高校力学分野の授業で行った力学概念理解度調査FCI,ピア・インストラクション,ワークシートへの記述等から得られるデータに基づいて,ジェンダー差を分析した。その結果,英米と同程度のジェンダーギャップ値があること,顕著なジェンダー差を示す誤概念があること等が分かった。また,ジェンダー差の大きい誤概念に焦点を当てて授業を行うことによるジェンダーギャップ値の変化を調べた。
2016年8月に新潟大学で開催された第33回物理教育研究大会の特色は,海外研究者による特別講演と3つのワークショップの同時並行開催にあった。アクティブ・ラーニングが教育界の世界的な動きとして盛んに議論される中,アクティブ・ラーニング型の教授法の普及は本学会の重要な役割の一つである。それも指導者の一方的な情報伝達ではなく,参加者が体験的に学ぶことが望ましい。ワークショップ開催の目的と共に,特別講演の概要を述べ,新潟から発信したかったことを振り返る。これからの研究大会のあり方について参考になれば幸いである。
第33回物理教育研究大会ワークショップにて協同的グループ問題解決授業を実施した。本稿では協同的グループ問題解決の概略を説明し,電通大で実施した変更点と結果分析を示し,この授業方法を実施する際の要点を紹介する。
アクティブ・ラーニングをテーマに掲げた第33回物理教育研究大会において,授業方式を体験するために行ったチュートリアルのワークショップについて報告する。使用した教材の内容と授業で見られる学生の素朴概念を具体的に挙げて,チュートリアル方式の授業の流れを紹介する。ワークショップ当日に寄せられた意見やこの機会に見出した改善点を記し,相互作用型授業の継続的な実践を通じて,その意義の理解が深まる過程の一例としたい。
米国物理教育研究で開発された,アクティブ・ラーニング型授業プログラムの1つ,『Interactive Lecture Demonstrations(ILDs)』の特徴と日本における実践の工夫について,教員養成系大学における電気回路分野の実践例を交えて紹介する。ILDsは,特定の物理概念を含む課題に対して,演示実験と議論による解決を基本とした,学習者の理解の過程に沿ったよく練られた構造と介入により,学習者の学びをアクティブな状態にし,高い学習効果を実現する。また,ICT機器の活用により授業者がひとりでも実施できるため,日本の教育現場における活用が期待される。
今春も,東京における「第26回今春の物理入試問題についての懇談会」(通称「入試懇談会」)が開催された。これまで継続されてきたように,今年も高校・大学双方からの貴重な意見交換・情報交換がなされた。今春の現役生は新学習指導要領完全実施となって2回目の入試であると同時に,高大接続システム改革会議の「最終報告」が2016年3月31日に公表され,大学入試改革に注目が集まる中での入試であった。懇談会では,個別大学入試に期待する声と作問の苦労,それぞれの現場・立場から見た問題点だけでなく,入試問題という枠にとらわれない物理教育としての課題などについての共通の認識が図られ,有意義な懇談会となった。以下,今回の懇談会における話題を紹介し,入試問題を題材としつつ,中等教育から高等教育へとつなげる物理教育を考えるきっかけとしたい。