脳静脈血栓症は,近年,診断技術の発達により,以前に比べ非侵襲的に,また早期に診断・治療が行えるようになった.症状を起こす機序として,1)静脈洞閉塞による静脈灌流障害,2)二次的な血栓の進展による皮質,ないしは深部静脈の閉塞による静脈梗塞がある.診断は,CT単独では診断能が低いが,CT, MRI/MRA, DSAとの組み合わせで確定する.原因は多岐にわたり,症状も頭痛のみの軽症例から意識障害などの重症例までまちまちである.原因,症状とも多種多様であるため,確定診断が遅くなり治療を遅くさせている.治療は抗凝固療法が主体であるが,血管内手術の進歩により血栓を除去・溶解するなどの治療報告が多くなっている.予後に関しては,早期治療により71~86%が回復している.自然経過,血栓の進展速度,進展の範囲に関しては予測不能である.治療に際しては,合併症のリスクを含めて十分な“インフォームド・コンセント”を基にして治療法の選択を行わなければならない.
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