本稿は戦後との断絶を利用して,Buettner and Wildasin(2006)やBessho and Ogawa(2015)で用いられているベクトル誤差修正モデル(VECM)を適用し,戦前の地方財政が経済ショックに対して,どのような政策対応をとり,いかに通時的な予算制約を満たそうとしていたのかを考察した。それによって古くから認識されていた日本の財政学における論争を再解釈しようとした。戦前の地方財政では歳出が何らかの理由で増えたときに,自主財源を増やしたり,補助金が交付されたりすることはなく,自主財源の範囲内で歳出の調節を行っていた。戦前の地方財政では自主財源が歳出を決めるという意味での「量入制出」的で素朴な地方自治の財政的条件がいきていたと考えられる。