電磁誘導法則を検証する,生徒用実験教具を開発した.開発した装置は,落下距離を読み取る目盛りを付したガイド用パイプと検出コイル,及びピーク・ディテクターの3つから構成されている.測定原理は,アルニコ円柱磁石を自由落下させ,コイルに誘導された起電力を,半波直線検波回路を通して,起電力に正確に比例した正のみの電圧を取り出し,このときのピーク電圧をコンデンサーに記憶保持させておき,これを生徒用電圧計(理振規格)で測定する.磁石の落下のさせ方は,ナイロンの釣糸に小さな鉄製ナットをくくりつけ,これに磁石を吸いつけて,引いて支えていた糸を放す,簡単な方法とした.装置の特徴は,(1)測定原理と取り扱いが簡単で,再現性に優れ,誰が実験してもしかるべき結果が得られる.(2)指針がピーク電圧を指し示したまま静止を保っているので,目盛りの読み取りが正確に楽にできる.(3)起電力を測る方法を採ったので,V=-n・ΔN/Δtを直接検証でき,生徒には分かり易い.(4)起電力と巻き数,落下速度との直線性が得られるよう,検出コイルを工夫した.コイルの形状と起電力の関係について,種々なコイルを試作し,調べてみたので,その結果についても報告したい.また,市販されている生徒用二重コイル(理振規格)を使って実験してみた結果,起電力と巻き数,速さの比例関係は得られなかった(市販されているコイルは定性的な実験には向くが,定量的な実験には向かないことが判明した).
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