近代科学の基礎にある機械論的自然観について,その成立の背景と近代力学の形成において機械論的自然観が果たした意義を考察する。目的論的自然観に代わって機械論的自然観が生まれる背景には自然科学の進歩による自然像の転換や手工業の発達などがあるが,さらにキリスト教の自然観である「神が創造し操縦する宇宙像」の影響も見逃せない。近代科学の意味での「自然法則」の概念はこのような状況のなかで確立した。特にデカルトの場合は,物心二元論と物質世界に対する機械論の根拠を神に求めた。一口に機械論的自然観といっても,その意味内容は人により異なるし,時代とともに変化してきた。どこまでを「機械論」というべきかその定義は単純ではないので検討する。最後に,近代科学における機械論に対する批判についても論ずる。
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