パーソナリティ研究
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16 巻, 2 号
(2008)
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原著
  • 青林 唯
    原稿種別: 原著
    2008 年 16 巻 2 号 p. 129-140
    発行日: 2008/01/01
    公開日: 2008/03/30
    ジャーナル フリー
    本研究では行動–状態志向性という自己制御能力の個人差を反映する,行動統制尺度90 (ACS-90) の内的一貫性と妥当性の検討を行った。研究1では,ACS-90の内的一貫性が追認され,また確認的因子分析において先行研究と同様の因子構造が示された。研究2ではACS-90の因子的妥当性と構成概念妥当性を行動–状態志向性と神経症傾向との関係,および主観的幸福感への予測から検討した。その結果,行動–状態志向性と神経症傾向は異なった心的傾向であることが確認されるとともに,両者の交互作用は主観的幸福感の低下を予測していた。以上の知見により,ACS-90日本語版の内的一貫性・妥当性が確認されるとともに,神経症傾向と主観的幸福感の負の関係は行動–状態志向性という自己制御能力により調整されることが明らかとなった。以上の結果をふまえ行動–状態志向性の特徴について,自己制御理論の観点から考察した。
  • 桾本 知子, 山崎 勝之
    原稿種別: 原著
    2008 年 16 巻 2 号 p. 141-148
    発行日: 2008/01/01
    公開日: 2008/03/30
    ジャーナル フリー
    本研究では, 大学生を対象にして意識的防衛性が敵意と抑うつの関係に及ぼす影響を検討した。642名の大学生を対象とし(男性418名,女性224名),シニシズム尺度,意識的防衛性質問紙およびCES-Dへの回答を求めた。階層的重回帰分析の結果,男性の場合敵意が抑うつの予測因子であるが,女性の場合には敵意がきわめて高ければ,意識的防衛性の低さにより抑うつに対する敵意の影響力は増幅する傾向のあることが示された。この結果について,高敵意で意識的防衛性の低い女性が経験しうる対人藤の観点から論議が行われた。
  • ――パーソナリティの調節効果の観点から
    松浦 素子, 菅原 ますみ, 酒井 厚, 眞榮城 和美, 田中 麻未, 天羽 幸子, 詫摩 武俊
    原稿種別: 原著
    2008 年 16 巻 2 号 p. 149-158
    発行日: 2008/01/01
    公開日: 2008/03/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,成人期の女性のワーク・ファミリー・コンフリクトと精神的健康との関連について,パーソナリティの調節効果の影響を検討することを目的として実施された。対象者は共働き家庭で,夫・子どもと同居している女性288名(平均年齢42.5歳)で,郵送法による質問紙調査を行った。パーソナリティは,日本語版Temperament and Character Inventory (TCI) によって測定された。階層重回帰分析の結果,精神的健康へは,労働時間,ワーク・ファミリー・コンフリクト,パーソナリティ特性である損害回避と自己志向の主効果,ならびにワーク・ファミリー・コンフリクトと自己志向の交互作用の影響が有意であった。さらに交互作用の検定の結果,自己志向が高い場合にはワーク・ファミリー・コンフリクトが高くても精神的健康が維持されることが示され,自己志向の調節効果が認められた。
  • 高橋 彩
    原稿種別: 原著
    2008 年 16 巻 2 号 p. 159-170
    発行日: 2008/01/01
    公開日: 2008/03/30
    ジャーナル フリー
    男子大学生348名を対象に,進路選択時の親子間コミュニケーションの特徴をとらえる尺度を作成し,アイデンティティとの関連を検討した。青年の特徴として“議論の回避”“議論による立場の明確化”“結合性”“自律した意思決定”の因子が抽出された。議論の回避を高く示す青年はアイデンティティ達成得点が低く,職業決定におけるモラトリアムの得点が高かった。逆に議論による立場の明確化を高く示す青年は模索の得点が高かった。親の特徴として“独自性”“結合性”“議論の抑制”の因子を抽出し,親のコミュニケーションタイプを分類した。独自性と結合性が両方高い“相互交渉”や結合性だけが高い“応援”は,両方低い“不明確”より青年のアイデンティティ達成得点が高かった。親子間で議論を避けないこと,親が青年に受容的,支持的であることが,男子青年のアイデンティティの感覚の高さと職業決定への積極的取り組みと関連することが示唆された。
  • ――罪悪感の概念整理と精神分析理論に依拠した新たな特性罪悪感尺度の作成
    大西 将史
    原稿種別: 原著
    2008 年 16 巻 2 号 p. 171-184
    発行日: 2008/01/01
    公開日: 2008/03/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,第1に従来の罪悪感尺度を取り上げ,それらの測定している概念を整理することである。その上で第2に,特性罪悪感を測定する多次元からなる尺度 (TGS) を作成し,その信頼性および妥当性を確認することである。精神分析理論に依拠し,特性罪悪感の下位概念として「精神内的罪悪感」,「利得過剰の罪悪感」,「屈折的甘えによる罪悪感」,「関係維持のための罪悪感」の4つを設定し項目を収集した。合計793名の大学生に質問紙調査を行った。探索的因子分析および確認的因子分析の結果から,仮定した4因子モデルの妥当性が確認された。α係数,再検査信頼性係数は十分な値を示し,信頼性が確認された。また,PFQ-2-guilt scaleとの関連から併存的妥当性が確認され,PFQ-2-shame scale,心理的負債感尺度,自己評価式抑うつ性尺度との関連から収束的妥当性が,罪悪感喚起状況尺度との関連から弁別的妥当性が確認された。
資料
  • 渡部 麻美
    原稿種別: 資料
    2008 年 16 巻 2 号 p. 185-197
    発行日: 2008/01/01
    公開日: 2008/03/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,主張性の4要件理論(渡部,2006)に基づいて開発された主張性尺度を用いて,主張性と社会的情報処理および精神的適応との関連を検討した。大学生・大学院生359名に質問紙調査を行なった。パス解析を実施した結果,主張性の4要件それぞれが社会的情報処理の各ステップに異なる影響を及ぼしていることが明らかになった。また,4要件のうち第3要件の他者配慮が精神的不健康を増大させ,第4要件の主体性が孤独感を減少させていることが示された。本研究の結果から,主張性の第1要件である素直な表現と第3要件である他者配慮が行動の方向性を決め,第2要件である情動制御が行動を調整し,第4要件である主体性が積極性を増幅させることが示唆された。今後は4要件がそれぞれどの程度の高さであれば適応的であるのかを明らかにすることが求められる。
  • 柴田 由己
    原稿種別: 資料
    2008 年 16 巻 2 号 p. 198-208
    発行日: 2008/01/01
    公開日: 2008/03/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,青年用刺激希求尺度を作成して,その信頼性と妥当性を検討することを目的とした。研究1では,先行研究と予備調査において収集された126項目について探索的因子分析を行った。大学生189名のデータから,スリルと冒険 (TAS),抑制の解放 (Dis),内的刺激希求 (IS),日常的な新奇性希求 (DNS) の4因子が抽出された。研究2では,大学生480名のデータを用いたSEMにより,4因子構造と男女間での因子パターン不変性の確認,さらに男女間で因子得点の平均構造の比較を行った。結果は4因子構造の因子的不変性とTAS, Dis, DNSにおける因子得点の有意な男女差を示した。研究3ではα係数と再検査信頼性が検討され,SSS-JAの下位尺度における充分な内的一貫性と安定性が示された。さらに,他尺度との相関分析から,収束的妥当性と弁別的妥当性が論じられた。
  • 松本 麻友子
    原稿種別: 資料
    2008 年 16 巻 2 号 p. 209-219
    発行日: 2008/01/01
    公開日: 2008/03/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,拡張版反応スタイル尺度を作成し,その信頼性及び妥当性の検討を行った。まず,予備調査の結果をもとに項目を作成し,「回避」,「問題への直面化」,「ネガティブな内省」,「気分転換」の4つの下位尺度が特定された。次に,拡張版反応スタイル尺度の信頼性と妥当性を検討した。信頼性は,α係数と再検査信頼性について検討したところ,一定の信頼性を有することが確認された。妥当性は,自己没入,思考抑制,積極的問題解決スタイルとの相関を検討したところ,概ね予測された通りの関連が見られた。以上のことから,拡張版反応スタイル尺度は,一定の信頼性及び妥当性を有する尺度であることが示唆された。
  • 菅沼 麻理子, 岸 俊行, 野嶋 栄一郎
    原稿種別: 資料
    2008 年 16 巻 2 号 p. 220-228
    発行日: 2008/01/01
    公開日: 2008/03/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,クラシックバレエにおける初心者の内的意識の変化を検討することであった。具体的には,練習後の内省報告を元に,3つのカテゴリーを作成し,練習時期による意識の変化を検討した。さらに,「わざ」の習得の認知構造の自己を客観視する段階である調査協力者の認知面に注目し,どのような特質を持つのかについても検討した。その結果,新しい意識が生じ,それまでの意識は対照的に減っていくことが明らかとなった。また,道具や動きのある技を離れた広い視野での認知や,元々認知していた全体的な身体部位からより具体的な部位に意識が生まれるというような細分化された認知が生じていることが示唆された。
  • 吉住 隆弘, 村瀬 聡美
    原稿種別: 資料
    2008 年 16 巻 2 号 p. 229-237
    発行日: 2008/01/01
    公開日: 2008/03/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,解離体験とどのような防衛機制およびコーピングが関連するのかを検討した。大学生449名(男子231名,女性218名)に対し,解離体験尺度 (DES),防衛機制測定尺度 (DSQ-40),およびコーピング測定尺度 (TAC-24) を実施し,各変数間の関連性を調べた。単相関分析の結果,「極端思考・他者攻撃」的な防衛機制,「感情抑制・代替満足」的な防衛機制,そして「問題回避」コーピングと解離が関連することが示された。さらに重回帰分析の結果からは,解離は防衛機制との関連が特に強いことが示された。
展望
  • 奥村 泰之, 亀山 晶子, 勝谷 紀子, 坂本 真士
    原稿種別: 展望
    2008 年 16 巻 2 号 p. 238-246
    発行日: 2008/01/01
    公開日: 2008/03/30
    ジャーナル フリー
    わが国での抑うつ研究は,どのようにして研究されているのかを調べるために,1990年から2006年に発刊された18の学術誌から,974の抑うつ研究を展望した。抑うつ研究の特徴を捉えるために9つの変数に関してコード化基準を設け,各々の研究をコード化した。分析の結果,抑うつ研究が報告される学術誌は,3タイプに分類できることが示された。多くの事例研究は,精神疾患の診断基準や抑うつ尺度を利用せずに診断名を付けていることが明らかになった。測定をしている研究では,19%は10項目未満で抑うつを測定していることが示された。また,26%は連続変数で測定した抑うつ尺度を離散化していた。これらの結果から導かれる,事例研究と尺度利用法の改善策について考察する。
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