静脈学
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14 巻, 5 号
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巻頭言
原著
  • 新本 春夫, 兼高 武仁, 重松 宏, 宮田 哲郎, 小見山 高士, 重松 邦広, 中澤 達, 近藤 啓介, 石井 誠之, 斎藤 健人, 保 ...
    2003 年 14 巻 5 号 p. 331-338
    発行日: 2003年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    下肢伏在静脈瘤患者2082例2961肢を対象に病歴調査やアンケートを行うことにより治療の適応と成績について検討した.外科治療方針としては結紮併用硬化療法が一時多用されていたが,現在では選択的ストリッピング手術が主流となっていた.選択的ストリッピング手術に比べ,全抜去術では伏在神経障害が多く合併し,結紮併用硬化療法では色素沈着や再発が多く認められた.結紮併用硬化療法の満足度は術後早期において高いとはいえず,血栓性静脈炎や色素沈着,術後の圧迫や長い通院期間が不満として挙げられていた.ストリッピング手術治療での創瘢痕や伏在神経障害などは術後早期のみの不満であり,晩期では遺残や再発が不満として優位であった.ストッキング治療は持続が困難なため,患者の満足度は高いとはいえなかった.下肢静脈瘤に対する治療の際には,病態を正確に把握した上で各患者の希望を考慮に入れ,最善の治療効果が得られる方針を選択することが肝要である.

  • Tomohiro Ogawa, Shunichi Hoshino
    2003 年 14 巻 5 号 p. 347-352
    発行日: 2003年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    Objective: To determine which method of eliciting venous reflux allows obtaining more repeatable venous reflux parameters measured by duplex ultrasound (DU), and which of these parameters is most repeatable.

    Materials and methods: Sixteen limbs with chronic venous insufficiency were measured for venous reflux parameters at superficial femoral vein: SFV and great saphenous vein: GSV, twice under Valsalva maneuver and cuff compression by two different examiners using DU.

    The venous reflux parameters were • venous reflux time • peak venous reflux velocity • timed average venous reflux velocity • venous reflux time velocity integral • total reflux volume • timed average reflux volume • venous reflux time index • peak venous reflux velocity index • timed average venous reflux velocity index • venous reflux time velocity integral index (Index-type parameters which are the rate between reflux and outflow).

    The intra- and inter- observer repeatability of these venous reflux parameters were judged from the testretest reliability (Correlation Coefficient: CC).

    Results: 1) The Valsalva maneuver elicits 13 SFV and 7 GSV refluxes by two examiners, the cuff compression method, 7 SFV and 13 GSV refluxes. 2) The inter-observer CC of all parameters between first and second examination was worse than inter-observer CC. 3) Seven of 10 intra-observer and 8 of 10 inter-observer CC of parameters under cuff compression were higher than that under Valsalva maneuver.

    4) The CC of peak venous reflux velocity index and venous reflux time velocity integral index under cuff compression were best of all parameters.

    Conclusion: The peak venous reflux velocity index and venous reflux time velocity integral index under cuff compression were most repeatable, and should be good quantitative venous reflux parameters.

  • 杉山 悟, 清水 康廣
    2003 年 14 巻 5 号 p. 361-366
    発行日: 2003年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス
    下肢静脈瘤のCEAP分類の有用性と問題点を考察するため,air plethysmography (APG)による下肢静脈瘤患者の静脈機能評価とCEAP分類のclinical分類との関連性を検討した.平成14年 1 月から12月までに当院外科に来院した下肢静脈瘤患者470例691肢を対象としてclinical分類とAPGのデータを集計した.内訳はC0-1 36肢,C2 581肢,C3 12肢,C4 53肢,C5 4 肢,C6 5 肢であった. venous filling index(VFI)はC0-1で1.82±0.99ml/sec,C2で4.31±2.84ml/sec,C3で3.22±1.96ml/sec,C4で6.22±3.27 ml/sec,C5で9.43±6.73 ml/sec,C6で9.59±4.2ml/secであった.C分類のstageが高くなるとともにAPGの各パラメータは上昇し,とくにVFI はよく相関したが,C2とC3では逆転現象がみられた.これはC3の定義がやや曖昧な理由によると考えられた.重症度が高くても,VFIが低めの値をとるdiscrepancy症例もみられ,その評価には注意を要する.
  • 桜沢 健一
    2003 年 14 巻 5 号 p. 367-372
    発行日: 2003年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    2001年1月から2002年12月までの2年間に当科を初診した下肢静脈瘤症例243例350肢を対象に画像診断法とその結果を検討した.第一選択の検査としてカラー・ドプラ法が295肢(84.3%)に施行され,手術適応・術式が決定された.カラー・ドプラ法では不十分であった情報を補完する目的で静脈(瘤)造影検査が45肢に行われたが,これはカラー・ドプラ法施行例の15%にすぎず,多くの症例ではカラー・ドプラ法のみで必要十分な情報が得られた.

    さらに手術に際しては,10MHzの探査子によるBモード法の観察下にマーキングを行い,厳密に皮膚切開位置を決定した.

    大伏在静脈領域に解剖学的破格がまれに存在することからも何らかの画像診断検査は不可欠であり,下肢静脈瘤診療においてカラー・ドプラ法を含めた超音波診断法はもっとも有用な検査手段である.

総説
  • 細井 温, 小野塚 温子, 宮田 哲郎, 重松 宏
    2003 年 14 巻 5 号 p. 353-359
    発行日: 2003年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,静脈疾患においても機能評価の重要性が認識されつつあり,超音波検査法や脈波法などの無侵襲的検査法の果たす役割が増してきている.本稿では,当科で使用している近赤外分光法(NIRS)と空気脈波法(APG)との比較を中心に現在までの知見を報告するとともに,無侵襲診断法の静脈疾患診療における意義について考察した.下肢静脈瘤例の検討では,NIRS上の指標であるambulatory venous retention index(AVRI)とAPGより得られるvenous filling index(VFI)が臨床症状と強い相関を示した.また感度,特異度の点からAVRIがVFIよりも重症肢の検出に優れていることが判明した.下肢深部静脈血栓症(DVT)の検出能に関する検討では,中枢型DVTにおいてはNIRS,APGともに感度100%で差は認められないものの,下腿型DVTではNIRSの検出能の方が優れていた.対象疾患の病態を機能的評価も含めて正確に把握することは適切な治療への第一歩であり,その意味で無侵襲的検査法の診断的意義は大きいと考えられた.

症例
  • 四方 裕夫, 黒瀬 公啓, 田中 潤一, 佐々木 規之, 飛田 研二, 松原 純一
    2003 年 14 巻 5 号 p. 373-378
    発行日: 2003年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は63歳,男性.下肢腫脹を主訴に入院した.下肢深部静脈血栓症を認め,肺血栓塞栓症が疑われた.全身状態は安定しており,全身的血栓溶解療法を施行した.初回の肺血流シンチでは末梢の一部に欠損を認めた.全身的血栓溶解療法を継続したが,4日後の再度の肺血流シンチで右肺中下葉全体に欠損が広がった.胸部造影CTで右肺中下葉への肺動脈幹の血栓閉塞が確認された.肺動脈造影で同一所見を得た.先端孔のある(R)ARROW Wedge Pressure Catheterを用いて,ガイドワイヤーによる肺動脈内血栓破砕術を試みた.血栓が硬いためか,J型端だけではなくI型端でもガイドワイヤーを血栓に刺入することが出来なかった.ワイヤーによる血栓破砕を断念した.やむなく選択的血栓溶解療法を行うこととして,カテーテルの先端孔からウロキナーゼを間歇的に注入した.血栓周囲に一部血流の再開を認めたため,全身的線溶療法が期待できるとして,一時的フィルターを腎静脈下に留置しカテーテル加療を終了した.フィルター留置11日目の肺動脈造影で,右肺動脈幹内の血栓が消失し,狭窄も認めなかった.フィルター内に捕捉血栓がないことを確認し抜去した.血流シンチと造影CTで血栓消失と血流再開を確認し,34日目に退院した.当科外来で現在,抗凝固療法加療中である.

  • 豊田 秀二, 斉藤 聰
    2003 年 14 巻 5 号 p. 379-384
    発行日: 2003年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    約20年間に及ぶ長い病悩期間を有する治療抵抗性の両側多発静脈性潰瘍を有する88歳の男性に対しトラフェルミン・スプレーを使用し,良好な経過を得た.治療前,右足関節外側に10.0×3.5cm,左足関節内側部に4.5×2.3cm,および左足関節外側部に14.0×10.0 cmの計3カ所の皮膚潰瘍を認めた.前2者の潰瘍は5~6カ月で完治し,現在まで再発はみられていない.左足関節外側部の潰瘍は完治していないが,潰瘍が8.5×5.0cmまで縮小し,浅くなっている.トラフェルミンはbasic fibroblast growth factorの製剤であり,従来の皮膚潰瘍治療薬に比しても強力な肉芽形成作用および皮膚形成作用を有している.静脈性潰瘍は難治性で長期にわたる治療を要することが多いが,トラフェルミンの使用を他の治療法と組み合わせることにより治療期間を短縮することができると考えられる.

  • 水口 博之, 吉村 哲規, 岩井 武尚
    2003 年 14 巻 5 号 p. 385-391
    発行日: 2003年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は56歳女性,主訴は左肘部前腕屈側の腫瘤.約10年前より同部の腫瘤を自覚するも放置.最近徐々に増大し,鈍痛・しびれ感を伴うようになり来院した.腫瘤は約2×3 cmの弾性軟で境界は比較的明瞭,可動性はほとんど無く,表面の皮膚は暗青色を呈していた.また挙上にて腫瘤は虚脱するも完全消失は認めなかった.これらの所見より,表在静脈に発症した限局性拡張性疾患すなわちvenous aneurysmまたはvenous hemangiomaを疑い検査を施行した.カラードプラ超音波ではカラーシグナルを伴い,一部血栓を有した複数の内腔を認め,静脈撮影では腫瘤部は多房状の陰影を呈した.よって腫瘤は複数の内腔を有していることが判明し,aneurysmを否定,venous hemangiomaと術前診断し手術を施行した.腫瘤は被膜を有し,一塊となっていたが割面では多数の内腔が認められ,“phleboliths”を伴っていた.組織所見では主に中膜筋層の増生による壁肥厚を認め,venous hemangiomaと診断した.

  • 安藤 正樹, 猪狩 次雄, 安藤 精一, 佐戸川 弘之, 横山 斉
    2003 年 14 巻 5 号 p. 393-396
    発行日: 2003年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    53歳,女性の左下肢深部静脈血栓症,発症後18日に動静脈瘻併設なしで,10mmのリング付きePTFEグラフトにて大腿-大腿静脈交叉バイパスを行い左下肢の腫脹改善し,13年後,静脈造影で開存を確認した.急性期を抗凝血療法で経過し,発症後18日にバイパスしたことが長期開存に繋がったものと考えている1例を報告した.

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