ペストロジー学会誌
Online ISSN : 2432-1532
Print ISSN : 0916-7382
14 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • 辻 英明
    原稿種別: 本文
    1999 年 14 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー

    小型ケージ(17×17×高さ14cm) の中に,上蓋に直径6mmの孔のある容器を6個並べ雌雄混合の成虫群を放すと,大部分の雌雄虫 (94.7~100%)が蓋の孔から容器に侵入した.幼虫の餌(米糠)の入った容器があれば大部分の雌成虫 (89.4~93.3%)がその容器を選択し,その中で産卵をすませて死亡し,多数の幼虫を生じた.

    しかし,全ての容器に幼虫の餌が入っていない場合でも大部分の雌成虫 (84.6~92.9%) が容器に侵入した.これは雌成虫が産卵すべき幼虫餌を求めたり隠れたりするために狭い空間に入ることを示唆する.混合群中の雄成虫の侵入程度には大きなふれがあり,幼虫の餌以外の要素の影響を示唆した.雄も雌も6mmの孔径を通過できたが6mm孔径が共存すれば雌は明らかにそちらを好んで侵入した.

    処女雌成虫だけをケージに入れた場合,混合群の場合より多くの個体 (36.4~60.0%) が容器の外で死亡し,雄を待ち受ける行動を示唆した.未交尾の雄成虫だけをケージに入れると,混合群の場合より多くの個体 (77.8~92.2%) が容器に入って死亡し,より活発な探索行動を示唆した.

    大型のケージ (57cm×57cm×高さ30cm)に雌雄混合成虫を放した場合,雌の約半数 (48%)が容器に入って死亡し,そのうち大部分 (92%)が幼虫の餌のある容器に入り,交尾ずみの雌が幼虫の餌を求めて侵入することを示唆した.一方,維の大部分 (80%)は容器に侵入せずに死亡し,残りは幼虫の餌のある容器に入った.小型ケージの場合と異なり,全ての容器に幼虫の餌が存在しない条件下では,雄成虫はもちろん雌成虫もほとんど容器に侵入しなかった.

    これらの結果は,雌成虫であっても広い空間ではいきなり微小な隙聞を求めて入り込むのではなく,物陰や食べ物に反応して接近し,次の段階で歩いて一層狭い隙聞に入ることを示している.

  • 谷川 力, 石﨑 亨子, 大町 俊司
    原稿種別: 本文
    1999 年 14 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー

    1989~1992年に関東地域の5ヶ所から採集したハツカネズミについて,ワルファリン感受性レベルを調べた.

    試験は0.025%ワルファリン毒餌を投与し,毒餌喫食量を測定し,死に至るまで観察した.

    ワルファリン投与による死亡は,3日から38日間の幅があった.最小致死量は相模原系雌86.3mg/kg,最大致死量は千葉系雄1.396mg/kgであった.

    全体では 2頭を除き,残りのハツカネズミは2週間以内に死亡した.少なくとも97.6%以上がワルファリンに対し感受性を示した.この中で外来亜種の可能性がある千葉系と M. musculus domesticus の小笠原系は,致死日数および致死量が船橋系をはじめとする内陸地区に比べ高い傾向がみられた.

    ワルファリン 0.025%毒餌 12日間投与で生存したハツカネズミとICR系ハツカネズミを交配して得たF1およびF2は,ワルファリンに対し抵抗性を示さなかった.ワルファリン毒餌の初日喫食量をクマネズミと比較したところ,ハツカネズミは2倍以上多い量を摂取していた.また,致死量もワルファリン感受性のクマネズミと比べ1.69~3.04倍高い値であった.

    長期にわたって生存した千葉系と小笠原系の2個体では,途中,毒餌摂食量の低下が数日観察された.摂食量を低下させる習性は,長期生存をもたらすー因と思われる.

  • 小曽根 惠子, 金山 彰宏
    原稿種別: 本文
    1999 年 14 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー

    実験室内に排水管に見立てたビニールチューブ(口径3.5cm,長さ20m)を設置し,チャバネゴキブリの閉鎖空間における移動を観察した.ゴキブリの生息場所として, 17×28×18cmのプラスチック容器を用いた.生息場所から3,5,10,15,20mの位置に紙製のシェルター(7×9×5cm)を入れた潜伏場所(10×17×11.5cm)を設置した.生息場所にチャバネゴキブリの雌雄成虫,終齢に近い幼虫合計100個体を放し,容器に慣らした後,各潜伏場所内へ移動潜伏しているゴキブリの様子を一日に2回観察した.

    生息場所に餌・水を設置し,新しく取り付けた各潜伏場所には餌・水は設置しない条件下では,最も遠いゴキブリの移動は15mまでであった.また,潜伏場所内への侵入は見られても,同一潜伏場所へ定着することはなく常にシェルター間の移動が行われていた.一方,生息場所には餌・水を設置せず,新しく取り付けた各潜伏場所に餌・水を設置した条件下では,最も遠い20mのシェルターへ3日目にゴキブリの潜伏がみられた.また,観察期間を通して雌成虫,特に抱卵雌が20mのシェルターに潜伏する割合が多かった.ゴキブリが潜伏場所内に入ると,それがほぼ定着している様子が観察された.

短報
事例報告
feedback
Top