財政研究
Online ISSN : 2436-3421
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研究論文
  • ―経済ショックと政策対応をめぐって
    持田 信樹
    2024 年20 巻 p. 85-111
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル フリー

     本稿は戦後との断絶を利用して,Buettner and Wildasin(2006)やBessho and Ogawa(2015)で用いられているベクトル誤差修正モデル(VECM)を適用し,戦前の地方財政が経済ショックに対して,どのような政策対応をとり,いかに通時的な予算制約を満たそうとしていたのかを考察した。それによって古くから認識されていた日本の財政学における論争を再解釈しようとした。戦前の地方財政では歳出が何らかの理由で増えたときに,自主財源を増やしたり,補助金が交付されたりすることはなく,自主財源の範囲内で歳出の調節を行っていた。戦前の地方財政では自主財源が歳出を決めるという意味での「量入制出」的で素朴な地方自治の財政的条件がいきていたと考えられる。

  • ―OECDデータを用いた主成分分析による類型化
    畑農 鋭矢, 河合 芳樹
    2024 年20 巻 p. 113-130
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル フリー

     本稿は,OECD加盟国の政府データに主成分分析を適用することにより租税構造と歳入構造の特徴を明らかにし,国際比較を通じてそれらの国々をいくつかのグループに類型化しようという試みである。新たな貢献は以下のようにまとめられる。第1に,2000年以降のデータを追加するとともに,1990年代半ば以降に新規加盟した国々を分析対象に加えた。第2に,税収項目として先行研究と同じ個人所得税・法人所得税・社会保障負担・財産税・間接税だけでなく,総税収・給与税を加えて検証した。第3に,潜在的国民負担の視点から,歳入項目としての財政赤字を追加して分析を行った。財政赤字を含む分析から,日本,アメリカ,アイルランド,スペイン,コスタリカが財政赤字のわなに落ち込みつつあることを発見した。分析対象を租税だけに限るのではなく財政赤字を含む歳入構造の分析が必要である。

  • 小川 顕正, 近藤 春生
    2024 年20 巻 p. 131-149
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル フリー

     本稿は,ふるさと納税制度が地方財政に与える影響について,地方自治体の公共サービス供給における費用効率性に着目して定量分析を行ったものである。ふるさと納税は住民にとって他地域が負担する財源であり,住民はふるさと納税の分だけ公共サービスの供給コストを過小評価するかもしれない。これによって住民のコスト意識が希薄になれば,非効率な公共サービス供給が許容される可能性がある。本稿では,パネルデータを用いた確率的フロンティア分析によって,ふるさと納税に高く依存する自治体ほど費用効率性が損なわれていること,地方交付税の交付団体においては,ふるさと納税制度による住民税控除額や返礼品費用を考慮しても費用効率性が損なわれていることを明らかにした。なお,地方自治体の費用効率性を測定した先行研究は多く存在するものの,ふるさと納税が与える影響に着目した研究はあまり存在しておらず,本稿はふるさと納税制度の多面的な評価に貢献するものである。

  • 星合 佑亮
    2024 年20 巻 p. 151-177
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル フリー

     国民健康保険は日本の皆保険制度を支える重要な公的保険である。2018年度に財政運営主体が市町村から都道府県に移管され,保険料設定方法が変更された。本稿では,「政治的予算循環」に基づき,保険料設定に選挙の時期が与える影響を検討する。その結果,選挙を控えた自治体では1人当たり保険料が1000~1200円程度引き下げられて選挙後に400円程度引き上げられることが示唆され,政治的予算循環仮説と整合的な結果となった。また,人口に占める国保の被保険者数割合が高い地域では選挙前により大きく保険料が引き下げられ(約1800円),選挙後に大きく引き上げられる(約710円)ことも確認された。

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