静脈学
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17 巻, 4 号
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巻頭言
教育講演
原著
  • 木村 僚太, 中瀬 裕之, 田村 健太郎, 玉置 亮, 竹島 靖浩, 三宅 仁, 榊 寿右, Oliver Kempski
    2006 年 17 巻 4 号 p. 225-229
    発行日: 2006年
    公開日: 2022/07/05
    ジャーナル オープンアクセス

    ラット脳静脈虚血モデルを用いた2つの実験より,本モデルが虚血性半陰影(ペナンブラ)の研究に有効であるという基礎的知見を報告する.実験1:静脈梗塞巣は虚血1日後から3日後にかけて有意に増大する.実験2:虚血1日後に梗塞巣に隣接する白質内に認められたVEGF(vascular endothelial growth factor)発現が3日後には主に皮質内で広範囲に認められ,7日後には減少する.以上の結果より,本モデルでは虚血領域が緩徐に広がり,ペナンブラに近い病態が梗塞巣周囲に静脈閉塞後の数日間存在しており,本モデルはペナンブラの研究に有用であると考えられた.

  • 佐戸川 弘之, 横山 斉, 有我 由紀夫
    2006 年 17 巻 4 号 p. 231-238
    発行日: 2006年
    公開日: 2022/07/05
    ジャーナル オープンアクセス

    地域における静脈血栓塞栓症(VTE)の発生状況,診断治療,および予防法を調査し,問題点と今後の対策を検討することを目的として,福島県内の病院施設にアンケート調査を行った.1年間の発生数は肺血栓塞栓症(PE)109例,深部静脈血栓症244例で,両者とも手術に関連した発生数は年間手術件数と有意の相関を認めた(p<0.0001).診断としては全国集計に比べ造影CTの施行頻度が高く,治療ではPEに対するフィルター症例が多かった.侵襲的な治療は限られた施設のみで行われていた.予防対策は81%で行われていたが,ヘパリンの施行頻度は27%と少なかった.VTE予防には,症例ごとのリスク評価を踏まえた予防対策をすべての施設で行う必要があり,患者搬送治療ネットワークの構築が望まれた.

  • 田中 宏樹, 石原 康守, 袴田 安紀子
    2006 年 17 巻 4 号 p. 239-244
    発行日: 2006年
    公開日: 2022/07/05
    ジャーナル オープンアクセス

    下肢静脈瘤において,表在静脈が深部静脈に与える影響について検討した.健常14例28肢,下肢静脈瘤18例30肢について,深部静脈の断面積を超音波カラードプラーにて計測した.計測部位は,総大腿静脈(CFV)の大伏在静脈接合部中枢側と末梢側,浅大腿静脈(SFV),膝窩静脈(PV)の計4カ所とし,それぞれ立位と臥位で計測した.健常肢は,性差,左右差いずれも有意差はなかった.下肢静脈瘤での断面積は,PVでは,健常と比較し,臥位で差はなかったが,立位では有意に大きかった.また,CFV,SFVは,立位で差はなかったが,臥位では有意に大きかった.これは,表在静脈瘤からの血液負荷は,立位ではPVに大きく,臥位では大腿静脈に大きいことを示している.下肢深部静脈が表在静脈からうける影響を評価するには,超音波カラードプラーにて深部静脈断面積を計測することが有用である.

症例
  • 田淵 篤, 正木 久男, 濱中 荘平, 柚木 靖弘, 久保 陽司, 種本 和雄
    2006 年 17 巻 4 号 p. 245-250
    発行日: 2006年
    公開日: 2022/07/05
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は34歳,女性.6カ月前から左鼠径部腫瘤に気付き,2カ月前に突然左下肢の腫脹,疼痛をきたした.超音波検査では左大腿静脈周囲に腫瘍を認め,血栓あるいは腫瘍で左大腿静脈から腸骨静脈の内腔は閉塞していた.左大腿静脈周囲の軟部腫瘍,とくに静脈原発平滑筋肉腫を疑い,これに伴う腫瘍塞栓および深部静脈血栓症と診断し,手術を考慮した.術前日に一時型下大静脈フィルターを留置し,左鼠径部に皮膚切開を加えると,腫瘍は左大腿静脈の直上にあり,内腔へ浸潤し,腸骨静脈内で腫瘍塞栓となっていた.左大腿静脈から腫瘍塞栓および血栓を摘出した後,腫瘍とともに左大腿静脈を約7cmにわたって切除し,リング付きePTFE人工血管8mmで置換し,左大伏在静脈を端側吻合して再建した.病理組織学的所見はmalignant peripheral nerve sheath tumorであった.術後10カ月で左鼠径部局所再発をきたした.

静脈疾患サーベイ
  • 太田 敬, 松尾 汎, 小谷野 憲一, 佐戸川 弘之, 八巻 隆
    2006 年 17 巻 4 号 p. 251-257
    発行日: 2006年
    公開日: 2022/07/05
    ジャーナル オープンアクセス

    日本静脈学会の会員が所属する353施設に対し平成16年の1年間に各施設で経験した静脈鬱滞性潰瘍(venous ulcer)に関するアンケート調査を行い,70施設より回答の得られた224症例254肢について発症状況,臨床像,治療法を検討した.CEAP臨床分類のC5は20%,C6は80%であった.CEAP病因分類のEcは5%,Epは77%,Esは18%であった.CEAP解剖学的分類のAs関与は74%,Ad関与は17%,Ap関与は40%であった.CEAP病態生理分類のPrは84%,Poは7%,両者の混在は3%であった.形態・病態診断にはduplex scan,機能診断にはair plethysmographyの使用が多かった.Venous ulcerの圧迫療法として弾性ストッキング着用が多かったが,常時着用は70%に過ぎなかった.一次性下肢静脈瘤が病因として多かったため,外科的治療としてはストリピング手術,高位結紮術が多かった.不全交通枝に対しては内視鏡的不全交通枝切離術(SEPS)が16%に行われていた.

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