下大静脈(以下IVC)浸潤腎細胞癌(以下腎癌)では術前,術中に腫瘍血栓内の癌腫の範囲が確定できず,その開放は腫瘍播種の危険性がある.実際に血行性肺転移やIVC墜からの腫瘍再発があるため,われわれは治療成績向上目的で腫瘍のnon touch, IVC合併切除および人工血管置換を施行している.【対象と方法】1998~2005年の8年間にIVC浸潤腎癌6例に対して腫蕩とen blocにIVCを切除,人工血管再建を行った.補助手段は2例に人工心肺,2例に静脈―静脈バイパスを施行した.IVC再建法は5例にePTFEによる人工血管置換,1例は直接閉鎖した.【結果】全6例で下大静脈断端は陰性,うち3例では腫瘍血栓先端部に腫瘍を認めた.遠隔成績は13月で1例に突然死を認めたが,担癌1例を含む5例が平均38カ月で生存中である.【結論】腫瘍のnon touch, IVC合併切除はIVC浸潤腎癌の遠隔成績向上の可能性がある.