静脈学
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13 巻, 1 号
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巻頭言
教育講演
  • 中野 赳, 山田 典一
    2002 年 13 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    Current topics about the epidemiology, diagnosis, therapy, and prevention of pulmonary thromboembolism are provided in this chapter. The recent clinical characteristics of pulmonary thromboembolism has been clarified by the report from JaSPER. Magnetic resonance angiography and magnetic resonance perfusion imaging have been in advance as reliable noninvasive diagnostic techniques. The efficacy of catheter-directed pharmacomechanical thrombolysis for proximal deep vein thrombosis and the results of multicenter registry of temporary inferior vena cava filter are also described here. Finally, prevention of venous thromboembolism is crucially important. We recommend here the tentative prevention strategy for Japanese, in which mechanical methods such as elastic stockings, intermittent pneumatic compression and foot pump are emphasized.

総説
  • 山本 尚人, 海野 直樹, 三岡 博, 内山 隆, 斉藤 孝晶, 中村 達, 金子 寛
    2002 年 13 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    不全穿通枝の治療は下肢静脈瘤治療において重要な位置を占め,静脈瘤の診断では,duplex scanによる検査が今日の主流である.duplex scanと術中所見による下腿穿通枝不全診断につき検討した.

    175人の静脈瘤患者,324肢に304本の穿通枝を認めた.duplex scanにより診断した非不全および不全穿通枝の径(mm)はそれぞれ,下腿上部で2.45±0.17,3.40±0.13,下腿下部で2.84±0.12,3.68±0.08,下腿後面で2.64±0.21,3.40±0.15であった.術中所見による非不全および不全穿通枝の術前duplex scanによる径(mm)は,下腿上部で2.67±0.21,3.23±0.13,下腿下部で2.85±0.12,3.68±0.08,下腿後面で2.67±0.27,3.27±0.14であった.術中所見と照らし合わせた時のduplex scanのsensitivityとspecificityはそれぞれ87.7%,75.3%であった.duplex scanの診断を術中診断と照らし合わせて,真不全穿通枝,偽不全穿通枝,真非不全穿通枝,さらに偽非不全穿通枝に分類すると,真不全穿通枝および偽不全穿通枝の径(mm)は3.59±0.07 ,3.31±0.17であり,真非不全穿通枝および偽非不全穿通枝の径(mm)は2.61±0.11,2.89±0.16であった.

    不全穿通枝は非不全穿通枝よりも径が太いという結果が得られたが,duplex scanによる径と逆流を指標とした検査のみでは術前に不全穿通枝と非不全穿通枝を確実に区別することは困難であり,今後さらなる検討が必要であると思われた.

  • 和田 英夫, 登 勉, 山田 典一, 中野 赳, 鈴木 宏治
    2002 年 13 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    患者の血中止血系分子マーカーは,深部静脈血栓症(DVT),肺塞栓(PE),急性心筋梗塞,播種性血管内凝固症候群(DIC)などの血栓性疾患で有意に高値であり,特にactivated protein C(APC)-PC inhibitor(PCI)complexは,PEやDVTの診断に対する感度・特異性が最も優れていた.一方,APC-α1アンチトリプシン複合体はDICのみに高感度・高特異性を示した.PEならびにDVTの止血学的原因の検討では,ループスアンチコアグラント(LA)疑いが29%と最も多く,その他にはプロテインC欠損4%,悪性腫瘍3%,ATIII欠損2%,DIC2%,protein S欠損1%であった.

    以上,DVT/PEの診断には止血系分子マーカーの測定やLAの検索が必要になると考えられた.

原著
  • 田代 秀夫, 折井 正博, 井上 英昭, 戸谷 直樹, 立原 啓正, 石井 義縁, 根岸 由香, 黒沢 弘二, 山崎 洋次, 青木 照明
    2002 年 13 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    天然ゴム製およびウレタン製の台形柱状に成形した枕子について,静止時のみならず歩行時の圧迫圧,汗の吸水性能,ならびに摩擦抵抗を検討した.皮膚面に対し逆台形に枕子を置くとストッキング面の圧迫圧に比べ皮膚面の圧迫圧が上昇した.運動時は静止時に比べ筋肉上部での圧迫圧が上昇し,天然ゴムに顕著であった.複数の枕子連結部の圧迫圧はウレタン枕子を逆台形連結置きにすることで圧迫圧低下を解消した.吸水性能はウレタンが天然ゴム,綿に比べて優れ,発汗試験ではウレタンは乾燥重量の1.2倍吸水した.摩擦抵抗力は綿<ウレタン<天然ゴムの順であった.ウレタン枕子は圧迫圧が運動時に必要以上に上昇することがなく,発汗に対する吸水性能に優れ,摩擦抵抗も少なく,短辺30mm,長辺50mmの台形柱状形態は枕子の逆台形連結使用を可能とし,従来の枕子連結部の圧迫不良が解消されたので,実用化が期待できる.

  • 小林 昌義, 黒瀬 公啓, 小畑 貴司, 原田 良知, 飛田 研二, 四方 裕夫, 坂本 滋, 松原 純一
    2002 年 13 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    約15年間に経験した肺塞栓症症例21例につきその原因,診断,治療につき検討した.治療前ショック症状を呈した症例は8例.ショック症状のない症例は13例で全く症状のない例が9例だった.上肢あるいは下肢の深部静脈血栓症が先行していた例は16例で無関係のものが5例だった.5例に外科的治療を施行したがカテーテル血栓溶解療法(CDT)が3例,開心血栓塞栓除去術が2例に施行された.残り16例は末梢静脈からの抗血栓療法のみで軽快した.遠隔期再塞栓予防のため経口抗凝固剤は全例に投与されており,また13例に下大静脈フィルターを留置した.ショック症状を呈した肺塞栓症例でCDT,開心血栓塞栓除去術施行し得た症例は救命し得た.血行動態の安定した肺塞栓症例では末梢静脈からの抗血栓療法のみで十分な治療効果が得られた.

  • 丹羽 明博, 新田 順一, 呉 正次, 宮本 貴庸, 小林 和郎, 永田 恭敏, 中村 浩章, 鈴木 比有万
    2002 年 13 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    急性期を当院で入院管理した急性肺塞栓(APE)連続71例(院内発症22例,院外発症49例)を対象に院内発症APEの病態とその対策について検討した.治療法は線溶抗凝固療法を基本とし,2次予防として一時的下大静脈フィルター(IVC-F)を使用した.発症時の入院診療科は多岐にわたっていた.死亡は22例中6例27.3%で,院外発症の49例中8例16.3%と差を認めなかったが,全例発症当日の死亡であり,約1時間以内の死亡が特徴的であった.心肺停止・ショック・失神が15例68.2%と,院外発症の24.5%に比して重症例が高頻度であり,前駆症状なく突然重篤な病態となったものが,15例中12例であった.院内発症APE例の病態は突然重篤になる症例が多く,特に発症直後の死亡が多い.線溶抗凝固療法や一時的下大静脈フィルターを中心とする,迅速な処置が要求される.また,院内各科との連携も重要である.

  • 渋谷 卓, 川崎 富夫
    2002 年 13 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    われわれは深部静脈血栓症(DVT)の診断を一般に普及させる目的でCT画像を用いた簡易検査法を開発してきた.今回,診断精度をさらに向上させるため,血液凝固検査を組み合わせて検討した.片側性の急性下肢腫脹患者32例を対象とし,大腿部の単純CTより患側と健側の大腿筋束断面積比(FMR)を求め,TAT,D-D値と比較した.FMR1.2以上の群(I群),FMR1.1以上1.2未満あるいはTATまたはD-Dが高値の群(II群),FMR1.1未満でかつTATおよびD-D値が正常な群(III群)に分けて検討した.I群はすべて(20/20)DVT,II群は6/9にDVTが存在,III群は0/3でDVTはなかった(感度76.9%,特異度100.0%,精度81.3%,有効度1.77).

    片側性の急性下肢腫脹患者において,I群はDVTを強く疑い,II群はさらに検査を進める必要があり,III群ならば可能性は低い.

  • 内田 智夫
    2002 年 13 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    伏在静脈の弁不全が下肢の皮膚温に及ぼす影響を検討した.片側または両側の大伏在静脈の弁不全のある下肢静脈瘤患者18例28肢を対象とした.サーモグラフィー(NEC三栄TH3106ME)を使用し,室温(23~25℃)で安定した状態で患者を立位とし,下肢の前面および後面の皮膚温を測定した.次に,患者を臥位にして下肢を挙上し,大腿部を駆血した後に再度立位として約5分後に皮膚温を測定した.28肢全体の比較では最高皮膚温は駆血しない場合35.22±0.69℃,駆血した場合34.83±0.76℃で,有意に駆血することにより最高皮膚温が低下することが分かった(p=0.0001).

    下肢静脈瘤における下肢皮膚温の上昇に微小な動静脈瘻の存在や不全穿通枝の関与を指摘する意見もあるが,今回の検討により,伏在静脈の弁不全による静脈血の逆流もある程度は皮膚温の上昇に関連している可能性が示唆された.

  • 竹内 典之, 太田 敬, 石橋 宏之, 杉本 郁夫, 永田 昌久
    2002 年 13 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    慢性下肢静脈不全評価における下行性静脈造影(descending phlebography: DP)の有用性を検討した.慢性下肢静脈不全22例35肢を空気容積脈波法(air plethysmography: APG)とDPで評価した.APGでは幅10cmのカフを膝上部に装着し60mmHgの圧で圧迫したときの静脈血充満指数(venous filling index: VFI)により,DPでは造影剤の逆流先進部により,それぞれ逆流を評価した.慢性下肢静脈不全35肢のVFIは6.7±4.1ml/sec,圧迫により4.5±3.6ml/secと低値となった.圧迫により,VFIが正常化する肢は35肢中11肢,正常化しない肢は24肢であった.DPで深部静脈が下腿まで造影される肢は9肢であった.膝上部圧迫でVFIが正常化した肢では深部静脈に逆流を認める肢はなく,逆に深部静脈に逆流を認める肢では膝上部を圧迫してもVFIは正常化しなかった.APGではとらえきれない形態学的評価がDPでは可能であり,慢性下肢静脈不全評価に有用であった.

症例
  • 近藤 慎浩, 小山 正幸, 皆川 正仁, 伊東 和雄, 小野 裕逸, 福井 康三, 高谷 俊一
    2002 年 13 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    破裂性腹部大動脈瘤手術後にはさまざまな合併症が起こり,治療成績が不良である原因となっている.その中でも下大静脈血栓症は稀ではあるが肺動脈塞栓症を来し致命的となる可能性があるため早期の診断,治療が重要な疾患である.症例は70歳男性,腹部大動脈瘤切迫破裂の疑いで紹介された.呼吸機能低下症例であったため,ステントグラフト内挿術の方針とした.待機中に突然の腹痛とともに血圧が低下し腹部大動脈瘤破裂の診断で緊急手術を行い,人工血管による置換を行った.術後8日目に行った腹部CTで下大静脈の血栓閉塞を認め,Greenfield IVC filterを留置し血栓溶解療法を開始した.下肢の浮腫は術後10日目に出現したが治療に伴い消失した.経過中肺動脈塞栓症を疑わせる症状はなく,術後55日目に退院した.破裂性腹部大動脈瘤術後には動脈系の合併症のみならず静脈系の合併症を考慮に入れておくことが重要であると思われた.

  • 畠中 正孝, 松田 高明
    2002 年 13 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    膝窩静脈静脈性血管瘤は稀な疾患だが,今回われわれは,完全に血栓閉塞していたために軟部組織腫瘍との鑑別が困難であった膝窩静脈静脈性血管瘤の症例を経験した.症例は73歳,男性.肺塞栓症による入院の2カ月後,左膝窩部の痛みおよび左下腿の浮腫のため入院.左膝窩部に,弾性があり圧迫により消失しない径8cm大の腫瘤を認めた.超音波検査,MRI等施行し,腫瘤は血管病変ではなく,Baker’s cystが膝窩静脈を圧迫閉塞,静脈血栓症を来し,その結果肺塞栓を生じたものと判断した.外科的切除したところ,腫瘤は内部が血栓で満たされた静脈性血管瘤と判明,流入・流出静脈は完全に閉塞していた.静脈性血管瘤の血流が保たれている場合,静脈造影や超音波検査により診断は比較的容易であるが,完全閉塞例では他の腫瘤病変との鑑別診断には慎重を要すると思われた.

  • 石川 雅彦, 森本 典雄
    2002 年 13 巻 1 号 p. 67-70
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    下大静脈フィルターにより下大静脈穿孔を来した症例を経験したので報告する.症例は72歳,男性.深部静脈血栓症による肺梗塞症にてGreenfield filter(以下,GF)を挿入した.その約6カ月後に出血性ショックにて入院し,CT検査にて巨大な後腹膜血腫を認め,GFによる下大静脈穿孔と診断した.入院後,ただちに施行した抗ショック療法が奏功し,手術治療に移行することなく軽快し,第39病日目に退院した.現在6年を経過するも,著変を認めていない.GF挿入後の経過として,特殊な合併症である下大静脈穿孔の発症も考慮した注意深い経過観察が必要である.

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