「かたつむりは大きくなるとなめくじになると考えているこどもがいた.成長すれば,からは窮屈になるにちがいない.そうしたら,からを出てなめくじになるだろうというのである.この話を聞いて,人は笑う.しかし,物理の授業で教師が話す論理と,この幼児の論理と,はたしてどれだけ違って聞こえるであろうか.」これは,この秋開かれた物理教育シンポジウムの予稿の書き出しである.かたつむりはなめくじになると考えるこどもに対して,どのようにすれば,かたつむりは大きくなってもかたつむりだということを納得させることができるであろうか.「実物を見せればいい」と簡単にいう人がいるかもしれない.はたして,そういくであろうか.かたつむりを長期にわたって飼うことは,そう簡単ではない.そして,よくよく考えてみれば,そのこどもを笑うおとな自身,かたつむりがなめくじにならないことを確かめたことなどないのが普通なのだ.
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