小学校理科「熱の伝わり方」において非常に見分けにくい現象がある.すなわち1の論文にも取り上げられているように金属の種類によって熱の伝わり方が異なるという現象である.論文中で田中氏も実際に実験を行ない詳細な報告をしている.その実験とは,金属棒の一端を熱した場合,熱源からのある距離における温度は,金属棒の熱伝導率,密度,比熱の3つの要素によって決定され,さらに,金属棒表面からの発散率により,温度分布が決まり非常に複雑であると述べられている.温度の伝らり方は,理論的にはCu>A>Feの順になるといわれているが,実験してみるとCu≒Al>Feの順になってしまうという実験結果が報告されている.本稿においては,ラプラス変換という方法を使用して熱伝導の方程式を解き,Cu≒Al>Feとなる可能性が生じるかどうかを検討した.その結果以下のような事が偏微分方程式の解からわかった.(1)金属棒の温度分布は,金属棒の密度,比熱,熱伝導率によって決定され,発散率の影響は,非常に少なく,温度分布の順位を左右するほどには至らない.(29なぜ,CuとAlの特性が接近しているのに対し,Feはそれらとは少しちがって,温度が高くなりにくいかという事を検討した.(3)(2)の事実から,熱源の温度が少し不安定になった場合にはCu≒A1の可能性が,熱源からの距離が小さい場合生ずる.したがって1つの実験を行なう場合,CuとAlが同居するのは好ましくないと考えられる.
抄録全体を表示