静脈学
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18 巻, 3 号
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総説
  • 西部 俊哉, 宮崎 慶子, クドウ ファビオ, 近藤 ゆか, 安藤 太三, 西部 正泰
    2007 年 18 巻 3 号 p. 145-149
    発行日: 2007年
    公開日: 2022/07/06
    ジャーナル オープンアクセス

    【背景】脈波法は下肢静脈疾患の診断を進めるうえで静脈機能を簡便に評価できる方法である.なかでも空気容積脈波法(air plethysmography; APG)は下腿全体の容量変化を定量的に測定することが可能である.今回,一次性下肢静脈瘤におけるAPGの臨床的意義について検討した.1)臨床症状とAPGによる静脈機能の評価の関連: 154例293肢がAPGで評価された.CEAP分類によれば,C0が49肢,C1が12肢,C2が141肢,C3が51肢,C4が32肢,C5+6が8肢であった.Venous filling index(VFI)がC2,3,4,5+6がC0またはC1より有意に高値であった.ただ,C2,3,4,5+6の間で有意な差はなかった.2)APGによる手術的治療の評価:73例110肢が術前術後にAPGで評価された.CEAP分類によれば全例がC2であり,大伏在静脈部分抜去術が40肢に,小伏在静脈高位結紮切離術が20肢に,その両方が50肢に行われた.VFIは術前に比べて術後でいずれも有意に低下していた.【結論】一次性下肢静脈瘤においては,APGによって静脈機能の面から正常肢と鑑別診断したり,手術的治療の効果を評価したりすることが可能である.

  • 中瀬 裕之, 田村 健太郎, 玉置 亮, 竹島 靖浩, 乾 登史孝, 三宅 仁, 堀内 薫, 榊 寿右
    2007 年 18 巻 3 号 p. 157-161
    発行日: 2007年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル オープンアクセス

    当科における術後脳静脈梗塞の症例から,術後脳静脈梗塞の臨床的特徴を検討し,合併症(術後静脈梗塞)を回避するために注意すべきことについて述べる.脳外科手術中の脳静脈損傷により術後静脈梗塞を起こした自験例8症例(全手術中の0.3%),男性3例,女性5例(平均58.1歳)を対象とした.二次性静脈血栓の進展により緩徐に症状が発現してくる群(n=5)と急激に脳静脈灌流障害を起こしてくる群(n=3)の2群に分類できた.症状の発現が旱いものほど重篤な症状がみられた.外科的療法を要したものが2例,保存的に対処できたものが6例である.予後は良好が6例,軽度障害を残したものが2例であった.術後脳静脈梗塞を少なくするためには,(1)術前に静脈解剖を考慮し,重要な静脈を避けた手術アプローチの選択,(2)静脈を損傷しない手術法の工夫, (3)脳静脈損傷時の対処や術後管理など,できるかぎり静脈を温存し合併症を早期に予測し予防する努力が必要である.

  • 駒井 宏好, 重里 政信
    2007 年 18 巻 3 号 p. 169-174
    発行日: 2007年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル オープンアクセス

    重症静脈うっ滞性下肢病変のうち深部静脈弁逆流が主因となる病変に対して深部静脈弁形成術があるが,いまだ一般的な手術法とはなり得ていない.この術式は大きく分けて2種類がある.Internal法は深部静脈を切開して弁を直視下に形成する方法であり,external法は静脈を開けずに外から弁逆流をコントロールする方法である.われわれも硬性内視鏡を用いて現在まで40例に弁形成術を施行した.4年のフォローアップ期間中深部静脈血栓症を起こした患者はなく,94%の症例でCEAP分類の改善をみている.いずれの方法も長所,短所があり,また,さまざまなmodificationがなされている.重要なのはそれぞれの施設,外科医が自信をもって施行できる方法をみつけ,遠隔予後も含めたきっちりとした成績を出し,またその結果をもとに技術の改善にフィードバックさせることであろう.

原著
  • 小畑 貴司, 飛田 研二, 四方 裕夫, 坂本 滋, 松原 純一
    2007 年 18 巻 3 号 p. 151-156
    発行日: 2007年
    公開日: 2022/07/06
    ジャーナル オープンアクセス

    伏在静脈瘤に対し内翻式ストリッピング術(SP)もしくは,高周波焼灼術(RF)を施行し,1カ月後に機能的検査を施行した症例を比較検討した.対象は,SP群は27例36肢で,RF群は13例18肢.治療成績判定に,空気容積脈波法でのvenous filling index (VFI)測定と超音波検査を用い,両群の合併症を検討した.VFIは,SP群は術前平均5.7が術後平均1.9となり,RF群は術前平均5.3が術後平均2.2となり,両群とも統計学的に有意に改善した.合併症は,SP群で術直後の全例で疼痛,術1力月後には17肢(47.2%)で疼痛などを認め,RF群で術直後に疼痛2肢(11.1%)や感覚異常5肢(27.8%),術1力月後には違和感を1肢(5.6%)と1肢(5.6%)で部分的再疎通を認めた.以上より, RFはSPと比較して遜色のない治療法で,合併症の頻度を減少できた.

  • 佐久間聖仁 , 中村 真潮, 中西 宣文, 宮原 嘉之, 田邊 信宏, 山田 典一, 栗山 喬之, 国枝 武義, 杉本 恒明, 中野 赳, ...
    2007 年 18 巻 3 号 p. 163-167
    発行日: 2007年
    公開日: 2022/07/06
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】急性肺塞栓症(APE)患者での深部静脈血栓症(DVT)診断の現状把握により,DVT診断の間題点を明らかにすること.【方法と結果】肺塞栓症研究会(JaSPER)作業部会が実施した3回の肺塞栓症症例登録を比較した.2004年に実施した肺塞栓症全国アンケート調査で報告された症例も対象とした.JaSPER症例ではDVT検索率(第1回登録60.8%,第2回65.4%,第3同84.3%)および検索例でのDVT発見率は次第に上昇している.しかし,2004年全国調査での全APE症例中でのDVT発見率はわずか29.8%であった.静脈造影,RI venographyの使用頻度は次第に減少している.一方,下肢静脈エコーは次第に上昇している.また,CTは第3回JaSPERでは30.2%に用いられていた.【結語】JaSPER参加施設に限定すればDVT検索率は向上している.しかし,全国的にはDVT発見率は未だに低い.診断法は近年変化してきている.

症例
  • 佐伯 宗弘, 浜崎 尚文
    2007 年 18 巻 3 号 p. 175-178
    発行日: 2007年
    公開日: 2022/07/06
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は30歳の女性である.妊娠中経過は正常で2006年5月下旬妊娠39週5日にて第2子を自然分娩した.産褥3日目より発熱,右下腹部痛が出現し虫垂炎を疑われ5月末に腹部造影CTを施行されたところ右卵巣静脈血栓症を指摘され,同日当科に紹介となった. CTにて血栓の先端が下大静脈(IVC)内に突出している可能性が考えられたこと,また,右卵巣静脈は直接IVCに鋭角で合流する解剖的特徴より,血栓遊離による肺塞栓血栓症を引き起こす危険が高いと判断し,同日,緊急に一時型IVCフィルターを腎静脈合流部の上部に留置し,抗凝固療法を開始した.留置7日目に捕捉血栓のないことを確認しフィルターを抜去した.その後の経過は良好で現在ワーファリン内服中である.

  • 河野 通貴, 新見 正則, 波多野 稔, 白杉 望, 堀口 定昭, 河原 真理, 田中 政有, 宮澤 幸久, 高田 忠敬
    2007 年 18 巻 3 号 p. 179-183
    発行日: 2007年
    公開日: 2022/07/06
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は48歳,女性.左下肢の腫脹を主訴に当科を受診した.超音波検査,CT検査では左大腿静脈腹側に径3cm大の嚢腫様腫瘤が認められ,静脈造影で左大腿静脈はこの腫瘤に圧排されて閉塞し,中枢側に向かう側副血行路が描出された.左大腿静脈外膜嚢腫と診断し,嚢腫開窓術を施行した.嚢腫内容は黄色ゼリー状で,通常のガングリオン内容に類似していた.術中検索では明らかな血栓は認めなかった.術後自覚症状の軽快をみている.

プラクティカル フレボロジー
  • 平井 正文, 岩田 博英
    2007 年 18 巻 3 号 p. 185-192
    発行日: 2007年
    公開日: 2022/07/06
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    現在は下肢静脈瘤に対する標準的治療法がないともいわれる.伏在静脈に逆流のない小静脈瘤では一般的に硬化療法が応用されるが,伏在静脈瘤においては二つの手技―伏在静脈の逆流遮断と静脈瘤の消去―が施行されることになる.後者には硬化療法あるいは静脈瘤切除術がおこなわれるが,前者に対してはスタンダードな治療法が確立されていない.現在までストリッピング手術が最も多く応用されてきているが,最近は低侵襲治療法である結紫併用硬化療法,レーザーや高周波を用いる血管内伏在静脈焼灼術およびfoam sclerotherapyが報告され,その治療成績が検討されつつある.それぞれの治療成績も含めた長所と短所を知った上で,病態と患者の要望を考慮してinformed consentのもとに治療法を選択することが大切である.

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