静脈学
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25 巻, 4 号
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巻頭言
原著
  • 武藤 紹士, 近藤 ゆか, 平野 弘嗣, 新保 秀人, 下野 高嗣
    2014 年 25 巻 4 号 p. 373-380
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:【背景】本邦における血管内レーザー焼灼術(EVLA)の薬事承認を受け,当施設でも積極的にEVLA を導入してきた.そこで今回はEVLA 導入後約1 年の早期治療成績を後ろ向きに検討し,治療効果の妥当性や導入初期の問題点などを考察した.【対象と結果】2004 年4 月から2013 年5 月に施行したEVLA(71 肢)およびGSV 抜去術(104 肢)を対象とした.術後早期にはGSV 抜去群にSFJ 周囲の術後再出血(3.2%),EVLA 群にI~II度のE-HIT(5.6%)を認めた.術後再発例は認めなかったが,GSV 抜去群に創部感染や下腿神経障害を多く認めた.【考察】EVLA による治療効果は従来の外科手術と比較して十分に満足できる結果であった.しかし安全かつ安定した結果を得るためにも安易な適応基準で施行せず,術前の十分かつ適切な検討による術式決定が重要であると考える.
  • 鈴木 なつき, 藤澤 康聡, 小口 裕子, 齋藤 英子, 伊瀬 里江
    2014 年 25 巻 4 号 p. 381-385
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:下肢静脈瘤術後の弾性ストッキング着用は術後補助療法として広く行われているが,加齢や四肢の障害などによって強い圧迫力の弾性ストッキング着用を求めることができない場合がある.そこで今回われわれは2012 年1 月から12 月までに当院でストリッピング手術を行った291 例420 肢を対象として,弾性ストッキングの圧迫力の違いにより術後の静脈機能改善に差があるかについて空気容積脈波(APG)検査を用いて検証した.結果,弱圧群(15~20 mmHg)でも中圧群(20~30 mmHg)でも,術前後のvenous filling index(VFI)とvenous volume(VV)の改善幅に有意差はみられず,また術前VFI が6 ml/sec 以上の症例群を抽出しても有意差はみられなかった.今回の研究結果は,術後の圧迫療法継続においてより良いアドヒアランスを得るための参考になると考える.
  • 平林 朋子, 佐野 成一, 高島 格
    2014 年 25 巻 4 号 p. 386-390
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:【はじめに】今回われわれは伏在型静脈瘤で瘤切除を行わずに伏在静脈の血管内レーザー焼灼術のみを行った症例で瘤切除の必要性の有無を検討した.【対象と方法】2013 年1 月から4 月の間に一次性の伏在型静脈瘤患者98 名108 肢(男:女比42:56,平均年齢68 歳,大伏在静脈91 本,小伏在静脈17 本,大伏在静脈平均径6.5±1.5 mm,小伏在静脈平均径5.9±1.4 mm,平均最大側枝径 5.4±2.6 mm)において瘤切除は追加せず伏在静脈に血管内レーザー焼灼術を施行し結果を検討した.術前および術後2 カ月後に評価した.【結果】側枝の完全縮小群は11 肢の10.2%,部分縮小群は97 肢の89.8%,無変化群は0 肢だった.部分縮小群および無変化群で追加治療を行ったのは7 肢(6.5%)ですべての症例で整容的理由からであった.【結語】多くの症例が,術後2 カ月の時点で伏在静脈本幹に対する血管内レーザー焼灼術のみで側枝静脈瘤は縮小したが,完全に消失したのは一部であった.再発などを考慮すると,さらに長期的な観察が必要であると考えられた.
  • 大峰 高広, 岩佐 憲臣, 山岡 輝年
    2014 年 25 巻 4 号 p. 391-395
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:【背景】今回当院の980 nm 血管内レーザー焼灼術(endovenous laser ablation; EVLA)の導入初期成績および医療効率性を検討した.【方法】導入初期1 年間のEVLA 108肢を対象とし,導入前1 年間のHL/S 41 肢と初期成績・医療効率性を比較した.【結果】術前背景(男女比・年齢・CEAP 分類)は両群間に差を認めなかった.術後合併症は両群間で有意差を認めずEVLA の術後再疎通は認めなかった.平均在室時間・在院日数はEVLA群が有意に短く[(54 分 対 102 分;p<0.0001)および(2.1 日 対 3.9 日;p<0.01)],治療に関わった医療従事者数と従事時間の積person-minutes はEVLA 群が有意に少なかった(176.2 対 632.4;p<0.0001).【結論】EVLA 導入初期成績は良好であった.EVLA はHL/S の1/4のperson-minutes であり医療効率性が高かった.
  • 安藤 太三, 下村 毅, 田中 佐登司, 河村 朱美, 高田 基志
    2014 年 25 巻 4 号 p. 396-402
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:慢性血栓塞栓性肺高血圧症は肺動脈が器質化血栓によって閉塞して発症するが,肺高血圧を伴うようになると右心不全や呼吸不全が進行する予後不良な疾患である.本症に対する根治療法として肺動脈血栓内膜摘除術が施行される.愛知県一宮市の総合大雄会病院において,2013 年5 月からの6 カ月間に本症の9 例に手術を施行した.平均年齢は61.4 歳,性別は男性3/女性6 であった.肺動脈の閉塞形態は中枢型が6 例,末梢型が3 例であった.全症例で低酸素血症,高度の肺高血圧,低心拍出を有して,症状はNYHA III 度以上であった.手術は超低体温間歇的循環停止下に両側肺動脈の血栓内膜摘除術を行った.平均の体外循環時間は253 分,心停止時間は128 分,循環停止時間は43 分であった.手術成績は術後呼吸循環動態が著明に改善して良好であった.本症では術者の経験だけでなく慎重な手術適応症例の選択と,麻酔・術後管理・リハビリなど心臓血管外科チームによる周術期管理が重要であった.
原著(委員会報告)
  • 杉山 悟, 東 信良, 孟 真, 保田 知生, 市来 正隆, 佐久田 斉, 松原 忍, 八杉 巧, 山田 典一, 三井 信介, 八巻 隆, ...
    2014 年 25 巻 4 号 p. 403-409
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:全国的には今まで十分な調査が行われていていなかった弾性ストッキングの使用状況と合併症の実態について,本学会の弾性ストッキング・コンダクター養成委員会とサーベイ委員会により調査を行った.192 施設からの有効回答があり,重大な合併症として,神経障害6 施設,潰瘍形成20 施設,下腿切断1 施設(心不全合併),肺塞栓2 施設,合計で28 施設(15%)からの報告があった.弾性ストッキングの適切な使用のためには,正しい理解の広い啓蒙が必要である.患者に対し圧迫療法を適切に指導するために,日本静脈学会が資格として認定しているストッキング・コンダクターの有資格者を中心とした医療スタッフによる適切な指導と経過観察が重要である.
その他(手術の工夫)
その他(トピック)
  • 田代 秀夫
    2014 年 25 巻 4 号 p. 415-420
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    要約:弾性ストッキング着用にもかかわらず縮小,消退にいたらない下腿の残存静脈瘤に対して,硬化療法は大変よい適応であるが,手技自体に習熟を要するためか,未だに限られた専門家の手にゆだねられている.最近本邦に導入された近赤外線バスキュラーイメージング用機器VeinViewer Flex® は表在静脈を可視化できる非接触型の機器で,治療野を清潔に保ち,穿刺と薬液注入ができる.深達度は皮下10 mm まであり,静脈瘤の最大径が投影され,従来よりも穿刺精度が向上し,広い視野のもと,注入した硬化剤の到達範囲,流出方向をリアルタイムで観察できるので,皮膚表面からは直視できない複雑な走行を示す網目状,クモの巣状静脈瘤には有用である.このような見えにくい静脈を可視化して硬化療法を行う,いわゆる可視化硬化療法の最大のメリットは,適切な治療部位に適量の薬液を注入することが可能で,硬化療法の有効性,安全性を向上させることである.
プラクティカル・フレボロジー
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