静脈学
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24 巻, 3 号
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巻頭言
特集:静脈鬱滞性皮膚腫瘍に対する各種器材の使い分け(第32 回日本静脈学会総会 パネルディスカッション2)
原著
  • 草川 均, 庄村 心, 駒田 拓也, 片山 芳彦
    2013 年 24 巻 3 号 p. 261-268
    発行日: 2013/08/23
    公開日: 2013/08/23
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:下腿静脈うっ滞性潰瘍(C6)は難治性のものが多く,静脈圧上昇と軟部組織のそれぞれに対する専門的治療が必要で,本来は血管外科と皮膚科や形成外科による集学的治療が理想である.今回,当科では2008年1月から2012年7月までにC6 18例20肢に治療を行った.原疾患は,下肢静脈瘤16肢 (初回12肢,再発4肢),深部静脈閉塞2肢,動静脈瘻2肢であった.治療は,術前から全例に軟膏併用圧迫療法を,手術は,逆流表在静脈処理(18肢),潰瘍廓清(全肢),不全穿通枝切離(皮切2肢,内視鏡下筋膜下不全穿通枝切離術=SEPS 13肢),フォーム硬化療法(8肢),術後はVAC療法(6肢),皮膚移植(2肢)を行った.下肢静脈瘤の16肢は14肢で完全治癒,手術1カ月後の2例はほぼ治癒し,二次性4肢は改善傾向も未治癒である.C6に対する治療を行うに際し,血管外科医には,SEPSなどの治療の選択肢を多くもつこと,皮膚科医や形成外科医との綿密な協力関係を築くことが必要不可欠と考える.
  • 佐藤 智也, 市岡 滋
    2013 年 24 巻 3 号 p. 269-274
    発行日: 2013/08/23
    公開日: 2013/08/23
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:【はじめに】静脈うっ滞性潰瘍の難治例に対し局所陰圧閉鎖療法を施行した.【対象と方法】平成22年4月から平成23年11月の間に静脈うっ滞性潰瘍6例に対し局所陰圧閉鎖療法を施行した.潰瘍を外科的デブリドマンし,局所陰圧閉鎖療法を3週間施行し,潰瘍に良質な肉芽を誘導した.その後植皮術により閉鎖した.【結果】潰瘍は全例で治癒した.いずれも現時点で再発を認めていない.【考察】静脈うっ滞性潰瘍は慢性静脈不全に対する治療と圧迫療法で大部分の症例が治癒するが,一定の割合で難治例が存在する.局所陰圧閉鎖療法は創収縮の促進,過剰な滲出液の除去と浮腫の軽減, 創傷血流の増加,細菌量の軽減等の効果により,創傷治癒を促進する効果がある.静脈うっ滞性潰瘍の難治例に対する補助療法として有効である.【結語】局所陰圧閉鎖療法は静脈うっ滞性潰瘍の難治例に対する有効な治療の選択肢の一つである.
原著
  • 羽田 孝司, 中川 登, 谷口 怜子, 伊藤 孝明
    2013 年 24 巻 3 号 p. 275-279
    発行日: 2013/08/23
    公開日: 2013/08/23
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:Klippel-Trenaunay症候群(KTS)の臨床症状はさまざまであり,静脈の異常も多岐にわたる.好発部位の大腿での深部静脈の低形成や無形成について検討した報告はあるが,表在静脈の走行についての報告は比較的少ない.当科で経験したKTSの表在静脈の走行を確認し,静脈の走行について文献的考察を加えて報告する.
  • 田淵 篤, 正木 久男, 柚木 靖弘, 渡部 芳子, 久保 裕司, 久保 陽司, 滝内 宏樹, 西川 幸作, 三村 太亮, 種本 和雄
    2013 年 24 巻 3 号 p. 281-286
    発行日: 2013/08/23
    公開日: 2013/08/23
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:内視鏡下筋膜下不全穿通枝切離術(SEPS)の治療成績,術前後の静脈機能を検討した.2005年9月から2010年12月までに行ったSEPS 34例,40肢を対象とした.CEAP分類は,C4:17肢,C5:5肢,C6:18肢であった.手術は全身麻酔下にone port systemでSEPSを行い,85%にストリッピング手術も行った.空気容積脈波法(APG)で術前,術後1,6,12カ月のvenous filling index(VFI),venous volume(VV),residual volume fraction(RVF)を測定した.手術合併症は下腿感覚障害15%,創感染2.5%に生じた.潰瘍治癒率100%,潰瘍累積無再発率は平均観察期間22カ月で95.7%であった.APGを用いたSEPS術後の静脈機能を検討した報告例は筆者らが調べた範囲ではなく,われわれは術後12カ月まで静脈機能の改善が維持されていることを証明した.
  • 新美 清章, 平井 正文, 岩田 博英, 宮崎 慶子
    2013 年 24 巻 3 号 p. 287-294
    発行日: 2013/08/23
    公開日: 2013/08/23
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:【対象と方法】通院178例,入院29例を対象とし,治療前後の肢周径測定,エコーで皮下液体貯留を3型(なし,少量,敷石状)に分類し,肢周径から算出した浮腫率,改善率と併せて治療効果との関係について評価した.【結果】敷石状所見ほど浮腫率が強く(なし:7.5%,少:17.1%,敷石状:30.5%,p<0.01),治療効果も高かった(なし:2.5%,少:14.8%,敷石状:33.2%,p<0.05).重症例では液体貯留に差はなかったが,改善率は入院治療で高かった(通院:12.6%,入院38.6%,p<0.05).【結語】液体貯留が多いほど圧迫療法の治療効果が高かった.エコーでの治療前の液体貯留はリンパ浮腫に対する治療効果を予測し得た.
  • 中井 義廣, 角瀨 裕子, 山口 剛史, 岡本 浩
    2013 年 24 巻 3 号 p. 295-302
    発行日: 2013/08/23
    公開日: 2013/08/23
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:深部静脈血栓症(DVT)の早期発見を行うために,整形外科手術38例,外科手術29例,非手術35例に対して,可溶性フィブリンモノマー(SFMC)とDダイマーの測定を行った.両者とも高値のものでは,DVTの発症に十分注意を払い,必要と判断すればエコー検査を行うべきである.DVTと診断された場合,SFMC,Dダイマーとも上昇しているものは急性期静脈血栓症であり,SFMCが正常でDダイマーが正常あるいは軽度の上昇にとどまるものは慢性期静脈血栓症と考えられた.慢性期静脈血栓症の診断は全例エコー検査にて行った.
  • 林 忍, 渋谷 慎太郎, 江川 智久, 伊藤 康博, 三原 康紀, 長島 敦, 尾原 秀明, 北川 雄光
    2013 年 24 巻 3 号 p. 303-310
    発行日: 2013/08/23
    公開日: 2013/08/23
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:下肢静脈瘤は,自覚症状として下肢の倦怠感,しびれ,冷え,痛み,痒感等を伴うことも多く,これらの愁訴を軽減することは患者のQOL管理の観点から重要である.今回,(お)血(微小循環障害・うっ滞)改善の漢方薬である桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)の下肢静脈瘤に伴う不定愁訴に対する臨床的有用性を検討した.不定愁訴を伴う下肢静脈瘤患者30例に桂枝茯苓丸を12週間投与したところ,自覚症状,静脈瘤重症度,血スコアの改善および皮膚灌流圧の上昇を認め,その効果はとくに女性で顕著であった.また下肢静脈瘤に伴う自覚症状には血が関与していることが示され,下肢静脈瘤患者の不定愁訴に対する桂枝茯苓丸の有用性が示された.投与例において副作用,臨床検査値異常は認められず,全般改善度および有用度は73.3%であった.桂枝茯苓丸の内服は簡便であり,不定愁訴を有する下肢静脈瘤患者に対し有用であり,女性ではとくに効果的であることが示唆された.
  • 佐野 真規, 山本 尚人, 海野 直樹, 鈴木 実, 眞野 勇記, 斉藤 貴明, 杉澤 良太
    2013 年 24 巻 3 号 p. 311-316
    発行日: 2013/08/23
    公開日: 2013/08/23
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:【背景】肺血栓塞栓症予防のため下大静脈フィルター留置が行われているがフィルターによる合併症の報告も認められる.当院におけるGreenfieldとTrapEaseフィルター留置例において長期経過観察を行いフィルター破損や合併症の有無について検討した.【方法】1998年から2006年に永久型フィルターを挿入した症例(Greenfield群7例,TrapEase群20例)を対象とし腰椎単純写真とCT立体構築画像を用いてフィルター破損や合併症の有無について検討した.【結果】Greenfield群では破損を認めなかったがTrapEase群では10例の破損を認めた.しかし両群においてフィルターに関連した合併症は認められなかった.【考察】フィルター破損の原因は椎体や大動脈による圧迫であり2方向単純写真やCT立体構築画像による評価が有用であった.GreenfieldフィルターはTrapEaseフィルターに比べ周囲からの圧迫を受けにくい構造である可能性が示唆された.【結語】TrapEaseフィルターはGreenfieldフィルターに比べ高率に破損を認め,破損の評価には2方向単純写真が有用である.
総説
  • 宮崎 慶子, 近藤 かすみ
    2013 年 24 巻 3 号 p. 317-322
    発行日: 2013/08/23
    公開日: 2013/08/23
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:弾性包帯による圧迫療法はリンパ浮腫や静脈性潰瘍において基本的で効果的な治療法である.しかし,その方法や理論については経験的な観察に基づいて述べられることが多く,客観的な研究は少なかった.弾性包帯による圧迫療法についてこれまでに発表された論文にわれわれの臨床研究の結果を交えて弾性包帯による圧迫療法の最近の知見を紹介する.弾性包帯による圧迫療法においては,包帯を多層に使用すること,大腿においては自着包帯を使用することで圧迫圧の低下を軽減することができる.また,高度伸縮性包帯を層の中に組み込むことも圧迫圧を維持するために効果的であるが,圧迫圧が高くなりすぎないように気をつけなければならない.
症例報告
  • 廣岡 茂樹, 松田 雅彦, 鈴木 朱美, 外田 洋孝, 小林 夕里子, 折田 博之
    2013 年 24 巻 3 号 p. 323-326
    発行日: 2013/08/23
    公開日: 2013/08/23
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:鎖骨骨折は日常診療において比較的多く遭遇する骨折であるが,血管障害を合併することは稀である.今回われわれは鎖骨骨折に鎖骨下静脈の閉塞症状を伴った外傷性静脈型胸郭出口症候群の症例を経験した.症例は59歳の男性で,バイクで転倒して受傷した.他院で保存療法を受けたところ患側上肢の腫脹,握力低下およびしびれ感が出現し鎖骨下静脈の閉塞が疑われた.胸部CTで鎖骨遠位側骨片の圧迫による鎖骨下静脈の狭窄と同部の血栓閉塞を認めた.抗凝固療法により血栓は消失し,解剖学的整復位で内固定することにより,鎖骨下静脈の狭窄は解除され症状の消失を認めた.
  • 眞岸 克明, 和泉 裕一, 清水 紀之
    2013 年 24 巻 3 号 p. 327-331
    発行日: 2013/08/23
    公開日: 2013/08/23
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:症例は63歳男性で,左下肢腫脹を主訴に前医を受診した.エコー検査で左膝窩静脈閉塞の診断で当科へ紹介された.CT検査,静脈造影検査で嚢胞性病変による膝窩静脈圧排で静脈閉塞を認めた.発生部位から膝窩動脈外膜嚢腫の診断で手術を行った.腹臥位で膝窩を切開し,動静脈から嚢胞を剥離しようとしたが,周囲との癒着が高度で剥離できなかった.嚢胞を切開したところ,ゼリー状の内容物であり,性状からガングリオンと診断した.内容の吸引と嚢胞壁の可及的切除を行い,手術を終了した.嚢胞壁の病理学的診断でもガングリオンであった.術後,膝窩動静脈周囲には嚢胞が残存していたが,圧排所見はなく経過している.膝窩動静脈を圧排する嚢胞性疾患では膝窩動脈外膜嚢腫が知られているが,ガングリオンによって狭窄 / 閉塞を生じることもあり念頭に置くべきであると思われた.
  • 中島 伯
    2013 年 24 巻 3 号 p. 333-338
    発行日: 2013/08/23
    公開日: 2013/08/23
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:症例は22歳の女性で,左下腿のむくみと疼痛で受診.家族歴としてプロテインS(PS)欠乏と深部静脈血栓(DVT)があった.線溶マーカーの上昇があり,下肢静脈エコーと造影CTで左膝窩静脈から左浅大腿静脈の膝上約3 cmに至る血栓性閉塞を認め,血栓溶解療法と抗凝固療法を行った.本例は,母,兄,母方の祖母の3名がPS欠乏によるDVTを発病していた.本例は20歳時にPS欠乏が判明していたため予防的抗凝固療法を勧めたが,本人が拒否しDVT予防の生活指導を行うのみとしていた.先天性PS欠乏は遺伝によることが知られており,DVT患者でPS欠乏を認めた場合には,前もって血縁者のPS測定と生活指導を行うことに異論はないであろう.また,本例のように濃厚な家族歴がある場合には,周術期でなくとも予防的抗凝固療法を積極的に検討する必要がある.
  • 光岡 明人, 栗原 伸久, 広川 雅之, 桜沢 健一
    2013 年 24 巻 3 号 p. 339-343
    発行日: 2013/08/23
    公開日: 2013/08/23
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:症例は51歳男性.右下腿内側の色素沈着,かゆみを認め当院受診した.下肢静脈超音波検査にて右大伏在静脈不全を認め,血管内レーザー焼灼術(endvenous laser ablation; EVLA)を施行した.術後2日目の超音波検査にてclass 2のendovenous heat-induced thrombus (EHIT)を認めたが,術後10日目の超音波検査では血栓の進展を認めず,弾性ストッキングにて保存的に経過観察していた.しかし,自己判断により術後1週目より弾性ストッキングの着用を中止していたところ,下腿の疼痛および腫脹が出現した.術後44日目に超音波検査にて右大腿静脈に充満する血栓を認め,深部静脈血栓症(DVT)と診断された.胸部CTにて肺塞栓症(PE)の合併が認められ,直ちに抗凝固療法を開始した.その後症状は軽快し退院,外来にて抗凝固療法を継続している.本症例は下肢静脈瘤に対するEVLA後にDVT,PEを合併した本邦で初めての報告である.
その他(新しい機器の紹介)
  • 斎藤 聰, 八木 雄史, 岡﨑 嘉一, 神保 充孝, 上杉 尚正, 小林 俊郎, 高橋 剛, 郷良 秀典
    2013 年 24 巻 3 号 p. 345-349
    発行日: 2013/08/23
    公開日: 2013/08/23
    ジャーナル オープンアクセス
    ●要  約:ベインビュアビジョン®は近赤外線イメージング技術によって静脈をデジタル映像として皮膚に投影する機器で採血,静脈アクセス確保などにおいて穿刺を容易にし得る.視野を清潔なままハンドフリーでイメージングが可能で,皮下1 cmまでの静脈が描出でき動脈は映し出さない特徴がある.本機を下肢静脈瘤診療に用いた経験を紹介する.大伏在静脈など深部を走行しているものは描出困難であったが表在の静脈瘤は比較的良好に描出され,エコーで把握しにくい複雑な静脈のネットワークや血液の充填される方向などを視覚的に把握するのに有用であった.また硬化療法の穿刺部位の決定や硬化剤の広がりの評価にも有用であった.本機は無侵襲で清潔操作が可能であり今後の発展や工夫により種々の血管外科領域への応用が期待される.
プラクティカル・フレボロジー【下肢静脈瘤のレーザー治療の実際と方法】
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