本稿は,急速な少子化と教育財政の分権化が,公立義務教育諸学校の正規・非正規教職員の任用とその管理運営に及ぼす影響について実証的に明らかにした。近年,非正規教職員の増加が著しい要因として,本稿は正規教職員を過大に抱えるリスクに着目し,これを回避するための教職員の管理運営行動の観点から分析を行った。
義務教育費国庫負担制度においては,国は基礎定数と加配定数からなる教職員定数を定め,これを国庫負担の対象としている。地方による教職員の任用は,少子化の進展と加配定数の配当の不確実性から,正規教職員数は児童数等に応じて算定する基礎定数を目安として管理され,個別の教育課題に応じて配当する加配定数については非正規教職員の任用・充当によって教職員人件費の流動化がはかられている。
基礎定数と正規教職員数の比率が,各都道府県で一定の比率に収束するかをβ収束の概念を用いた回帰式によって推計した結果,収束を示す係数の符号は負で統計的に有意であり,各都道府県の正規教職員数は,長期的に基礎定数に等しいか,これを下回る水準を目標に管理運営されていることを実証的に明らかにした。
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