静脈学
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23 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 久米 博子, 佐藤 彰治, 藤田 聡子, 加賀山 知子, 岩井 武尚
    2012 年 23 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    大伏在静脈本幹硬化療法の高位結紮を併用する方法,高位結紮をしない方法の両者において,術後1年の経過を報告する.【方法】HL+法48例:高位結紮およびGSV根部を部分切除し,GSV断端から末梢側へ硬化剤を注入した.HL-法43例:下腿のGSV分枝から硬化剤を注入し,エコーでフォームをGSV本幹内,SFJまで誘導した.硬化剤は3%または1%POL:CO2=1 : 3,Tessari法で作製した.術後1,3,6,12カ月後に超音波検査にて経過を追った.【結果】大腿部の閉塞率はHL+法:6カ月後80.4%,12カ月後75.5%,HL-法:6カ月後63.4%,12カ月後52.8%であった.深部静脈血栓症などの有害事象は認めなかった.【結語】フォーム硬化療法は大伏在静脈不全に対する治療として,安全に施行できる.HL-法はHL+法に比べ,閉塞率は劣るが,治療としての有用性が示唆された.
  • 廣岡 茂樹, 外田 洋孝, 折田 博之
    2012 年 23 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    2011年3月11日午後2時46分にマグニチュード9.0の巨大地震が三陸沖で発生し,その数分後には巨大津波が東日本を襲い甚大な被害をもたらした.翌日には福島第一原子力発電所で爆発事故が起こり,多数の被災者が山形県に避難して来た.われわれは震災発生後9日,10日に避難者に対し,山形市の落合スポーツセンターの避難所において下肢静脈エコーによる急性期深部静脈血栓症のスクリーニング検査を行った.男性24名,女性99名の計123名中女性14名(11.4%)に深部静脈血栓症を発見した.血栓陽性者の平均年齢は75.4±12.8歳,陰性者は59.0±13.6歳,車中泊経験者27名中3名(11%),歩行困難者25名中9名(36%)に血栓を認めた.合わせて深部静脈血栓症予防の避難生活指導および弾性ストッキングの配布を行ったので報告する.
  • 廣岡 茂樹, 外田 洋孝, 小林 夕里子, 石川 仁, 折田 博之
    2012 年 23 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    2011年3月11日午後2時46分にマグニチュード9.0の巨大地震が三陸沖で発生し,その数分後には巨大津波が東日本を襲い甚大な被害をもたらした.翌日には福島第一原子力発電所で爆発事故が起こり大規模な複合災害の様相を呈した.われわれは被災が原因で入院を余儀なくされた患者25名に対し下肢エコー検査を施行し,6名(24%)に深部静脈血栓症を認め,単変量解析の結果,歩行障害,新規手術が危険因子と考えられた.
  • 大森 啓充, 越智 史博, 田沼 直之, 大貫 英一, 山崎 雅美, 武居 浩子, 菅 美樹, 松本 信夫, 住元 了, 原田 暁
    2012 年 23 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    重症心身障害児(者)の多くは,脳性麻痺などによる筋緊張異常などから四肢の麻痺をきたし,移動能力が制限されることにより長期臥床を余儀なくされ,深部静脈血栓症(DVT)のリスクは高くなると考えられる.今回われわれは,長期に寝たきりの重症心身障害児(者)23例に対して,DVTの有無を詳細に検討した.その結果,下肢静脈超音波検査で,23例のうち,8例(34.8%)にDVTを認めた.血栓形成部位では,下腿部でのDVTの発生部位といわれているヒラメ筋静脈血栓は検出できず,より中枢側の浅大腿静脈,総大腿静脈が多かった.D-ダイマーは,5 μg/ml以上の高度増加をきたした症例はみられなかった.重症心身障害児(者)の突然死のなかにDVTによる肺血栓塞栓症が含まれている可能性もあり注意が必要であるが,重症心身障害児(者)の場合,基礎疾患などによる血管系の未発達などの要因も考えられ,重症心身障害児(者)の医療支援を円滑に行っていくうえでもDVTの検索評価は非常に重要な課題であり,下肢静脈超音波検査は非侵襲的検査として,とくに有用であると考えられる.
  • 猪狩 公宏, 広川 雅之, 内山 英俊, 豊福 崇浩, 工藤 敏文, 地引 政利, 栗原 伸久, 井上 芳徳
    2012 年 23 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    小伏在静脈膝窩静脈接合部に較べ,大伏在静脈大腿静脈接合部(SFJ)の破格は頻度は少ないものの時に経験される.よってSFJの破格形態,頻度および治療に際しての問題点を検討することを目的とした.2005年4月より2010年3月までに下肢静脈瘤を主訴として来院し超音波検査を行った1,563例2,552肢を対象とした.カラードプラ法にて大腿静脈との位置関係を中心にSFJの破格の有無を観察した.SFJの破格を認めたのは6肢(0.24%)であり,大伏在静脈が総大腿動脈の外側から動脈の背側を通り大腿静脈に流入するタイプが3肢と最も多かった.今回の検討では比較的低い頻度ではあるもののSFJの破格を認めた.今後,1次性下肢静脈瘤の治療として血管内レーザー治療が普及していくと考えられるが,SFJに破格が存在することを常に念頭に置く必要があり,またSFJ破格例では焼灼の際に工夫を要すると考えられた.
総説
  • 平井 正文, 岩田 博英, 宮崎 慶子, 小山 明男, 小南 幸哉
    2012 年 23 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    弾性着衣や弾性包帯の四肢静脈疾患,リンパ浮腫への臨床応用では,圧迫圧と同様に伸び硬度も考慮するべきである.本文では,伸び硬度測定器を用いた弾性ストッキング,弾性包帯の単独使用あるいは種々の組み合わせ下における伸び硬度の測定結果を記載した.伸び硬度は,その組み合わせ方法─2枚の弾性ストッキング,弾性ストッキングの上に弾性包帯,2本の弾性包帯─によって変化するが,各組み合わせの中では,最初の圧迫圧が強く,また軽度伸縮性包帯を一番外側に用いたときに大きな伸び硬度が得られた.各組み合わせの伸び硬度を比較すると,2本の軽度伸縮性包帯を用いた組み合わせが最大の伸び硬度を示し,2枚の弾性ストッキングの重ね着が最も小さな伸び硬度であった.それゆえ,圧迫療法を組み合わせるときには,圧迫圧に加え伸び硬度も考慮し,それぞれの長所と短所を頭に入れて組み合わせ方法を選択するべきである.
症例
  • 山田 哲也, 太田 敬, 石橋 宏之, 杉本 郁夫, 岩田 博英, 只腰 雅夫, 肥田 典之, 折本 有貴
    2012 年 23 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は35歳女性.妊娠9週時に右下肢腫脹を認め当科紹介となった.凝固マーカーが異常高値を示し,超音波検査で右大腿・膝窩静脈に血栓を認めた.またアンチトロンビン(AT)活性と抗原量が低下しており,AT欠損症に伴う血栓症合併妊娠と診断した.理学的療法を行ったが血栓症の増悪を認め,未分画ヘパリンによる抗凝固療法を開始した.さらに下大静脈にまで血栓が進展したためフィルター留置を要した.妊娠38週で経膣分娩で出産し,母子ともに合併症は認めなかった.静脈血栓症の既往や血栓性素因を有する妊産婦には妊娠初期からの予防的抗凝固療法が推奨されており,本症例でも入院時よりヘパリンとともにAT製剤投与を開始する必要があった.一方,入院治療に伴う妊婦の精神的ストレスは計り知れず,未分画ヘパリン皮下注射による外来通院での血栓症管理は有用であった.血栓症合併妊娠は高リスクではあるが,適切な血栓症管理を行えば妊娠継続が可能である.
  • 内田 智夫
    2012 年 23 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    重複大伏在静脈の頻度については1%から49%等さまざまな報告がある.また,その形態もさまざまである.今回,当院で伏在静脈瘤に対してストリッピング術を施行した症例を対象に検討したところ,大伏在静脈が一度分岐したあと再度合流している重複伏在静脈を3例経験した.いずれも下肢静脈瘤の術前に行った超音波検査で大伏在静脈の走行を確認し,ストリッピング術を行った.抜去した静脈の標本で肉眼的にも異常を確認できたので報告する.【症例1】59歳女性:左大伏在静脈の一部が約3 cmの長さにわたり分岐再合流していた.【症例2】71歳男性:右大伏在静脈の一部が約5 cmの長さにわたり分岐再合流していた.【症例3】41歳男性:左大伏在静脈の一部が約2 cmの長さにわたり分岐再合流していた.3症例とも血管が重複していた部位は,概ね大腿の中央付近であった.当院で2008年から2010年までの3年間に上記3症例を経験した.同時期にストリッピング術を行った総症例数162例200肢のうち1.5%の頻度にあたる.重複伏在静脈はまれではあるが,カテーテル治療やグラフト材料として採取する際に留意を要すと思われる.
  • 渋谷 卓, 江戸川 誠司, 佐藤 尚司
    2012 年 23 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    鼠径部手術後の難治性リンパ漏に対し,大網充填併用腹膜開窓術による腹腔へのドレナージが有効であった2例を経験した.症例1は87歳,男性.閉塞性動脈硬化症に対する人工血管バイパス後3年目に左鼠径部にリンパのう胞が発症した.数回の穿刺吸引・圧迫治療や癒着療法を行うも再発したため,リンパ液の腹腔への誘導と人工血管の感染防止を目的に,大網を有茎に作成し誘導,治癒し得た.症例2は77歳,男性.鼠径部リンパ節の生検後にリンパ漏が発症,数回の再閉創術や持続陰圧吸引を行うも再発したため,有茎大網を右鼠径部に誘導した.術後速やかにリンパ液の漏出は消失,術後4年の経過は良好である.大網充填併用腹膜開窓術は難治性リンパ漏に対する,侵襲的ではあるが有効な治療法の一つである.
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