財政研究
Online ISSN : 2436-3421
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研究論文
  • 林 正義
    2019 年 15 巻 p. 121-143
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/07/28
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     大学の学部専門課程で利用される財政学や公共経済学の教科書では,課税が市場に与える効果の一例として,完全競争市場における部分均衡の枠組みを用いた「物品税の効果」が取り上げられている。その典型的な解説は,納税義務が供給者にある場合,物品税によって供給曲線が税率分だけ上方に「シフト」し,シフト後の「供給曲線」と需要曲線との交点が物品税下での新しい市場均衡になるというものである。本稿では,この物品税の効果に関して,1990年以降に出版された財政学や公共経済学の教科書111点がいかなる解説を行っているかを検証する。そして,多くが必ずしも正確に解説しているわけではなく,場合によっては読者(学生)を誤った理解へと誘導しているおそれがあることを指摘する。

  • ―市町村管理の橋梁における健全性の点検結果を用いて
    中東 雅樹
    2019 年 15 巻 p. 144-162
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/07/28
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     本稿は,国土交通省「道路メンテナンス年報」に掲載されている2014年度から2016年度の3年間の点検結果のうち,市町村が管理する橋梁の総合的な健全度を用いて,普通交付税の有無でみた財政要因が橋梁の健全度の差に影響を与えているかを生存時間分析により実証的に明らかにしている。

     分析結果からは,積雪の多寡については,積雪が多い地域における橋梁の健全度はそれ以外の地域のそれに比べて平均的に早く低下する。また,財政状況に関しては,交付団体における橋梁の健全度の予防保全段階への到達時間は不交付団体のそれに比べて平均的に長い一方で,交付団体における橋梁の健全度の早期措置段階への到達時間は不交付団体のそれに比べて平均的に短いことがわかった。これは,とくに財政状況の悪い地域や条件不利地域において橋梁の維持補修への資源投入が不十分であったことを示唆しているといえる。

  • ―「基準化された標準距離」によるシミュレーション分析
    竹本 亨, 赤井 伸郎, 沓澤 隆司
    2019 年 15 巻 p. 163-180
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/07/28
    ジャーナル オープンアクセス

     コンパクトな都市の方が1人当たり歳出は低いが,コンパクトな都市へ再構築することは簡単ではない。しかし,何もせずに手をこまねいていたらならば,今後予想される人口減少によって,今以上にコンパクトでない都市へと変貌(非コンパクト化)してしまう可能性がある。本稿では「基準化された標準距離」を都市のコンパクト化の度合いを示す指標として用いて,人口減少に伴って進む非コンパクト化が財政に与える影響をシミュレーションした。その結果,非コンパクト化による歳出増加額は,全体で2030年度は2867億円,2045年度は5549億円となった。特に,人口規模が小さい市町村において,非コンパクト化の影響が大きく出ることも明らかとなった。さらに,「基準化された標準距離」を現在よりも10%および20%縮小するという政策を実施すると,最大で10%の場合に4568億円,20%の場合に8640億円の削減効果が示された。

  • ―税引き後弾性値の推計
    栗田 広暁
    2019 年 15 巻 p. 181-193
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/07/28
    ジャーナル オープンアクセス

     本稿では,わが国の所得税制における扶養控除額の変化を利用し,最適課税論の中心的パラメータであるETI(the Elasticity of Taxable Income with respect to the net-of-tax rate)およびEGI(the Elasticity of Gross Income with respect to the net-of-tax rate)を推計した。データには日本家計パネル調査(JHPS)の個票パネルデータを用い,家計の異質性を十分に反映させながら推計を行った。その結果,ETIの推計値は0.7前後,EGIの推計値は0.5前後であるとの結果が得られ,扶養控除額の変化は,家計が直面する限界税率の変化を通じて所得決定に影響を与えていたことが示唆された。

  • ―経常収支不均衡問題とその対応を鍵として
    髙橋 涼太朗
    2019 年 15 巻 p. 194-217
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/07/28
    ジャーナル オープンアクセス

     本稿は,「福祉元年」政策である老人医療無料化と年金制度改正の政策形成過程の分析を通じ,「高福祉高負担」路線が部分的にしか達成されなかったことを明らかにするものである。「福祉元年」は日本型福祉国家の黎明期として位置づけられ,「福祉元年」に内包される政策は国民一般を支える制度とみなされる一方で,財政収支バランスを毀損する枠組みであると指摘されてきた。本稿は経常収支不均衡問題下の大蔵省に着目することで上述の評価に新たな視点を提供する。ニクソン・ショックによって租税負担率引き上げが棚上げされ,スミソニアン合意による円切り上げにより大蔵省は老人医療無料化を許容した。また,経常収支不均衡問題対策の調整インフレ政策は労使協調を生み,年金水準は引き上げられたものの,大蔵省は国庫負担を回避する制度を導入した。「高福祉」は実現したが,「高負担」は社会保障負担の増徴という形でしか実現しなかったのである。

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