差音とは,振動数の異なる2つの音を同時に大きく鳴らすと,差の振動数をもつ音が聴こえる現象のことであ る。差音はうなりと混同されることがあるが,全く異なる現象であり,非線形性が原因となって生じる。本論で はまず差音(一般的に結合音)の発生機構,差音とうなりの違いを説明する。次に,教室で簡単に実施可能な, 聴覚器官の応答の非線形性によって生じる差音の観察実験と,超音波を使った音波の伝搬における非線形性に よって生じる差音の精密な実験を示す。最後に,高校生を対象とした,差音の探究的な学習活動の実施例を示す。
高校物理では波の干渉を媒質の変位の合成で考えるため,波源が3つ以上あると計算できない。波動光学に見 られるように,正弦波を複素数Aei(ωt-kr)で表せば,波の諸現象を統一的に捉えることができる。そこで,Aei(ωt-kr)を具体的に手で操作し,実感できるように,位相ベクトル定規(PVR)を開発した。PVRを活用し, 高校物理の波の単元の諸現象を,媒質の各点に付随する位相ベクトルの変化によって理解する指導法を提案する。
生成AIは,高校物理教育における教材作成や授業設計に新たな可能性をもたらす。本稿では比熱測定実験を 題材として,実験プリントの生成,考察課題の提示,問題文の校正における生成AIの具体的な活用法を示した。 特に,生徒の習熟度に応じた教材設計が数秒で実現できる部分は大きな利点である。一方で,生成AIの出力に は誤りが含まれる場合があるため,内容の妥当性を教師が精査する必要がある。したがって,生成AIの教育的 価値は,教師の適切な運用に大きく依存するといえる。
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら