ペストロジー学会誌
Online ISSN : 2432-1532
Print ISSN : 0916-7382
16 巻, 2 号
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原著
  • 田中 伸久, 橋爪 節子
    原稿種別: 本文
    2001 年 16 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー

    チャバネゴキブリ,クロゴキブリ,ワモンゴキブリ,イエバエ,オオキモンノミバエについて,潰した虫体に3%過酸化水素水を滴下する簡便な方法でカタラーゼ試験を行い,熱処理と溶液浸漬処理に伴うカタラーゼ活性の失活状況を調べた.

    熱処理では,5種類の見虫とも65℃60分間の熱処理ではC-活性が維持されていた.チャバネゴキブリでは80℃,クロゴキブリ,イエバエでは90℃1分間の加熱で失活がみられたが,ワモンゴキブリ,オオキモンノミバエでは90℃でも失活に3分間を要するなど,種による差異も明らかとなった.

    また浸漬処理では,10%砂糖水,15%エタノール水溶液,醤油,食物油中で,5種の昆虫ともに長期間(30日間)の活性維持が観察された.

  • 谷川 力, 谷口 信昭, 荒川 治, 内田 明彦
    原稿種別: 本文
    2001 年 16 巻 2 号 p. 95-99
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー
    ワルファリン抵抗性クマネズミに対して,フロクマフェン0.005%毒餌を24時間与えたところ,28匹中18匹が死亡し,その死亡した個体の平均毒餌摂食量は,8.3g/100g B.W., 平均致死日数は7.2日であった.さらに,生存した10匹を1か月間無毒餌で飼育し,同じくフロクマフェン0.005%毒餌を24時間与えたところ,10匹中9匹が死亡し,これらの個体の平均毒餌摂食量は9.9g/100g B.W., 平均致死日数は7.0日であった.同様の試験を最後まで生存した1匹に対して1か月後実施したところ,毒餌摂食量は9.7 g/100 g B.W., 致死日数は3日であった。したがって,フロクマフェンはワルファリン抵抗性クマネズミに対して有効であるが,1日間での摂食では,必ずしもすべての個体が死亡するとは限らない.また,1回目もしくは 2回目のフロクマフェン毒餌の摂食後,1か月の期間をおいても2回目またはさらに1か月後の3回目の摂食ですべての個体が死亡したことは,この間体内に薬剤の影響が残っていることを示唆する.一方,生存した個体の摂取薬量は,死亡した個体の致死薬量と類似した数値を示し,生存個体と死亡個体の薬量の差が認められないことから,フロクマフェンに対してワルファリン抵抗性クマネズミは感受性であると考えられた.さらに,毒餌摂食後の喫食パターンは,4つの型に分類できたが,それらは遺伝的相違ではなく,同じ個体でも薬剤の摂食量や摂取条件により異なることが明らかとなった.
  • 辻 英明, 河村 由紀子, 山内 章史
    原稿種別: 本文
    2001 年 16 巻 2 号 p. 101-105
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー
    飲食店など16箇所の各厨房において,ゴキブリ捕獲用粘着トラップ(誘引物使用)を店により8~24個6~8日間設置した結果,1.7~13.3の平均捕獲指数が得られた。施工後の目標を「平均指数も,各トラップの指数も1未満とする」とし,初期調査で指数1未満のトラップを対象外として除去すると,検討すべき重点トラップ数は1/1.1~1/4に圧縮された.その結果,平均指数は約1.1~3.8倍に上昇し,より高い捕獲指数(3.3~14.8)が施工前指数として得られた.トラップ調査で得られる値は絶対的な個体数推定値でなく相対的な指数であり,トラップ数などの要因でも変動する.したがって,施工後に同じ位置にトラップを置くことを前提にするならば,より高い捕獲指数から施工による指数低下を図ることが可能であり望ましいと思われる.
短報
  • 水谷 澄, 小泉 智子, 新庄 五朗, 太田 周司, 長谷山 路夫
    原稿種別: 本文
    2001 年 16 巻 2 号 p. 107-110
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー

    1)新東京国際空港構内で数時間かけて採取した蚊の種類は,アカイエカ Culex pipiens pallens,トラフカクイカ Culex vorax,ヒトスジシマカ Aedes albopictus,チカイエカCulex pipiens molestus の 4種であった.この中で外国から侵入したと特定出来る種は認められなかった.

    2)採取した種の中で,薬剤感受性試験を実施したのは,多数採取された2種で,空港滑走路周辺の雨水枡由来のアカイエカと空港駅地下汚水槽由来のチカイエカである.

    3)薬剤感受性試験は浸漬試験で行った.供試薬剤は fenitrothion,temefos, permethrin, pyriproxyfen,その他 Bti 剤を選定した.その結果,供試したアカイエカ幼虫は2種の有機燐剤 6~8倍の抵抗性が認められた.しかしその他の薬剤 permethrin と Bti剤には抵抗性は全く認められず,pyriproxyfen についても抵抗性を示す明確な数値は得られなかった.従ってこの集団は,薬剤抵抗性の発達度合の低い低感受性の蚊集団であると思われた.

    4)一方空港駅地下汚水槽から採取したチカイエカ集団は,Bti 剤を除いた4薬剤に9~35倍の抵抗性獲得が確認された.すなわちこの集団は中等度に複合抵抗性を持っている蚊集団であると云える.

    5)以上の結果から,今後の薬剤による防除を考慮すると野外採取アカイエカ集団は,有機燐剤に低感受性であるがその他の薬剤にはほぼ感受性を示す集団なので,現行の薬剤を用いた用量通りの処理で効力が得られるものと思われる.もう一方の屋内採取チカイエカ集団は,中等度の複合抵抗性を獲得している集団なので,現行の薬剤を用量通りに使用しでも,効力や有効期聞が不十分であることが考えられる.また抵抗性のさらなる上昇が予測されるので,今後の対策には薬剤のローテーション処理の実施が望まれる.

    6)薬剤のローテーション処理としては,グループ別に分けた薬剤群を1グループ例えば6か月間継続的に使用する.期日がきたら次のグループの製剤と交代する.このように5グループの処理が終了したら再びもとのグループに戻る.このように抵抗性を獲得している薬剤を断続的に使用することで,発生蚊を常時低密度に管理し,薬剤の抵抗性の上昇を抑制し,かつ抵抗性の低減化を促す可能性も期待したい.

    7)今回の調査範囲では,幸いなことに外国からの侵入蚊に起因すると考えられる問題点は指摘されなかった.今後もこういった調査や監視を続けることは,昆虫媒介性疾病の侵入防止に繋がる意義深いものと考える.

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