要約:伏在静脈型下肢静脈瘤の手術後に弾性ストッキング着用を1 カ月間継続した690 例1015 肢を対象とし,手術前後での下腿周径の変化を検証した.手術1 カ月後に腓腹部周径が1 cm 未満減少した症例が37.6%,1 cm 以上2 cm 未満減少した症例が38.9%,2 cm 以上3 cm 未満減少した症例が17.5%,3 cm 以上減少した症例が5.9%であった.術前のvenous filling index(VFI)別にみると,VFI<4.0 ml/sec 群では術後に0.9±1.0 cm 減少,4.0 ml/sec≤VFI<8.0 ml/sec 群では1.3±1.1 cm 減少,VFI≥8.0 ml/sec 群では1.6±1.1 cm 減少し,術前VFI が高くなるにつれ術後の下腿周径は減少する傾向が示された.術後も中長期にわたって弾性ストッキング着用を継続する場合,その適正サイズが術前と異なっている可能性があり注意を要する.
要約:症例は44 歳男性.製材作業中に左下腹部に木材が刺さり,当院に救急搬送された.来院時,左下腹部に厚さ5 mm,幅30 mm,長さ220 mm の木材が突き出ている状態で,体内に刺入した長さは不明であった.全身状態は安定しており,迅速簡易超音波検査(FAST: focused assessment with sonography for trauma)は陰性,右下肢の腫脹は認めなかった.造影CT で木材による腹部,右大腿動静脈の損傷が疑われた.緊急開腹手術を行うと,木材は皮下,腹腔外を通り右鼠径部に達していた.鼠径靭帯下で大腿動静脈を露出,木材刺入部上下で大腿静脈をテーピングし木材を抜去すると木材は大腿静脈を貫通していた.大腿静脈を遮断し,静脈損傷部を直接縫合し修復した.木材全長は480 mm で,体内に木片が散在しており丁寧に除去し,十分に洗浄を行い,開放創としドレーンを留置した.術後経過は良好で,早期離床により静脈血栓症を合併することなく第15 病日独歩退院した.半年後の造影CT 検査で右大腿静脈の良好な開存を認めた.