大阪教育大学は2009年10月に京都大学大学院理学研究科と協定を結び,すでに包括的協力協定を持つ大阪府教育委員会との三者共同で,大学院後期博士課程修了者および在学者の中から希望者を募って,高等学校の理数科教員として活躍できるよう支援する取り組み(高度専門型理系教育指導者養成プログラム:Excellent Science Teacher Training Program,略称ESTTプログラム)を立ち上げた。2011年6月には大阪大学大学院理学研究科との協定も成立し,四者共同の取り組みとなった。大学院で研究を行う中で知った研究の面白さや体験を中等教育の現場で生徒に直接伝え,次代を担う若人に知的な刺激を与えて学習意欲を高めてもらいたいとの考えからである。その高度な能力を活かし,理数科教育における中核教員として地域の科学教育力の向上に寄与してもらうこと,さらに,大阪教育大学の学生が受講者から知的な刺激を受ける効果も期待している。この取り組みの中での大阪教育大学の役割は,1)教員免許のための単位取得の機会の提供,2)現場体験のための支援,3)教員として必要な資質を育成・強化するためのセミナーの開催,などである。2010年4月に一期生を受け入れ活動を開始した。現在は手探りの試行的段階にあるが,このプログラムを始めたいきさつとその内容,および,今後の展望を紹介する。
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