静脈学
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24 巻, 1 号
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巻頭言
追悼文
特別寄稿
  • 阪口 周吉
    2013 年 24 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/02/27
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:私が初めて静脈疾患に接したのは1952年の頃,まだ下肢静脈の病態生理すら判然としない状況であった.そこでこれをプレチスモグラフィーで数値として示す方法を開発し,まずUIPに参加,続いてわが国血管外科のメンバーと共に第1回の静脈学集会を開き,以後会員諸兄の御努力によって今日の日本静脈学会の盛況をみるに至った.このような歴史の流れが,後輩諸君に何らかのインパクトを与えることを期待しながら,私の「静脈学」について書いてみた.
原著
  • 久木野 竜一, 出月 健夫
    2013 年 24 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/02/27
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:当院では大伏在静脈の内翻式ストリッピング術を,大腿神経ブロックとTLA(tumescent local anesthesia)併用麻酔で行っている.術中に下腿をミルキングし,総大腿静脈と大伏在静脈を確認している.2010年入院手術を行った症例は120例,152肢で,このうち大伏在静脈ストリッピング術は121肢だった.152肢のうちCEAP分類でC4以上の皮膚症状を伴ったものは52肢で34.2%を占めた.一般の皮膚科外来で下腿潰瘍などの下肢静脈瘤に伴う皮膚症状を診察する機会は多いが,下肢静脈瘤が原因ではなく,壊疽性膿皮症や血管炎などの症例もあるため,皮膚科医は的確な診断をし,治療の方向性を示す必要がある.
  • 杉山 悟, 内田 發三, 宮出 喜生, 因来 泰彦, 長谷部 真由美
    2013 年 24 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/02/27
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:空気容積脈波検査(APG)および下肢静脈の超音波ドプラ検査を用いて,看護師の下肢静脈機能を評価し,静脈機能の低下に対する弾性ストッキングの有用性を検討した.20歳台,30歳台,40歳台,50歳以上の健康な現職看護師それぞれ5名,合計20名を対象とした.臨床症状を聴取したのち,視診を行い,APGによるvenous volume(VV),venous filling index(VFI)の測定と,超音波ドプラによる大小伏在静脈,膝窩静脈における逆流の評価を行った.40歳未満(A群)と40歳以上(B群)で比較すると,網の目状,クモの巣状下肢静脈瘤の比率がB群で多く,症状では,こむら返りの訴えがB群で多かった.VVはA群で57.9±13.5 ml,B群で76.9±14.5 ml,VFIはA群で0.91±0.44 ml/sec,B群で1.6±0.58 ml/secと,いずれもB群が有意に高値であった.VFIが1.0 ml/sec以上の被検者に弾性ストッキングを着用させてVFIを再測定すると,すべての例で著明な改善がみられた.今回の調査では,看護師の静脈機能は40歳以上では有意に悪化していた.仕事中の弾性ストッキングの着用は静脈機能を是正し,下肢の静脈機能の維持,疲労の緩和に有用であることが推察された.
  • 田淵 篤, 正木 久男, 柚木 靖弘, 久保 裕司, 久保 陽司, 滝内 宏樹, 西川 幸作, 種本 和雄
    2013 年 24 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/02/27
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:下腿部大伏在静脈本幹へのフォーム硬化療法を併用した大腿ストリッピング手術のポリドカノール濃度別に治療成績,術前後の静脈機能を比較検討した.ポリドカノール濃度は1%(A群,36例,45肢),0.5%(B群,44例,56肢)および0.33%(C群,44例,52肢)を対象とした.空気容積脈波法にて術前,術後1,6,12,24カ月のvenous filling index(VFI),venous volume(VV),residual volume fraction(RVF)を測定した.血栓性静脈炎はA群18.6%,B群7.1%,C群3.8%で,A群が有意に高率であった.累積無再発率は12カ月でA群95.4%,B群92.9%,C群86.5%であり,A群とC群の間に有意差を認めた.VVの術前,術後12カ月値はA群116.7±40.6,80.7±22.4,B群138.2±47.6,90.5±36.6,C群130.5±45,94.1±35.2であり,各群とも術後有意に低値であり,静脈うっ滞の改善を認めた.治療成績,静脈機能の結果からポリドカノール濃度は0.5%が最適であると考えられた.
  • 星野 祐二, 伊東 啓行, 松浦 弘, 岡留 健一郎
    2013 年 24 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/02/27
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:静脈うっ滞性病変に対する内視鏡下筋膜下穿通枝切離術(subfascial endoscopic perforator vein surgery; SEPS)は,これまでもその良好な手術成績が報告されているが,一方で不全穿通枝処理の必要性は未だ議論されている.今回われわれは,ターニケット駆血を必要とせず,通常の腹腔鏡手術と同じ再利用可能デバイスを使用するシンプルな“modified”SEPSを慢性静脈うっ滞性病変に対し施行した.対象症例は皮膚病変部周囲に径3 mm以上の明らかな不全穿通枝を有するCEAP C4以上の静脈うっ滞性皮膚病変合併症例で,これまでに68肢64例に対し“modified”SEPSを施行し,また同時に50肢48例に対し伏在静脈処置(ストリッピング手術,レーザー焼灼術)を追加した.いずれの症例も合併症なく経過し現在のところ術後成績としては,潰瘍再発が2例,治癒遅延が3例認めるのみで,その94%の症例において皮膚症状の改善を認めた.不全穿通枝を有する静脈うっ滞性皮膚病変に対する治療手段の一つとして“modified”SEPSは,その安全性,経済性からも有用であると考えられた.
  • 根岸 由香
    2013 年 24 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/02/27
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:当院で2010年度に同一術者が下肢静脈瘤に対し施行した大伏在静脈抜去術(stripping)と1470 nm diode laserによる血管内レーザー治療(EVLA)各20例の手術経過を比較した.対象は38~73歳のCEAP分類C2~5の大伏在静脈瘤の患者で,stripping群は全身麻酔,EVLA群は静脈麻酔+TLAで施行し,器械セットは術式ごとに同一とした.ドプラーエコーおよび3D-CTにて静脈瘤を評価し,患者希望で術式を選択した.EVLA群の方が手術室内滞在時間は短かった.両群とも術後3日間の鎮痛剤内服で疼痛は自制内で,深部静脈血栓症などの重篤な合併症症例はなかった.術後1週間での皮下出血はstripping群で15例と多かった.EVLA群では残存血管内の血栓化部位に違和感を2例で認めたが,術後1カ月でほぼ消失した.術後1カ月までの治療経過や患者満足度には大きな相違はみられなかった.
  • 浦山 博, 谷内 毅
    2013 年 24 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/02/27
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:上肢での透析用内シャント再建が困難となった患者14人に大伏在静脈ループ型転位内シャントを作成した.症例は男性7例,女性7例であり,平均64.1歳であった.全例で術後に透析での使用が可能であった.慢性期に鼠径部リンパ嚢腫の感染を1例に,穿刺部出血を1例に認めた.7例でシャント狭窄をきたし,各々1~16回のPTA(経皮経管的血管拡張術)を施行した.一次開存率は1年で32.7%,2年で0%,二次開存率は1年で70.1%,2年で46.8%であった.比較的太い血管を用いた吻合ができるため術後早期からシャントの使用が可能となるなどの利点もあり,人工血管使用による感染の危険などがある症例では施行しても良い術式と思われた.
総説
  • 菰田 拓之
    2013 年 24 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/02/27
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:うっ滞性潰瘍の長期成績向上には潰瘍のみならず周辺のうっ滞性皮膚病変の摘出再建も有効と思われるが,どこまで摘出すべきか確立されたものはない.今回皮膚病変への加療が静脈還流へどのように貢献するのか,自験例を過去の報告例を踏まえ検討した.皮膚病変内の細静脈での血栓形成,血栓後症候群はストリッピング術などの静脈処理施行後も皮膚軟部組織レベルの静脈還流障害を残存させる.またうっ滞性皮膚病変そのものが新たな病変拡大の一因となり得ると思われ,長期成績改善には積極的に摘出再建するべきと考える.
  • 山本 匠, 山本 奈奈, 成島 三長, 光嶋 勲
    2013 年 24 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/02/27
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:二次性リンパ浮腫では,がん治療などによりリンパ流が閉塞し,遠位のリンパ管が拡張・変性しリンパ液が間質に漏れ,浮腫・炎症・脂肪沈着をきたす.リンパ動態の変化は浮腫発症前から起こっており,リンパ浮腫の適切な病態評価にはリンパ動態を評価する必要がある.インドシアニングリーン(ICG)リンパ管造影は,被ばくすることなくリアルタイムに詳細にリンパ流を可視化する実用性の高いリンパ循環評価方法である.リンパ浮腫の進行に伴い,造影所見はLinear,Splash,Stardust,Diffuseと変化していく.異常所見であるSplash,Stardust,Diffuseの分布からDermal Backflow(DB)stageが診断でき,とくにDB stage Iはsubclinical lymphedemaとして早期診断に極めて重要な意味を持つ.ICGリンパ管造影による病態生理に基づいたリンパ浮腫評価がリンパ浮腫診療において重要な役割を果たしていくであろう.
症例報告
プラティカル・フレボロジー
  • 田島 廣之, 金城 忠志, 竹ノ下 尚子, 市川 太郎, 山本 英世, 菊池 有史, 佐藤 直樹, 村田 智, 中沢 賢, 小野澤 志郎, ...
    2013 年 24 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2013/02/25
    公開日: 2013/02/27
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:急性塊状肺血栓塞栓症に対するカテーテル治療は治療効果の高さと侵襲性の低さから,近年注目されるようになってきた.カテーテル的血栓溶解療法とカテーテル的血栓破砕・吸引術に分類するのが一般的で,後者はさらに,血栓吸引術(Aspiration thrombectomy),血栓破砕術(Fragmentation),流体力学的血栓除去術(Rheolytic thrombectomy)に分けられる.他の内科的治療法や外科的治療法との多施設前向きランダム試験は実施されていないが,本法の治療効果と安全性に関しては,少数のコホート研究ではあるが外科的血栓摘徐術に匹敵することが示唆されている.本稿では,適応,手技の実際,合併症などにつき概説するとともに,われわれが考案した血栓溶解・破砕・吸引を組み合わせたハイブリッド治療についても言及した.
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