静脈学
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23 巻 , 3 号
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巻頭言
特集:弾性ストッキングの現状と展望─弾性ストッキング・コンダクター養成委員会から
総説
  • 孟 真, 宮井 美恵子
    2012 年 23 巻 3 号 p. 215-220
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2012/08/30
    ジャーナル フリー
    ●要  約:日本における圧迫療法の認知度は低かったものの,静脈疾患治療の進歩,肺塞栓症・深部静脈血栓症予防,癌による続発性リンパ浮腫治療の認知で現在は全国で広く使用されるようになっている.平成14年に弾性ストッキング・コンダクター養成制度が日本静脈学会により創設された.これは静脈疾患(肺血栓塞栓症を含む),リンパ管疾患に対する基礎的な知識,弾性ストッキングに対する専門的知識および技術を持った医療人を育成するためであった.弾性ストッキング・コンダクター養成講習会の受講と臨床経験で資格取得ができ現在までに1000余名が資格を取得している.今後も弾性ストッキングを中心とした圧迫療法の啓蒙はもちろん基礎的,臨床的な研究を推し進めていかなければならない.
  • 杉山 悟
    2012 年 23 巻 3 号 p. 221-226
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2012/08/30
    ジャーナル フリー
    ●要  約:下肢静脈瘤患者では下肢静脈圧が上昇しており,その治療において圧迫療法が欠かせない.今回,弾性ストッキング・コンダクター養成委員会からの特別企画の一環として,空気脈波検査を用いて下肢静脈瘤の治療における弾性ストッキングの有用性を検証した.下肢静脈瘤患者のvenous filling index(VFI)は,弾性ストッキングの着用により術前平均値7.8 ml/secから5.6 ml/secとなり,正常化するには至らないが全例で有意に低下した(p<0.05).また健康な看護師を対象に行った検査で,40歳以上の群では40歳未満の群よりVFIが有意に高値であった(p<0.05)が,VFIが1.0 ml/sec以上の被験者に弾性ストッキングを着用させてVFIを再測定したところ全例で低下し,平均値は1.0 ml/sec以下となった.その結果,弾性ストッキングは下肢静脈瘤の患者の静脈機能を改善することが確認され,また,立ち仕事の健常者に対しても有用である可能性が示唆された.実際の臨床場面では弾性ストッキング着用に関するトラブルも多く,弾性ストッキングコンダクターはその指導を通じて,下肢静脈瘤治療のアドバイザーとして大きな役割を果たしていると考える.
  • 孟 真
    2012 年 23 巻 3 号 p. 227-231
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2012/08/30
    ジャーナル フリー
    ●要  約:深部静脈血栓症,血栓症後遺症,静脈性潰瘍の治療において弾性ストッキングなど圧迫療法は必須の治療法であるが,比較的,圧迫療法に対して理解が深いと思われる日本静脈学会会員施設の調査でも7割程度の患者にしか使用されていない.これは社会保険上で認知されていないことも大きな要因であると思われる.過去の研究から,深部静脈血栓症血栓症の治療においてはとくに血栓症後遺症の予防に弾性ストッキングは有効である.また静脈性潰瘍の治療,再発予防にも圧迫方法の詳細には議論があるものの有効性が明らかとなっている.患者との十分な相談により圧迫療法のコンプライアンスを向上させることが治療効果を高めると考えられ,患者指導を主な業務とする弾性ストッキングコンダクターの役割は重要である.
  • 山田 典一, 松田 明正, 荻原 義人, 辻 明宏, 太田 覚史, 石倉 健, 中村 真潮, 伊藤 正明
    2012 年 23 巻 3 号 p. 233-238
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2012/08/30
    ジャーナル フリー
    ●要  約:弾性ストッキングは静脈血栓塞栓症の理学的予防法の一つとして汎用されており一定の予防効果が報告されている.他の予防法と比較しても,出血性合併症のリスクがなく,簡便で比較的安価であることより,使用しやすいという利点がある.わが国でも以前より静脈血栓塞栓症予防法の一つとして用いられていたが,2004年の肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドラインの公表と,さらに同時期に肺血栓塞栓症予防管理料が保険診療報酬改定で認定されたことを契機に急速にその使用頻度が増加した.しかしながら,多くの前向き大規模研究が行われている薬物的予防法と比較すると未だ十分なエビデンスがあるとは言い難い.本項では,静脈血栓塞栓症に対する一次予防法としての弾性ストッキングの現時点でのエビデンスをレビューする.
  • 平井 正文
    2012 年 23 巻 3 号 p. 239-245
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2012/08/30
    ジャーナル フリー
    ●要  約:上肢リンパ浮腫と下肢リンパ浮腫,一次性リンパ浮腫と二次性リンパ浮腫の臨床所見の違いおよび陰部リンパ浮腫の病態について記載し,リンパ浮腫治療においては病態の違い,重症度に基づいた治療法の選択が大切であることを強調した.また,リンパ浮腫圧迫療法における圧迫圧と伸び硬度の役割をのべ,圧迫下の運動の意義について記述した.
委員会報告
  • 保田 知生, 孟 真, 平井 正文, 東 信良, 市来 正隆, 佐久田 斉, 杉山 悟, 八杉 巧, 三井 信介, 山田 典一
    2012 年 23 巻 3 号 p. 247-254
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2012/08/30
    ジャーナル フリー
    ●要  約:弾性ストッキング・コンダクター資格は日本静脈学会が2002年から取り組んでいる資格認定制度である.医師,看護師,准看護師,臨床検査技師,理学療法士,診療放射線技師,作業療法士,臨床工学技師の資格保持者を対象に認定し,2009年6月から調査期間までに706名の有資格者を輩出した.今回この資格認定制度が臨床上どの程度役立っているのか,また個々の能力改善にどの程度影響を与えているのかを調査した.結果,資格の意義は非常に高い評価を得たが,職場で十分な評価を得て活躍の場を提供されているとは言い難い面もある.また弾性ストッキングのみで管理の難しい病態に対応するにはさらなる研鑽が必要である.アンケート調査により現状を把握し,当資格の将来を考察し報告する.
原著
  • 廣岡 茂樹, 石井 正次, 外田 洋孝, 石川 仁, 折田 博之
    2012 年 23 巻 3 号 p. 255-259
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/08/30
    ジャーナル フリー
    ●要  約:2011年3月11日午後2時46分にマグニチュード9.0の巨大地震が三陸沖で発生し,その数分後には巨大津波が東日本を襲い甚大な被害をもたらした.翌日には福島第一原子力発電所で爆発事故が起こり,多数の被災者が山形県に避難した.われわれは避難者に対し,山形市の落合スポーツセンター避難所で深部静脈血栓症のスクリーニング検査を行い,123名中14名(11.4%)に深部静脈血栓症を発見した.40歳以上の女性被験者の因子のロジスティック回帰分析の結果,歩行障害および車中泊が危険因子として抽出された.
  • 松本 春信, 山本 瑛介, 神谷 千明, 三浦 恵美, 北岡 斎, 山本 晃太, 出口 順夫, 佐藤 紀
    2012 年 23 巻 3 号 p. 261-265
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2012/08/30
    ジャーナル フリー
    ●要  約:ベーカー嚢腫の破裂は,下肢深部静脈血栓症の鑑別のひとつで,偽性血栓性静脈炎(pseudothrombophlebitis)と称される.日常の臨床において,実際にベーカー嚢腫の破裂に遭遇する機会は稀である.今回,当科におけるベーカー嚢腫破裂症例を検討したので報告する.過去5年間に,下肢腫脹を主訴に当科を受診された症例は424例で,深部静脈血栓症163例(38.1%),リンパ浮腫26例(6.1%),ベーカー嚢腫破裂5例(1.2%),その他230例であった.ベーカー嚢腫破裂は,男性2例,女性3例,平均年齢66.4歳(51~80歳)で,発症数日前に膝関節痛を自覚したものが2例,残り3例は以前から変形性膝関節症を指摘されていた.浮腫を2例,腓腹部把握痛を2例に認め,1例で足関節部の皮下出血を認めた.診断は,全例超音波検査で行った.静脈血栓症の合併は認めなかった.治療は,全例消炎鎮痛剤投与による保存的治療により症状は改善した.下肢深部静脈血栓症とベーカー嚢腫破裂の鑑別は臨床症状のみでは困難なことが多く,注意深い問診とエコー所見が診断上重要である.
症例
  • 福永 亮大, 郡谷 篤史, 隈 宗晴, 岡崎 仁, 児玉 章朗, 三井 信介
    2012 年 23 巻 3 号 p. 267-270
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2012/08/30
    ジャーナル フリー
    ●要  約:下肢静脈瘤に対するストリッピング術後の下肢痛の原因は,伏在神経障害であることが多い.今回,ストリッピング術後に激烈な下肢痛と歩行困難を訴え,複合性局所疼痛症候群と診断された1例を経験したので報告する.症例は43歳女性,下肢静脈瘤に対し,選択的内翻式ストリッピング術を行った.術後7日目に独歩退院となったが,術後12日目に痛みが増強したため外来受診となった.痛みは足関節部に限局し,歩行困難な状態であった.運動神経障害は認めず,当初は伏在神経障害を疑ったが,痛みは寛解と増悪を繰り返し,部位も移動し,アキレス腱部の痛みも訴えるなど,伏在神経障害とは異なる印象であった.本人希望もあり,他院受診にて,複合性局所疼痛症候群(CRPS)と診断された.ストリッピング術後の疼痛としては,伏在神経障害をまず考えるが,不釣り合いな痛みがある場合は,CRPSも鑑別することが必要と思われた.
原著(委員会報告)
プラクティカル・フレボロジー
  • 舩津 篤史, 中村 茂
    2012 年 23 巻 3 号 p. 283-293
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2012/08/30
    ジャーナル フリー
    ●要  約:【背景】下肢深部静脈血栓症を発症した腸骨静脈圧迫症候群に対するステント留置術の有効性は数多く報告されているが,長期成績に関してはいまだ明らかではない.【目的】腸骨静脈圧迫症候群に対するステント留置術の長期成績を検討すること.【方法】2000年12月から2011年2月の間に当院にて急性下肢深部静脈血栓症を発症した腸骨静脈圧迫症候群に対しステント留置を行った20例を対象とした.腸骨静脈圧迫症候群の診断は,十分な血栓溶解療法を行った後でも静脈造影検査および血管内超音波検査(IVUS)にて高度狭窄を認めるか圧較差が2 mmHgを超えるものとした.ステント留置後の初期成績および慢性期ステント開存率,臨床経過について検討した.【結果】ステント留置は全例で施行できた.院内死亡や症候性肺塞栓症の合併は認めなかった.2例で早期ステント血栓症を認めたため,引き続き血栓吸引を施行したが1例で再灌流が得られなかった.結果,19例で症状は改善し,退院時にステント開存が確認され,全例でワーファリンを導入し退院した.17例(90%)で退院後の慢性期経過観察が可能であった.平均50カ月間の臨床経過中に1例で突然死を認めたが,他の16例では深部静脈血栓症,肺塞栓症とも認めなかった.ステント開存の評価は静脈造影あるいはエコー検査にて施行し,1例でステントクラッシュによる再狭窄を認めたが(再狭窄率6.2%),他の例ではステントは開存し,再狭窄は認めなかった.【結語】急性下肢深部静脈血栓症を伴った腸骨静脈圧迫症候群に対するステント留置術は血栓処理後に安全に施行でき,かつ症状改善に有効であった.少数での検討ではあるが,慢性期成績も良好であった.
委員会報告
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