パーソナリティ研究
Online ISSN : 1349-6174
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31 巻, 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
原著
  • 金子 泰徳, 池田 寛人, 藤島 雄磨, 梅田 亜友美, 小口 真奈, 高橋 恵理子
    2022 年 31 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2022/04/27
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,日本語版Pure Procrastination Scale (PPS-J)を作成し,その信頼性と妥当性を検討することであった。本尺度の原版は,行動の遅延によって事態がいっそう悪化することが予想されるにもかかわらず自発的に遅らせる事象である先延ばしを測定するものとして開発されている。本研究では,大学生195名を対象に確認的因子分析を行った結果,「実行の先延ばし」「決断の先延ばし」「非適時性」からなる12項目3因子構造が示された。十分な内的整合性と構成概念妥当性を有することが確認された。また,大学生57名を対象として,再検査信頼性を検討した結果,許容範囲の値が得られた。大学生44名を対象とした日常生活の調査から,PPS-Jの十分な構成概念妥当性が示された。これらの結果から,PPS-Jは国内においても先延ばしを測定する尺度として使用可能であることが示された。

  • 伊藤 拓
    2022 年 31 巻 1 号 p. 18-31
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

    本研究では,人が後悔を経験した後,適応的な変容に至るまでのプロセスを検討することを目的とした。大学生430名に対し,質問紙調査を行った。後悔の調整方略を規定する要因として「制御焦点」,後悔の調整方略として「認知的感情制御」,後悔の機能として「準備機能」に着目し,制御焦点が認知的感情制御に影響を与え,認知的感情制御が後悔を介して準備機能に影響を与えるというモデルを検討した。結果から,後悔の準備機能に至るいくつかのプロセスの存在が示唆された。例えば,促進焦点によって促された「肯定的再評価」が,後悔を低減するとともに,準備機能を促進するというプロセスや,予防焦点によって促進された幾つかの不適応的方略が,後悔を増大し,後悔が準備機能を促進するというプロセスなどが存在するようであった。また,不適応的方略の中でも促進焦点と結びつくものや,適応的方略の中でも,予防焦点と結びつき,後悔を増大するものの存在も示唆された。

  • 林 雅子
    2022 年 31 巻 1 号 p. 39-51
    発行日: 2022/07/06
    公開日: 2022/07/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,無気力への感情に着目し,縦断調査から一般学生におけるスチューデント・アパシー的な無気力の実態を検討した。3回の調査に参加した大学生121名が,意欲低下領域尺度,無気力感尺度,心のゆとり感尺度を含めた質問紙に回答した。条件付き潜在曲線モデルに基づく解析を行い,初回測定時の学業意欲低下から切片と傾きへの影響を検討した。切片では,心の充足・開放性と対他的ゆとりに負の影響があり,切迫・疲労感には影響がなかった。傾きでは,心の充足・開放性と切迫・疲労感どちらも学業意欲低下からの影響がなかった。つまり,学業への意欲低下は心のゆとりを減少させるが,ネガティブな感情は伴わないことが示された。ただし,意欲の低下はその後の心のゆとりの増減に影響しないことも明らかになり,スチューデント・アパシー的な無気力の特徴が見出された。今後,大学生の無気力に対して上記の特徴を踏まえた支援を検討すべきであろう。

  • 西尾 泰, 飯島 雄大
    2022 年 31 巻 1 号 p. 52-64
    発行日: 2022/07/06
    公開日: 2022/07/06
    ジャーナル フリー

    制御適合理論に基づけば,完全主義の2側面はそれぞれ適した課題遂行方略を求められた場合に課題成績を向上させると考えられる。本研究では,速さが求められる状況(つまり,熱望方略が求められる状況)でのみ完全主義的努力は速さを向上させ,正確さが求められる状況(つまり,警戒方略が求められる状況)でのみ完全主義的懸念は正確さを向上させるという2つの仮説を検証した。62名の大学生が一定の時間,点つなぎ課題に取り組んだ。実験参加者は,熱望方略群か警戒方略群のいずれかに割り当てられた。重回帰分析により,完全主義的努力は熱望方略群でのみ課題遂行の速さを高めることが示された。しかし,完全主義の2側面はいずれも,どちらの群でも課題遂行の正確さに影響しなかった。仮説は部分的に支持され,完全主義的努力は,速さを求められる状況では,効率的に課題を遂行し課題成績を向上させるように作用することが示された。

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