高校物理の「レンズと鏡」の項目で,凹面鏡・凸面鏡の生徒実験は一般に行われていない。教科書や物理実験関係の書籍にもその紹介がなく,教材メーカーからも安価な凹面鏡・凸面鏡は数多くの種類は市販されていない。 そこで,簡易な凹面鏡・凸面鏡を生徒自ら制作し,写像公式のグラフ及び光源〜物体の断面図を参照しながら,それらの対応する位置を逐次,観察し確認する学習法を考案した。また,丸型形状に近いスプーンを利用し,凹面鏡としての写像公式の定量的な生徒実験も実施した。実施後のアンケート調査結果,こうした手法が有効であることが判明したので紹介する。
2021 年度に12 回目を開催した「高校物理の授業に役立つ基本実験講習会 in 福岡」に,2012 年度から 2021 年度の 10 年間に参加した延べ 224 人の記述式アンケートについて,計量テキスト分析を行った。その結果,実験の実施に対する意識は,教員経験年数との間に相関がみられ,実験に関する用語の出現数は,教員志望の学生や若年層が高く,中堅層で最も低くなることが確認された。
物理学の基本法則は数式によって正確に表されている。したがって基本法則を深く理解するためには,数式を操る計算力と,多様表現で数式の意味を理解しつつ,具体的な現象と数式を結びつけたメンタルモデルを構築する過程が欠かせない。ここでは,著者がこのような過程をたどることにつまずき,「わからなかった」物理概念の中で,特に印象に残っている例を中心に述べる。
物理の何か具体的な概念 / 法則 / 問題のひとつについて「わかった」ということではないが,「わかった」に至る過程のたのしみを提供する「科学入門教育」についての著者の実践的な気付き,謂わば⟨科学入門教育の「わかった」⟩を,受講生の感想を交えながら紹介する。
力学における仕事の説明を失敗した過去の経験を例に,その後仕事とエネルギーの関係の理解をどのように修正していったかを述べる。修正の結果得られたこととして,物理法則の性質や物理量の定義などの様々なつながりを理解して物理概念を構築していくことの重要性について述べる。
物理学の問題を考える時に,日常的な直感だけに頼ると間違うことがあるという例を二つ紹介する。一つは凍った缶コーヒーと凍っていないものを用意して,斜面を転がす。問いはどちらが速く転がるかという問題だ。 直感的には凍っているものが速く回転しそうなものだが,結果は逆である。これはエネルギー保存則から簡単に分かる。しかし物理学の専門家は誰も正解できなかった。もう一つは電線を流れる電流のエネルギーは電線の内部を流れるか,外部を伝わるかという問題で,答えは外部である。この問題は,日本でも米国でも大論争になった。実験でもシミュレーションでも,その結果は明らかに外部である。
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