小型ケージ(17×17×高さ14cm) の中に,上蓋に直径6mmの孔のある容器を6個並べ雌雄混合の成虫群を放すと,大部分の雌雄虫 (94.7~100%)が蓋の孔から容器に侵入した.幼虫の餌(米糠)の入った容器があれば大部分の雌成虫 (89.4~93.3%)がその容器を選択し,その中で産卵をすませて死亡し,多数の幼虫を生じた.
しかし,全ての容器に幼虫の餌が入っていない場合でも大部分の雌成虫 (84.6~92.9%) が容器に侵入した.これは雌成虫が産卵すべき幼虫餌を求めたり隠れたりするために狭い空間に入ることを示唆する.混合群中の雄成虫の侵入程度には大きなふれがあり,幼虫の餌以外の要素の影響を示唆した.雄も雌も6mmの孔径を通過できたが6mm孔径が共存すれば雌は明らかにそちらを好んで侵入した.
処女雌成虫だけをケージに入れた場合,混合群の場合より多くの個体 (36.4~60.0%) が容器の外で死亡し,雄を待ち受ける行動を示唆した.未交尾の雄成虫だけをケージに入れると,混合群の場合より多くの個体 (77.8~92.2%) が容器に入って死亡し,より活発な探索行動を示唆した.
大型のケージ (57cm×57cm×高さ30cm)に雌雄混合成虫を放した場合,雌の約半数 (48%)が容器に入って死亡し,そのうち大部分 (92%)が幼虫の餌のある容器に入り,交尾ずみの雌が幼虫の餌を求めて侵入することを示唆した.一方,維の大部分 (80%)は容器に侵入せずに死亡し,残りは幼虫の餌のある容器に入った.小型ケージの場合と異なり,全ての容器に幼虫の餌が存在しない条件下では,雄成虫はもちろん雌成虫もほとんど容器に侵入しなかった.
これらの結果は,雌成虫であっても広い空間ではいきなり微小な隙聞を求めて入り込むのではなく,物陰や食べ物に反応して接近し,次の段階で歩いて一層狭い隙聞に入ることを示している.
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