静脈学
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16 巻, 2 号
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巻頭言
原著
  • 小田 勝志, 松本 康久, 笹栗 志朗
    2005 年 16 巻 2 号 p. 71-76
    発行日: 2005年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    下肢静脈瘤に対するday surgeryはさまざまな方法が用いられている.その中でEVLT(endovenous laser treatment)は新しい下肢静脈瘤の低侵襲治療法であり,day surgeryの有力な方法として注目される.今回,EVLTのday surgeryにおける有用性について検討を加えたので報告する.【対象と方法】2002年3月から2003年12月の間にEVLT法を施行した167例225肢を対象とした.追跡期間は平均315.7±184.0日であった.年齢は62.4±9.9歳,男:女=48:119であった.治療対象は大伏在静脈(GSV)の逆流210肢,小伏在静脈(SSV)の逆流15肢.鼠径部で剥離した大伏在静脈を穿刺し,レーザーファイバーを挿入した.冷却TLA(tumescent local anesthesia)を用いて超音波ガイド下に大伏在静脈周辺に注入し麻酔を行った.レーザー照射を行った後,高位結紮切離術を追加した.【結果】総エネルギー量は1875.9±1164.2J/肢,EVLTの照射長は37.4±9.0 cmであった.入院期間は3.12±2.33日であった.経過観察期間は315.7±184.0日で初回閉塞率は221/225(98.2%)で,閉塞維持は217/221(98.2%)であった.合併症は深部静脈血栓症など重篤なものはなく,皮下出血斑が22%と最も多く認められた.術前VF(I venous filling index)は6.30±3.88 ml/s,術後VFIは2.27±1.59 ml/sと有意に改善した.超音波法によるGSV径は術前9.10±2.54mm,1カ月6.27±1.68mm,3カ月3.63±1.29mmと有意に縮小傾向を認めた(いずれもp<0.05).【結語】EVLTは手技が簡便,低侵襲でday surgeryの選択肢として今後有用な方法になりうる.

  • 山本 剛, 佐藤 直樹, 田中 啓治, 高野 照夫, 中澤 賢, 田島 廣之, 隈崎 達夫
    2005 年 16 巻 2 号 p. 79-85
    発行日: 2005年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    重症急性肺血栓塞栓症に対し血栓溶解療法,カテーテル治療,外科治療のどれが最も有効であるかは明らかでない.重症急性肺血栓塞栓症に対し,カテーテル治療を第一選択とした治療戦略による臨床成績を検討.対象は重症急性肺血栓塞栓症患者,連続67例.カテーテル治療は,血栓溶解,破砕,吸引療法および一時型フィルター留置を併用して行った.臨床背景および院内予後を評価した.ショック18%,持続性低血圧10%,経皮的心肺補助使用7%,一時型フィルター留置61%.平均肺動脈圧はカテーテル治療により有意に減少した(32mmHg → 23mmHg,p < 0.0001).院内死亡は7%,再発1%と低率であったが,出血性合併症が30%に認められた.重症急性肺血栓塞栓症において,カテーテル治療は,強力かつ速やかな肺動脈圧低下作用を有し,良好な院内予後を示した.重症急性肺血栓塞栓症には,カテーテル治療を第一選択とした治療戦略が有効である可能性が示唆された.

  • 中川 一郎, Beat Alessandri, Axel Heimann, Oliver Kempski, 中瀬 裕之, 榊 寿右
    2005 年 16 巻 2 号 p. 87-93
    発行日: 2005年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,ミトコンドリア局在ATP依存性カリウムチャンネル(mitoKATP channel)の活性化が,虚血に対して神経保護効果を有することが報告されてきている.しかし,いわゆるペナンブラ領域におけるmitoKATP channelの役割については,十分検討がなされていない.今回,静脈虚血モデルを用いてmitoKATP channelの神経保護効果について検討を行った.ウィスターラットを用いて皮質静脈を閉塞し,さらにcortical spreading depressionを誘発させた.静脈閉塞15分前に溶媒,diazoxide,diazoxideと5-hydroxydecanoate(5-HD)を脳室内投与して局所脳血流量,インピーダンス,そして7日後の脳梗塞範囲を計測した.各群間において脳血流の変化に差はなく,diazoxide前投与にて梗塞範囲は有意に減少したが,5-HD同時投与によってこの効果は相殺された.以上より,静脈閉塞モデルにおいてmitoKATP channelの活性化は,虚血による神経細胞死の機序において重要な役割を有していると考えられた.

  • 波多野 稔, 新見 正則, 白杉 望, 堀口 定昭, 矢吹 志保, 宮澤 幸久, 冲永 功太
    2005 年 16 巻 2 号 p. 95-100
    発行日: 2005年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    四肢静脈の形態異常は比較的稀な疾患であり,Klippel-Trenaunay症候群(KTS)は母斑,先天性静脈瘤,患肢の腫大などを主徴候とする疾患である.2001年4月以降KTS6例に対して手術を行った.男性4例,女性2例,患肢は右2例,左4例で,年齢は20~56歳,自覚症状として鈍重感や痛み,静脈の怒張がみられた.静脈瘤は全例に,母斑は5例に,下肢の肥大は3例にみられ,CEAP分類はC2 5例,C3 1例であった.術前検査として全例で超音波検査および静脈造影検査を行い,深部静脈の開存を手術前に確認した.手術は静脈瘤の局所切除を行い,手術施行6例中4例が外側辺縁静脈の静脈瘤に対する手術であった.いずれの症例も主訴の軽減が得られ,満足した状態にある.今回われわれはKTSに伴う静脈瘤6例の手術を経験した.その手術に際しては深部静脈および不全穿通枝などの静脈系の詳細な評価が重要と考えられた.

総説
  • 平井 正文, 岩田 博英, 早川 直和, 澤崎 直規, 錦見 尚道, 庄 健二, 辻坂 敏之, 小松原 良平
    2005 年 16 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 2005年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    下肢の浮腫は,静脈,リンパ管疾患においてしばしば出現する徴候であるが,健常者においてもしばしばみられる.その予防に弾性ストッキングが用いられているが,その有用性の研究には種々の脈波法(空気脈波,ストレインゲージ脈波,水脈波)や光学的容積測定法,三次元形状計測法,MRIなどによる下肢の周径や容積測定が応用されている.しかし,浮腫は,病態,病期,年齢,性,BMI,職業などにより,また下肢の各部位―下腿,足関節部,足部―によっても程度が異なってくる.弾性ストッキングの浮腫予防効果への評価には,測定方法の長所と短所を考慮し,目的に応じて使い分けることが大切である.

  • 小西 善史, 日野 健, 坪川 民治, 塩川 芳樹, 士屋 一洋, 佐藤 栄志
    2005 年 16 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 2005年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    脳静脈血栓症は,近年,診断技術の発達により,以前に比べ非侵襲的に,また早期に診断・治療が行えるようになった.症状を起こす機序として,1)静脈洞閉塞による静脈灌流障害,2)二次的な血栓の進展による皮質,ないしは深部静脈の閉塞による静脈梗塞がある.診断は,CT単独では診断能が低いが,CT, MRI/MRA, DSAとの組み合わせで確定する.原因は多岐にわたり,症状も頭痛のみの軽症例から意識障害などの重症例までまちまちである.原因,症状とも多種多様であるため,確定診断が遅くなり治療を遅くさせている.治療は抗凝固療法が主体であるが,血管内手術の進歩により血栓を除去・溶解するなどの治療報告が多くなっている.予後に関しては,早期治療により71~86%が回復している.自然経過,血栓の進展速度,進展の範囲に関しては予測不能である.治療に際しては,合併症のリスクを含めて十分な“インフォームド・コンセント”を基にして治療法の選択を行わなければならない.

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