中央教育審議会答申(平成28年12月)では探究の過程を通じた学習活動を行うよう指導の改善を図る必要があるとしている。本研究では所属校においてSSH基礎科目に位置付けられる物理基礎の学習指導において,抵抗力のある場合の落下運動を題材とした数値解析を,問題解決型の学習を取入れ実践した。そして大学で学ぶ学習内容へと発展的に接続するための高大接続カリキュラムの在り方について考察したのでここに報告する。
筆者の一人が開発した小テストと個票による形成的評価システムの活用度と,物理概念の理解や学習姿勢の向上度との関係を,力学概念調査紙FCI,学習姿勢調査紙CLASS,小テストおよび形成的評価アンケートを複合的に用いて分析した。その結果,形成的評価の活用度が高い生徒群において,概念理解および学習姿勢がともに向上していることを見いだした。
本論文では,小学校,中学校,高等学校の一貫性に配慮した小学校理科の力学の教材を開発するとともに,それらを用いた実践事例から児童の考えの変容過程を整理した。結果,第3学年「風の力の働き」と第6学年「てこの規則性」において主に力のモーメントの考え方の素地を育む教材を活用すること,及び,小学校第5学年「振り子の運動」の特に「おもりの重さと振り子が振れる周期」を考える場面で高校物理基礎「自由落下と慣性」に触れながら思考できる教材を活用することで小・中,及び,小・高の学びの様相が一貫するという点で有効であることが示唆された。今後は,実際の授業において教材がどのように働いているのかより詳細な分析を進めたい。
元素の周期表は年々拡張されています。自然界に存在しない元素は人工的に合成し確認されて来ました。2015年12月,理化学研究所を主体とする研究グループが生成に成功し新元素であると主張していた113番元素について,国際純正・応用化学連合(IUPAC)により発見が正式に認定され命名権が与えられ,元素名「Nihonium」,記号「Nh」と命名されました。本稿は,元素発見の歴史の中での日本のかかわりを紹介し,ニホニウムの合成方法と認定までの経緯について詳しく紹介します。
筆者は「元気な物理学」の時代(概略1955-65年)を経験したが,そこには計算機革命を主導するなど,「開かれた学問」のマインドに満ちていた。電子は素粒子であると同時にコンピュートする存在でもある。自然は人間の概念世界のなかに描かれるものである。力学の物理教育では実在とツールの関係の考察が必要であり,量子力学の解釈問題はこの点に関わっている。ツールは他の学問に波及する威力を持つ。
日本物理教育学会では物理の教育方法が各種,研究,検討,実践され,また,そのために,物理教育研究メイルも稼働していて,会員間の連絡がうまく機能しているようである。反面,物理学の基礎に関する知見を得,思考するための場所としての学会の役割は二次的なものとなっているように思われて仕方がない。査読のついた学会誌「物理教育」の発刊者としての学会の使命を高めるため,年一度ではあるが,物理教育研究集会のさいに,この催しの一部門として,物理の基本的な考え方に関して,研鑽と熟察できる機会を創設,整備されるよう要望したい。
2010年代後半,学習指導要領,大学入試選抜テストの改革をはじめ物理教育をめぐる状況は大きく変わろうとしている。しかし,物理教員の内発的な教育変革の志向がなければ,外的な要因は変わろうとも,実質的な教育の中身は変わらないのではないかと考えている。ここでは,この間のアクティブ・ラーニングを中心とした物理教員の取り組みを紹介しながら,今後の「未来に種まく」物理教育をすすめていく上の課題と可能性について論じる。
高校基礎物理学」は高校生を対象とした副読本として発刊した。高校物理教科書で学習する物理概念について,根本的な内容から発展的な内容までを取り入れて,物理概念を統一的に理解することを目的としている。私たちを取り巻く様々な物理現象についての関心を高めながら,基本的な概念,原理,法則の理解を深め,科学的なものの見方・考え方を習得することに基本を置いた。
高校物理では,音波などの縦波を,縦波←→横波変換に基づく変位波で扱うことが多いが,そのことにより音の干渉などの問題では深刻な不都合を生じることがある。この問題の解決策として「縦ベクトル(仮称)」なる図法を工夫してみた。
本誌の第66巻第2号(2018)に掲載された「音波の指導法の再考」(川内 正 氏)について,引用文献に挙げられたもの以外に,ぜひ読者に知ってもらいたい文献がある。それは「音波の指導で気になっていること」(石川 昌司 氏)である。
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