つの仮説を立て,縦断調査と共分散構造分析を用いて,双方向因果モデルを検証した.大学生318名を対象に,ピーターズ妄想質問紙とストレスコーピング質問紙を,1ヶ月間隔をおいて2回実施した.調査対象者のうち,95.3%が妄想様観念を体験していた.妄想様観念を体験していた大学生186名のデータを用いて,共分散構造分析を行った.共分散構造分析では,道具的変数モデルを用いて双方向の因果パスを設定した上で分析した.その結果,(1) 逃避型の対処方略を取ると,妄想様観念に伴う苦痛が強まることが分かった.しかし,(2) 計画型対処方略が,妄想様観念に伴う苦痛を弱めることは支持されなかった.
  • 石毛 みどり, 無藤 隆
    2006 年 14 巻 3 号 p. 266-280
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/30
    ジャーナル フリー
    レジリエンスは困難な出来事を経験しても個人を精神的健康へと導く心理的特性である.中学生905名を対象に,レジリエンスとCloningerの7次元モデルの特性との関連,およびそれらの関連の性差を検討した.その結果,レジリエンス尺度は「意欲的活動性」「内面共有性」「楽観性」の3因子構造だった.男子の場合,「意欲的活動性」と「自己志向」および「協調」とが,そして「内面共有性」と「協調」とが有意な正の関連を示した.女子の場合,「意欲的活動性」と「自己志向」,「内面共有性」と「報酬依存」とが有意な正の関連を,「楽観性」と「損害回避」とが有意な負の関連を示した.
  • 中尾 達馬, 加藤 和生
    2006 年 14 巻 3 号 p. 281-292
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,従来の成人愛着研究が暗々裏に仮定してきた「成人愛着スタイルは成人の愛着行動パターンの違いを反映する」という理論的前提の妥当性を実証的に検討した.大学生378名に対して,成人愛着スタイル尺度と本研究で作成した成人愛着行動尺度を実施した結果,以下の2点が示された.すなわち,成人愛着行動を直接的愛着行動(安全欲求を直接的に表現する愛着行動)と間接的愛着行動(自他の適切な心理的距離の調整にとらわれるため,安全欲求を間接的に表現する愛着行動)の2種類に分類した場合に,成人は,(1)「親密性の回避」が低いほど直接的愛着行動をより行い,(2)「見捨てられ不安」が高いほど間接的愛着行動をより行う.また,これらの結果は,愛着スタイルの4分類を用いた分析においても確認できた.以上の結果から,本研究により,上記の理論的前提が妥当であることが実証された.
資料
  • 辻本 英夫
    2006 年 14 巻 3 号 p. 293-304
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/30
    ジャーナル フリー
    多段階尺度評定において尺度の極端な段階を好んで選択するという反応スタイルである極端反応傾向(ERS)について,個人主義傾向や独自性欲求といった個人主義関連特性との関連を検討した.その結果,ERSと独自性欲求の下位特性である自由奔放との間に,低いながらも有意な正の相関が示された.さらに,過去の研究と同様,ERSと5因子性格検査(FFPQ)の遊戯性,特にその下位尺度である奔放性との間にも,低いが有意な正の相関が認められた.これらの結果から,開放性・遊戯性の個人主義傾向的側面とERSとが関連するという辻本(2003)の示唆を考察した.
展望
  • ――その現象と機序
    山崎 勝之
    2006 年 14 巻 3 号 p. 305-321
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/30
    ジャーナル フリー
    「ポジティブ心理学運動」に刺激され,これまで多くの研究がポジティブ感情の役割を調べてきた.本論文では,まず,ポジティブ感情の定義と測定方法にかかわる問題のいくつかを明らかにした.特に,ポジティブ感情の多くの種類が未だ考慮されていない現状を指摘し,あわせて測定方法の精度の低さの問題を強調した.続いて,ネガティブ感情と比較しながら,ポジティブ感情がもたらす多くの恩恵が,知覚,情報処理,健康,対人関係などの広範囲にわたりレビューされた.そのレビューでは,過去においてポジティブとネガティブ感情にかかわる知見の不一致が生じた理由を考察し,不一致の原因を探りながら,両感情にかかわる一致した見解の確立の可能性をさぐった.最後に本論文は,これらの恩恵をもたらす仮説的メカニズムについて明らかにした.本論文の全体を通して,広範囲にわたるこの種の研究がもつ重要な問題を指摘し,それと同時に,今後実施すべき研究を示唆した.今後の研究としては,文化差ならびに介入研究が強調された.
ショートレポート
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