静脈学
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20 巻, 3 号
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巻頭言
原著
  • 高橋 直子, 布川 雅雄, 高橋 範子, 今村 健太郎, 細井 温, 須藤 憲一, 増田 裕, 森永 圭吾
    2009 年 20 巻 3 号 p. 211-217
    発行日: 2009年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    維持透析患者における中心静脈病変に対し,われわれは経皮的血管形成術(percutaneous transluminal angioplasty; PTA)を行ってきた.今回その成績,妥当性について検討した.PTAを施行した透析患者17例を対象とし,全症例の一次および二次開存率をKaplan-Meier法にて算出した.エンドポイントはシャントが閉塞した時点,あるいは静脈高血圧症状によりシャント閉鎖術を施行した時点とした.さらに,糖尿病合併の有無,シャントグラフト使用の有無,性別による開存率の相違をLogrank検定にて比較した.観察期間は平均23カ月(1~67カ月)であった.全症例での一次開存率は6カ月85.7%,1年78.6%,2年44.2%,3年33.1%であり,二次開存率は1年100%,2年90.9%,3年77.9%であった.Logrank検定では比較した項目においてはいずれも有意差を認めなかった.二次開存が良好なことからPTA単独でも長期間シャント血流を温存しうる可能性が示唆され,中心静脈狭窄に対する治療の第一選択として妥当な方法であると考えられた.

  • 小島 淳夫
    2009 年 20 巻 3 号 p. 219-225
    発行日: 2009年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    2006年12月から2008年5月までの1年6カ月間に,他疾患の精査を目的に行ったCTで偶然に発見された静脈血栓症(VTE)の6例について,その特徴を検討した.年齢は16~79歳(中央値73.5歳),悪性腫瘍が3例,撮影のタイミングは4例が平衡相,1例が動脈相,残る1例は冠動脈相の撮影であった.肺塞栓(PE)が3例,深部静脈血栓(DVT)が疑われたのは3例であり,DVTの確定診断として静脈相のCTあるいは下肢静脈エコーを行った.各症例の診療科は内科,外科,呼吸器科,脳神経外科と多岐にわたっていた.VTEの症状は多様であるため,他疾患との鑑別が問題となることがある.他疾患を精査中にVTEがCTにより偶然発見されることは珍しくはなく,その可能性が否定できない場合は,鑑別診断に挙げた注意深い読影が常に必要であると考えられた.

  • 遠藤 淳子, 三上 晴克, 田中 和幸, 大谷 則史
    2009 年 20 巻 3 号 p. 227-233
    発行日: 2009年
    公開日: 2022/07/30
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    下肢の腫脹をきたす疾患の中でも,深部静脈血栓症(DVT)は肺血栓塞栓症(PTE)を高率に合併する場合があることから確実な鑑別診断が必要となる.今回,われわれは下肢の腫脹を主訴として血管超音波検査を依頼された症例について検討したので報告する.対象は2007年1月から12月までに下肢の腫脹を主訴に血管超音波検査を施行した114例.114例中DVTは18例で,部位は中枢型13例,末梢型5例であった.血栓性静脈炎や膿瘍,ベーカー囊胞などDVT以外の疾患も21例で認めた.下肢腫脹例における血管超音波検査はDVTの診断のみならず,他の疾患との鑑別にも大変有用であると思われた.

  • 佐竹 主道, 松山 高明, 池田 善彦, 荻野 均, 植田 初江
    2009 年 20 巻 3 号 p. 235-240
    発行日: 2009年
    公開日: 2022/07/30
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    下肢静脈瘤壁の病理学的変化としては動脈化と呼ばれる内膜および中膜の線維性肥厚などが有名であるが,弁機能不全に関する静脈弁の病理学的検討は少ない.今回われわれは下肢静脈瘤のストリッピング手術時に摘出された静脈組織について,静脈弁の病理組織学的変化を検討した.症例は病理組織診断でも下肢静脈瘤と診断された22症例(男性8,女性14) ,平均年齢54±15歳を対象とした.今回の検討では,下肢静脈瘤の静脈弁は組織学的に弁基部,弁腹および自由縁に線維性肥厚を認め,明らかな変形を呈していた.下肢静脈瘤の一連の病理学的変化として,静脈弁自体にも肥厚,菲薄化といった異常所見があり,静脈弁にも着目する必要が示唆された.

  • 山本 尚人, 海野 直樹, 相良 大輔, 鈴木 実, 西山 元啓, 田中 宏樹, 眞野 勇記
    2009 年 20 巻 3 号 p. 241-244
    発行日: 2009年
    公開日: 2022/07/30
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    下肢静脈瘤治療は,高位結紮・伏在静脈本幹の処理・静脈瘤の処理・不全穿通枝の処理といった因子に分けられる.近年下肢静脈瘤治療において,血管内治療をはじめさまざまな治療が登場してきており,治療の選択肢が広がっている.しかし不十分な治療は静脈瘤の再発や残存に繋がり,静脈瘤治療に対する患者の信用が低下することにもなりうる.今回はわれわれの行っている古典的なストリッピング手術の方法について,高位結紮・伏在静脈本幹の処理・側枝静脈瘤の処理に分けて概説し,高位結紮の重要性について文献的報告をふまえ考察した.

  • 出口 順夫, 伊佐治 寿彦, 鈴木 潤, 加賀谷 英生, 橋本 拓弥, 高山 利夫, 浦部 豪, 西蔭 誠二, 近藤 啓介, 木村 秀生, ...
    2009 年 20 巻 3 号 p. 245-250
    発行日: 2009年
    公開日: 2022/07/30
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    【目的と対象】1999年から2008年3月までに,周術期に深部静脈血栓症を起

    こし,肺塞栓(PE)予防のため下大静脈フィルター(IVCF)を留置した51症例について,一時型と永久型IVCFの成績を比較した.【結果】男14例,女37例(平均年齢56.2歳)で一時型IVCF 35例,永久型IVCF 16例であった.有症状のPE発症は,一時型1例(術後),永久型群1例(挿入時)であり,呼吸循環補助を必要とせず保存的に治療した.しかし,IVCF関連合併症は多く,永久型で心房損傷1例,一時型でデバイス損傷1例,感染1例,IVCF移動11例(心房への迷入2例)であり,いずれもIVCFの早期抜去を必要とした.また,一時型9例で溶解困難な血栓付着があり,うち1例は開腹し下大静脈を切開してIVCFを除去した.【結論】PE予防の目的に応じたIVCFの選択が必要であるが,一時型IVCFは合併症が多く適応を考慮する必要がある.

  • 林田 直樹, 平野 雅生, 鬼頭 浩之, 浅野 宗一, 大場 正直, 相馬 裕介, 田村 友作, 松尾 浩三, 村山 博和
    2009 年 20 巻 3 号 p. 251-255
    発行日: 2009年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    最近4年間に当院でexternal banding法による静脈弁形成術および付加手術を施行した原発性深部静脈弁不全患者8例8肢を対象に成績を検討した.平均follow-up期間は29.5カ月で,全例で術後早期に症状の改善をみた.下行性静脈造影(n = 6)ではKistnerのgrade 3.7度から2度へ改善し(p<0.05),air plethysmographyによるvenous filling indexも改善をみた.External bandingの手技としては術中血管内視鏡による逆流の観察と弁洞をbandingする材料を静脈に固定することが重要と考えられた.術後合併症としては鼠径部創のリンパ漏と創傷治癒遅延をそれぞれ1例に認めた.(結語)原発性深部静脈弁不全に対する血管内視鏡を利用したexternal banding法は逆流の改善に有効であり,とくに術中の逆流が軽度な症例やinternal法の補助に有効である.

症例
  • 杉浦 伸也, 山田 典一, 辻 明宏, 太田 覚史, 玉田 浩也, 宮原 眞敏, 中村 真潮, 伊藤 正明
    2009 年 20 巻 3 号 p. 257-263
    発行日: 2009年
    公開日: 2022/07/30
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    症例は33歳,女性.主訴は左下肢痛,腫脹.プロテインS欠損症に合併した深部静脈血栓症および急性肺血栓塞栓症と診断され,回収可能型下大静脈フィルターを留置した後,抗凝固療法を開始した.フィルター留置26日後,フィルター回収のため下大静脈造影を行ったが下大静脈に直径1cm,長さは6cm程度の血栓残存を認めた.そのためフィルターを一旦,回収した後,再度,新たにフィルターを留置した.引き続き,外来通院にて経口抗凝固療法を行い血栓縮小を試みた.フィルター再留置28日後,血栓縮小効果が確認されたため回収を行った.しかし,フィルター先端フック周囲に血栓を認め,回収用スネアをかけることができなかった.そのためJ型ガイドワイヤを用いてワイヤをU字型にしてフィルター脚間を通すことでフィルター回収に成功した.術後合併症なく現在当院外来にて抗凝固療法を継続している.

  • 長谷川 雅彦
    2009 年 20 巻 3 号 p. 265-269
    発行日: 2009年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    産褥期卵巣静脈血栓症の2例を経験したので報告する.症例1は27歳の女性.妊娠39週に前期破水後に正常分娩した.産褥2日目に熱発,右下腹部痛が出現したため子宮内感染症が疑われ抗生剤の投与を受けた.その後も症状が続くためCT検査を試行したところ右卵巣静脈血栓症と判明した.抗凝固療法を開始し産褥12日目に症状は消失した.症例2は29歳の女性.妊娠39週に吸引分娩にて出産した.産褥6日目より熱発し8日目には右下腹部痛も出現した.付属器炎が疑われ抗生剤の投与を受けたがその後も症状が続くため腹部CT検査を試行したところ右卵巣静脈血栓症と判明した.抗凝固・線溶療法を開始し産褥15日目に症状は消失した.産褥期に発症する疾患として卵巣静脈血栓症を常に念頭に置き,診断にはCT検査が有用である.治療はヘパリンによる抗凝固療法に加え血栓形成の原因となる細菌感染に対して広域スペクトラムを有した抗生剤を使用するべきであると思われた.

  • 川田 忠典, 橫山 元泰, 木村 加奈子, 平川 麻美
    2009 年 20 巻 3 号 p. 271-276
    発行日: 2009年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    上大静脈および腕頭静脈の血栓性閉塞による上大静脈症候群はまれである.われわれは先天性と考えられるプロテインS欠損症による本症候群の1例を経験した.1年前にプロテインS欠損症による右下肢静脈血栓症,右下腿潰瘍に対する皮膚移植,抗凝固療法を受けた既往を有する39歳の男性患者が顔面,両側上肢のチアノーゼを伴った浮腫,外頸静脈および前胸腹部皮下静脈怒張を来して来院.プロテインS総抗原量は低値で,D-dimerは軽度上昇していた.造影CTにて上大静脈,腕頭静脈,左鎖骨下静脈閉塞を認め,胸腹部皮下および食道壁を含めた縦隔内静脈側副路が描出された.抗凝固療法中の一時期,側副血行路と考えられる食道静脈瘤の破裂による出血性ショックを来し,内視鏡的静脈結紮術を要したが,右心への体静脈血還流路は下大静脈のみであり,その閉塞による循環不全あるいは肺梗塞症の防止上,生涯にわたっての抗凝固療法が必須と考え,PT-INRの目標値を2前後としてワーファリン投与継続中である.

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