ペストロジー学会誌
Online ISSN : 2432-1532
Print ISSN : 0916-7382
15 巻, 2 号
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原著
  • 緒方 一喜, 佐々 学
    原稿種別: 本文
    2000 年 15 巻 2 号 p. 71-80
    発行日: 2000/10/23
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー

    1997年8月から98年5月にかけて黒部市下水処理場でユスリカの群飛行動の観察を行なった.

    1.本処理場で記録された42種のうち14種がカ柱を形成して記録された.カ柱は種構成の上から3タイプあった.汚水処理水系周辺のセスジユスリカ―B. longifurca型,アクアパークのチビクロユスリカ型,場外河川のキョウトナガレユスリカ― C. bicincfus型の3型である.

    2.ユスリカはそれぞれ種に特有の形状のカ柱を形成した.C. bicinctusによる飛鳥型,チビクロユスリカやヤモンユスリカは人の頭上で竜巻のような旋回の動きを示した.キョウトナガレユスリカは川面に煙幕のようなカ柱を形成した.セスジユスリカは開けた空間で少数個体の時はお手玉型,放流口の出口ではいつも円盤が回転するような水平面の激しい円運動をした.しかし群飛行動のピークには大群が一面に広がりフェンスの表面・丈の低い植物の直上でマーカー型を形成した.

    3.アクアパークのカ柱の80%はチビクロユスリカに優占され通年形成された.しかし,気温12℃以下では低温抑制によって現われなかった.性比の通年の平均値は,チビクロユスリカ20.9,ヤモンユスリカ21.9,C. sylvestris19.0であった.1本のカ柱が単一種で構成されるものはなく,ある種を優占種(80%以上)とする2~4種の混合が多かったが,寡占種集団もあった.

    4.放流口に多かったのは,セスジユスリカ・B. longifurca・キョウトナガレユスリカ・C. bicinctusE. coerulescensであった.最後の3種は放流先の高橋川由来の種と考えられた.気温約10℃以下では見受けられなかった.性比は,セスジユスリカで8,8,B. longifurcaで17.3であった.

    5.放流口付近で形成されるカ柱は,構成種によって,それぞれが種特有の形状と位置を示し空間的すみわけがあった.放流口の直前水路上に円盤型のカ柱が垂直方向に3層見られた.最下層にB. longifurca,中間にセスジユスリカ,最上層にキョウトナガレユスリカが形成された.日没前後の群飛行動の最盛期には,セスジユスリカの大群は放流口全体から上流・下流にまで広がり,フェンス全面を覆い,丈の低い植物の頂上にもマーカー型のカ柱を作った.これらの植物上にはE. coerulescensの小さなカ柱も散見された.ほぼ同時刻頃,土手の上にはC. bicinctusの壮大な飛鳥型のカ柱が現われた.

    6.セスジユスリカの群飛行動には顕著な日周期性が見られた.5月の時点においては,日の出を挟んだ約2時間と日没前約2時間にピークを持つ2峰型を示し,日没時のピークが高かった.

  • 白井 良和, 上村 清
    原稿種別: 本文
    2000 年 15 巻 2 号 p. 81-85
    発行日: 2000/10/23
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー
    富山県内の墓地に発生する蚊幼虫に対するピリプロキシフェン粒剤の効力を調べた.素焼き植木鉢またはプラスティック製植木鉢を入れた円形容器と4分割タイヤの,合わせて3種類の試験容器に,1997年6月10日,製剤を1または3ppm処理し,30日後の7月10日に処理した容器内の幼虫および踊を回収し,試験容器内の水にて27℃の実験室内で飼育し,羽化率,雌雄別羽化成虫数,成虫の種類を調べた.その結果,3ppm処理区では1ppm処理区より効力が高く,タイヤ処理区では,植木鉢処理区より効力が低かった.また,試験容器からは,キンパラナガハシカ,フタクロホシチビカ,ヒトに吸血被害をもたらすヤマトヤブカおよびヒトスジシマカが発生し,ヤマトヤブカ♀とヒトスジシマカ♀を合わせた個体数の羽化阻害率は,全体の羽化阻害率とほぼ同等であった.
短報
  • 望月 香織, 渡部 泰弘, 辻 英明
    原稿種別: 本文
    2000 年 15 巻 2 号 p. 86-89
    発行日: 2000/10/23
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー
    カタラーゼ活性の簡易測定は,過酸化水素水中に虫体(供試虫:コクヌストモドキの成虫)を投入して60秒後の泡の状態を観察すると判定しやすいことが分かった.製造工程における加工処理を幾つか想定し,虫体を加熱するか加工食品に投入,または処理後放置し,活性の変化を観察した.加熱処理や酢に浸漬した処理ではすぐに失活した.蜂蜜に浸した処理では,活性は半減するものの1ヵ月しても活性がみられた.冷凍保存では,対照区である圧殺直後の活性反応とほぼ変わらない結果が得られた.また,殺虫後放置を続けて腐敗すると,活性が高くなった.
  • 谷川 力, 谷口 信昭, 内田 明彦
    原稿種別: 本文
    2000 年 15 巻 2 号 p. 90-92
    発行日: 2000/10/23
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー

    1979年にワルファリンに対して,強い抵抗性がみられたビルのクマネズミを10年後の1989年および19年後の1998年に抵抗性の再調査を行った.

    その結果,生存率が1979年は25.0%(6/24個体)に対して,10年後の1989年は15.8%(3/19個体),19年後の1998年は37.5%(3/8個体)で,生存率にほとんど変化が認められなかった.なお,当ビルにおけるワルファリン製剤およびその他血液凝固阻止剤の使用は, 1984年頃より中止しており,その後殺鼠剤は使用していない.すなわち,殺鼠剤の使用を中止したにもかかわらず抵抗性レベルに変動がなかったのは,遺伝的に抵抗性因子が次世代へ引き継がれている可能性の高いことが示唆された.

事例報告
  • 山田 英夫, 神戸 隆, 田中 千賀子, 乾 守裕
    原稿種別: 本文
    2000 年 15 巻 2 号 p. 93-95
    発行日: 2000/10/23
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー

    1999年9月から11月に行ったホシチョウバエ捕獲調査及び駆除処理で,以下の知見が得られた.

    1.ホシチョウバエの捕獲数が多いトラップの近くに床面の割れ目,くぼみ,排水マスといった発生源が比較的多く見られた.トラップの近くに発生源がない場合,トラップ周辺にある扉の隙間といった構造的欠陥部からの侵入が考えられた.

    2.製造室の床面が時間と共に乾燥するに従いホシチョウバエの捕獲数は減少した.このことから,床面を乾いた状態にすることでホシチョウバエの発生を抑えることができると考えられる.

    3.トラップで捕獲されたホシチョウバエの場所別捕獲数から,ホシチョウバエの発生源を特定し,薬剤散布,構造改善を行うことでホシチョウバエの発生を抑えることができた.

  • 山田 英夫, 神戸 隆, 田中 千賀子
    原稿種別: 本文
    2000 年 15 巻 2 号 p. 96-98
    発行日: 2000/10/23
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー

    今回のユスリカ駆除作業で,川から発生するユスリカ成虫数および蛹の羽化率はピリプロキシフェン0.5%粒剤を有効成分として0.01~0.06ppm処理したところ施工1週目後に急激な減少が見られた.しかし,長期にわたりユスリカの個体数を低レベルに保つことはできなかった.

    以上のことから,長期間にわたりユスリカの発生を抑えるためには,

    ①発生のピー クがくる前に駆除を行う(3月~4月,9月~1O月に施工する).

    ②長期にわたって薬剤の効果を残す(数回にわたる散布,固形剤の利用).

    ③ユスリカの餌となる有機物の除去(暗渠内の清掃).

    などを行うと効果が上がると考えられる.

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