静脈学
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27 巻, 3 号
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原著
  • 日本静脈学会静脈疾患サーベイ委員会, 佐戸川 弘之, 八巻 隆, 岩田 博英, 坂田 雅宏, 菅野 範英, 西部 俊哉, 孟 真, 山田 典 ...
    2016 年 27 巻 3 号 p. 249-257
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2016/06/03
    ジャーナル オープンアクセス
    日本における一次性下肢静脈瘤の疫学的および静脈瘤治療の現状を明らかにするために,日本静脈学会会員の施設を対象として郵送法にてアンケート調査を行った.内容は,平成25 年1 月から12月までの1 年間の下肢静脈瘤の治療患者の内容と実施した治療法,治療方針について調査した.登録された下肢静脈瘤患者は193 施設,36,078 人43,958 肢であり,平成21 年の調査に比べ,患者総数と治療施設数は増加し,患者の高齢化を認め,女性に比べ男性での皮膚症状を有するC4‒6 の重症例の頻度が有意に高かった(p<0.01).伏在型・側枝型の治療において,ストリッピング術,高位結紮術は減少し,血管内レーザー焼灼術(EVLA)が51%と最も多く施行されていた.治療方針としてもEVLA を第一選択とする施設が44%と最も多く,麻酔はTumescent local anesthesia が主体で1 日入院が最多となっていた.下肢静脈瘤治療において従来標準的手術であったストリッピング術に代わり,EVLA が主体となってきていた.
  • 草川 均, 小津 泰久, 井上 健太郎, 駒田 拓也, 片山 芳彦
    2016 年 27 巻 3 号 p. 259-265
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2016/06/03
    ジャーナル オープンアクセス
    下肢静脈瘤の再発には初回手術の手技,戦略で避けられるものもある.再発をできるだけなくすため,今回下腿部の穿通枝か伏在静脈本幹に逆流源を有する再発性下肢静脈瘤(recurrent varices after surgery: REVAS)に対する再手術症例の再発機序や背景を検討し,治療についても言及した.2008 年1 月~2015 年7 月の下肢静脈瘤手術1519 肢中,REVAS に対する再手術は108 肢(7.1%)で,うち下腿に原因のあるものは59 例66 肢であった,既往手術は大伏在静脈高位結紮+ ストリッピングが多かった.再発の原因静脈では不全穿通枝が断然多かったが,前回ストリッピングされた大伏在静脈の末梢側伏在静脈本幹もみられた.逆流静脈に対する処置を全例に施行,皮膚病変下の不全穿通枝26 肢には内視鏡下筋膜下不全穿通枝切離術(SEPS)を施行した.全例良好に経過した.初回手術時に診断された逆流をすべて処理することが再発回避に重要であるが,残す場合にはフォローアップが重要であり,適宜追加治療を行うべきと考えられた.
  • 鈴木 修
    2016 年 27 巻 3 号 p. 267-273
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2016/06/03
    ジャーナル オープンアクセス
    下肢静脈瘤の診療に際して非造影3DCT 静脈撮影を併用した場合の有用性について検討した.とくに術後再発の原因になりやすい①大伏在静脈大腿静脈接合部(saphenofemoral junction: SFJ)分枝,②血管新生,③重複大伏在静脈(duplicated great saphenous vein: D-GSV)の3 項目に関して症例を提示し報告する.対象はデュプレックス超音波検査に加えて非造影3DCT 静脈撮影を併用した59 症例(64 肢)とした.結果:① SFJ 分枝形態を3 タイプに分類した.SFJ 分枝再発の高リスク群としてタイプ2.高位分岐型(49.2%)とタイプ3.共通幹形成型(22.0%)が挙げられた.再発リスクの高い分枝は主に副伏在静脈(accessory saphenous vein: ASV)であった.②血管新生については,浅腹壁静脈(superficial epigastric vein: SEV),浅腸骨回旋静脈(superficial circumflex iliac vein: SCIV)および大伏在静脈(great saphenous vein: GSV)の切離断端から発生していることを確認した.③ D-GSV は,検討症例中30.5%に認めたが,D-GSV 術後に大腿部穿通枝が不全交通枝(incompetent perforating vein: IPV)となり術後再発源となった症例を提示する.症例を選択し非造影3DCT 静脈撮影を併用することは,術後再発防止や再発症例の治療戦略を立てるうえで有用と考えられた.
  • 山本 崇, 栗原 伸久, 広川 雅之
    2016 年 27 巻 3 号 p. 275-280
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2016/06/03
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】波長1470 nm レーザー(1470 群)および高周波(RFA 群)による血管内焼灼術の早期成績を比較検討した.【対象と方法】2014 年5 月より2015 年3 月までに治療を行った伏在型下肢静脈瘤2037肢を対象とした.各機器での対象症例の内訳,手術成績,合併症について比較した.【結果】対象の年齢は1470 群が有意に高かったが,性別・重症度には差がなく,治療静脈ではRFA 群で大伏在静脈(GSV)が有意に多かった.焼灼時間はRFA 群が有意に短かった.術後1~2 カ月の閉塞率は1470 群で99.8%,RFA群で100%であった.中枢型DVT は1470 群で0.1%に認めたのみで,末梢型DVT は1470 群で0.4%,RFA 群で0.3%に認めた.Class2 EHIT は1470 群で有意に多く,疼痛・皮下出血・神経障害は両群間に有意差を認めなかった.【結論】両機種とも少ない合併症で良好な治療成績であった.
  • 杉山 悟, 川崎 潤子, 松原 進
    2016 年 27 巻 3 号 p. 299-302
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル オープンアクセス

    看護スタッフ15 名を対象として弾性包帯の圧迫圧を測定し,適正圧を目安に繰り返し訓練した経験曲線を検証したので報告する.同一被検者の足にケープ社携帯型接触圧力測定器(パームQTM)をあて,初回は普段通りの感覚で巻き,その結果を踏まえて30 mmHg を目標として巻き直し5 回まで繰り返した.また,半年後に再測定を試みた.その結果,初回の平均値41.8±20.2 mmHg に比べ,2 回目からは26.7±9.0 mmHg,30.1±6.8 mmHg,31.4±6.8 mmHg,28.4±8.2 mmHg と目標値30 mmHg に近づいた.さらに,半年後の「抜き打ちテスト」でも,平均29.9±10.2 mmHg と良好な成績であった.一度,圧迫圧測定を経験すると,半年後でも圧の感覚をある程度覚えていることが示唆された.パームQTM は褥瘡用として使用されており本来の用途とは異なっているが,比較的安定した測定値が得られる.手に入りやすい身近な測定器で適正圧を目安に看護師が訓練をすることは,スタッフの育成指導および患者指導にも役立てることが期待できる.

  • 谷掛 雅人
    2016 年 27 巻 3 号 p. 303-310
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル オープンアクセス

    当院で使用した2 種類の回収型フィルター, Günther Tulip(GT),OptEase(OE)につき,長期合併症(穿通,破損)についてretrospective に検討した.【対象と方法】永久留置例の方針となった症例のうちCT が撮影された75 症例(GT 21,OE 54).撮影データより3D 画像を作成,脚の穿通,破損の有無を視覚的に評価した.【結果】脚の穿通はGT 15 例(71.4%),穿通部位は大動脈3,右総腸骨動脈2,十二指腸3,大腰筋1,椎間板1,脂肪織5 例であった.破損はOE 8 例(14.8%)に,縦骨格1 カ所の離断が認められた.留置からの時間経過とともに破損率が上昇する傾向が認められた.OE の穿通例,GT の破損例は認められず,また全例で有害事象は認められなかった.【結論】これらの回収型フィルターの合併症頻度は高率であり,永久留置としての使用は合併症の発生を念頭に,慎重に決定する必要がある.

  • 清水 剛
    2016 年 27 巻 3 号 p. 311-316
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル オープンアクセス

    下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術(EVLA)術後のendovenous heat-induced thrombosis(EHIT)に対して,第Xa 因子(FXa)阻害薬を投与しその有用性についてワーファリンと比較検討した.2013年4 月~2015 年1 月の1 年10 カ月間に当院で行ったEVLA(波長980 nm)症例193 例,203 肢を対象とした.術後1 日,術後1 週間に下肢静脈エコーによる観察を行った.EHIT class 2 以上の症例に薬物療法を行い,class 1 以下になるまで薬物療法を続けた.EHIT の治療は2014 年9 月まではワーファリンを中心とし(W 群:10 例),2014 年10 月以降はFXa 阻害薬(X 群:12 例)を投与した.薬物投与開始から,class 1以下になるまでの期間は,W 群で3~29 日(中央値7.5 日),X 群で3~13 日(中央値7 日)で有意差はなかったが,EHIT のための通院回数はW 群が中央値2.5 回,X 群が中央値1 回とX 群が有意に少なかった(p<0.01).W 群の1 例にワーファリン投与中にEHIT が増強して,ヘパリン持続点滴とウロキナーゼの投与を行ったが,X 群でEHIT が増強した症例はなかった.EHIT class 4 および肺塞栓症は認められなかった.FXa 阻害薬は,有効性,即効性,簡便性からEVLA 後のEHIT の治療の選択肢に成りうると考えられる.

  • 広川 雅之, 栗原 伸久, 山本 崇, 桜沢 健一
    2016 年 27 巻 3 号 p. 317-322
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル オープンアクセス

    四肢の静脈奇形患者に対してフォーム硬化療法を施行した28 例(平均年齢43 歳)の治療成績を検討した.硬化剤は0.5~3.0%ポリドカノールを硬化剤:空気=1:5 で混合し,最大10 ml 注入した.治療後は弾性ストッキングあるいはスリーブにて下肢で3 週間,上肢で1 週間圧迫した.対象疾患は静脈奇形19 例(上肢7 例,下肢12 例),Klippel-Trenaunay 症候群9 例であった.硬化療法は計92 回,平均3.3回施行し,硬化剤の濃度は0.5%が19 回,1%が39 回,3%が34 回で,フォーム硬化剤の平均投与量は8.6 ml (2~10 ml)であった.治療効果は,完全に硬化された症例(good)が10 例(36%),硬化されたが残存する症例(fair)が12 例(43%),硬化が不十分(poor)が6 例(21%)であった.大きな合併症はなく,血栓性静脈炎を1 例に認めた.ポリドカノールによるフォーム硬化療法は四肢の静脈奇形に対して安全で有効な治療であった.

  • 草川 均, 小津 泰久, 井上 健太郎, 駒田 拓也, 片山 芳彦
    2016 年 27 巻 3 号 p. 323-330
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル オープンアクセス

    下肢静脈瘤の再発には初回手術の手技,戦略で避けられるものもある.初回手術の治療計画を立てる際,避けられる再発をできるだけなくすため,今回大腿部の筋膜下か伏在静脈本幹に逆流源を有する再発性下肢静脈瘤(recurrent varices after surgery: REVAS)に対する再手術症例の再発機序や背景を検討した.2008 年1 月~2015 年7 月の下肢静脈瘤手術1519 肢中,REVAS に対する再手術は108 肢(7.1%)で,うち大腿に原因のあるものは56 例67 肢であった.既往手術は大伏在静脈ストリッピング,再発の原因静脈では大伏在静脈ストリッピング後の小伏在静脈,側枝静脈瘤処理後の大伏在静脈,大伏在静脈ストリッピング後の深部静脈接合部側枝が多かった.初回手術時に逆流をすべて処理することが再発予防に重要であるが,残った病変はフォローアップし,適宜追加治療を行うべきと考えられた.伏在静脈処理の際に高位結紮が必須な症例があることが示唆され,これを初回手術時に見極めることが今後の課題と考えられた.

  • 福塲 浩正, 大森 啓充, 山﨑 雅美, 丸山 博文, 宮地 隆史, 松本 昌泰
    2016 年 27 巻 3 号 p. 349-354
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis: ALS)患者では,全身の筋力低下が進行し,長期臥床を余儀なくされ,深部静脈血栓症(deep vein thrombosis: DVT)のリスクは高くなると考えられる.またALS 患者の死亡原因として,肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism: PTE),突然死が報告されている.われわれは,当院入院中の侵襲的人工呼吸管理下のALS 患者13 名(全例長期臥床状態)におけるDVT の頻度と部位,ならびにDVT 症例の患者背景に関して検討を行った.その結果,13 例中3 例(23.1%)にDVT を認めた.血栓形成部位は,左浅大腿静脈,左腓骨静脈および左ヒラメ静脈が1 例,両側総大腿静脈および左浅大腿静脈が1 例,右ヒラメ静脈が1 例であった.3 例とも無症候性で,人工呼吸器装着期間は21~64 カ月であった.ALS 患者におけるDVT の発生頻度は一般人口より高いことが推定されているが,長期臥床状態の人工呼吸管理下のALS 患者においても,DVT の有病率は高いことが示唆された.ALS 患者の診療においてDVT の検索は重要な課題であると考えられた.

  • 戸島 雅宏, 波房 諭補, 牧野 聡美
    2016 年 27 巻 3 号 p. 377-384
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    大伏在静脈逆流型下肢静脈瘤1338 肢を対象にH 群:高位結紮切除術単独181 肢,HL 群:H群手術+ 伏在静脈本幹液状硬化療法443 肢,HF 群:H 群手術+ 伏在静脈本幹フォーム硬化療法490 肢,ST 群:ストリッピング手術224 肢の長期成績を後方視的に比較検討した.膝上部伏在静脈直径8 mm 未満をH,HL,HF 群,8 mm 以上をST 群の適応とした.大腿部伏在静脈10 年閉塞率はH 群(25.5%),HL 群(20.1%),HF 群(67.4%),10 年再発率(CEAP C2 以上)はH 群(52.3%),HL 群(57.5%),HF 群(33.1%)であった.閉塞率,再発率ともにHF 群がH 群,HL 群より有意に良好であった.ST 群の10 年再発率(35.1%)はHF 群と同等であった.高位結紮術は本幹フォーム硬化療法併用で10 年伏在静脈閉塞率,再発率が改善し,直径8 mm 未満の伏在型下肢静脈瘤治療の選択肢になると考える.

  • 堀口 定昭, 小野 寿子, 白𡈽 裕之, 川上 利光, 矢吹 志保, 森田 直巳, 白杉 望
    2016 年 27 巻 3 号 p. 405-412
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル オープンアクセス

    われわれは,術前超音波検査により下腿無症候性深部静脈血栓症(deep vein thrombosis: DVT)合併と診断した下肢静脈瘤患者で以下の条件を満たす28 例30 肢に対して手術(抜去術または高位結紮術)を施行した.条件は:①伏在型静脈瘤,②無症候性DVT が,術前に経時的に悪化していないことが確認できた,③背景に凝固亢進状態(血栓性素因陽性,悪性疾患等)を認めない,④局所麻酔下に手術が可能(術後不動状態とならない),⑤患者が下肢静脈瘤手術を希望し,かつ,無症候性DVT という概念をしっかり理解できる,だった.下腿無症候性DVT の91%はヒラメ筋静脈血栓で,DVT と診断後,DVT 増悪がないことを確認し手術を施行した.術後のDVT 再評価において,25 例7 肢の血栓は変化なく,3 例3枝では血栓は退縮した.本検討における条件を満たす症例においては,下肢静脈瘤手術は安全に施行し得る可能性が示唆された.

  • 穴田 佐和子, 新井 恒紀, 佐藤 佳代子, 吉田 洋子
    2016 年 27 巻 3 号 p. 413-419
    発行日: 2016/11/11
    公開日: 2016/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    リンパ浮腫疾患における線維硬化した皮下組織の改善は難渋するケースが多く,圧迫療法における労力と時間的負担の軽減が課題の1つである.今回,重症リンパ浮腫の改善を目的に当施設が開発を行った簡易圧迫用品Wave Garment(WG)を数種の包帯と組み合わせ,通常の多層包帯法と比較し,圧迫圧および,圧迫療法にかかる負担度を調べた.結果,当施設リンパ浮腫療法士が圧迫を行った場合,いずれの方法においても通常の多層包帯と同様に十分な圧迫圧が得られた.所要時間においては,WGを使用することによって圧迫療法にかかる時間が23~65%軽減し,患者の労力と時間的負担が大きく改善した.WGの凹凸は平面スポンジに比べ,凸部で常に高圧となり,凹部と凸部の圧力差は30 mmHg以上となることから,上から加圧する力が低くても効果的に圧力を皮膚に伝え,硬く変化した皮下組織にアプローチしていることが示唆された.

  • 中井 義廣, 角瀬 裕子, 山口 剛史, 岡本 浩
    2016 年 27 巻 3 号 p. 421-426
    発行日: 2016/11/25
    公開日: 2016/11/25
    ジャーナル オープンアクセス

    下肢静脈瘤術後再発例のうち,血管新生によると思われる再発例14例18肢を対象とした.再発原因はデュープレックススキャンあるいは術中所見で診断を行った.逆流所見が認められるとともに,細かく蛇行した血管が交錯するものを血管新生による再発とした.8肢で術前に新生血管が確認でき,この8肢では術中にガイドワイヤーが大腿静脈大伏在静脈接合部(sapheno-femoral junction; SFJ)を通過しなかった.9肢では,術前に新生血管を十分確認できていなかったが,術中にガイドワイヤーがSFJを通過せず,血管新生による再発と考えられた.1肢は大腿中央部の再発例であった.いずれの症例も血管内レーザー焼灼術(endovenous laser ablation; EVLA)を問題なく施行することができた.術前,新生血管がきちんと確認できたものでは,術後新生血管を介する逆流所見は消失した.しかし,EVLA後も新生血管は大伏在静脈(great saphenous vein; GSV)を取り巻くように残存するため,今後どのような経過をとるか観察を行う必要があると思われた.

  • 内田 智夫
    2016 年 27 巻 3 号 p. 433-438
    発行日: 2016/12/28
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    下肢静脈瘤および下肢の動脈閉塞症はいずれも血管外科医が扱う頻度の高い疾患である.しかし,両者が同側下肢に合併していることはまれであり,同時手術例についての1例報告が少数みられるのみで,両疾患の合併例の病態について考察したり集計したものはほとんどみあたらない.筆者は過去約23年間に8例(男5例,女3例)の合併例を診療した経験があり,ここに報告する.下肢静脈瘤患者のうち下肢動脈閉塞症を合併する頻度は男0.5%,女0.1%,下肢動脈閉塞症のうち下肢静脈瘤を合併する頻度は男0.7%,女1.5%であった.8例のうち6例は閉塞性動脈硬化症であったが,2例は血栓性素因の関与が疑われた.両疾患を合併している場合,もし観血的治療を行うのであれば,静脈瘤の治療を安易に先行することは避けて動脈の血行再建を優先した方が望ましいと考えられる.頻度は少ないものの下肢静脈瘤と動脈閉塞症を合併していることがあり注意が必要である.

総説
  • 大須賀 慶悟, 東原 大樹, 中澤 哲郎
    2016 年 27 巻 3 号 p. 385-392
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    小児・若年者に主に発生する「いわゆる血管腫」は,生物学的特徴が異なる病態が混在しており,本質的な病態に応じた分類が重要である.1996 年に提唱されたISSVA 分類は,血管内皮細胞増殖性の有無に着目して血管性腫瘍と脈管奇形の2 群に大別したものである.近年,新たな病態やさまざまな亜型が明らかとなり,原因遺伝子の解明による分子生物学的視点にも立ってISSVA 分類は2014 年に改訂された.新ISSVA 分類では,血管性腫瘍は,良性・境界・悪性群の3 群に分類され,脈管奇形は単純型・混合型・主幹型・関連症候群に分類されている.このうち,静脈奇形(VM)は単純型に分類されており,通常の孤発性VM と,稀で遺伝性を示し得る家族性皮膚粘膜VM,青色ゴムまり様母斑症候群,グロムスVM,脳海綿状奇形などがある.日常最も遭遇するのは,孤発性VM である.静脈診療においても,ISSVA 分類を認識しておくことは脈管奇形の適切な診断および治療方針のために重要である.

症例報告
  • 新美 清章
    2016 年 27 巻 3 号 p. 291-297
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は41 歳,女性.左下肢腫脹を主訴に受診.エコー上,浅大腿静脈から下腿静脈に血栓を認め,深部静脈血栓症と診断.造影CT 上,巨大子宮筋腫認めるも,腸骨領域に血栓を認めなかった.ヘパリン,ウロキナーゼ投与開始後4 日目朝トイレ歩行時に意識消失し,転倒.血圧87/50 mmHg,SpO2 89%,造影CT にて両肺動脈主幹部に血栓を認め,広汎型肺塞栓症と診断.フォンダパリヌクス(FPX)7.5 mg/ 日に切り替え,ワーファリン併用開始した.FPX 9 日間投与後,INR 1.59 と延長し,CT 上肺動脈内血栓消褪傾向認め,14 日目に退院となった.しかし,5 日目のINR は至適治療域(1.6~2.6)に達せず,早期の血栓消褪をはかるため,エドキサバン経口内服に切り替えた.2 週間後のCT では肺動脈血栓消失を認めた.本症例のような肺塞栓リスクが高く,出血リスク少ない若年者の深部静脈血栓症では,新規抗凝固薬がシンプルで使いやすく,早期の治療効果も期待され,第一選択として使用することも検討すべきと思われた.

  • 仁科 洋人, 西村 克樹, 谷嶋 紀行
    2016 年 27 巻 3 号 p. 331-334
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は72 歳,女性.右下肢静脈瘤および右下腿部痛みを伴う腫瘤を主訴に来院された.既往として,7 年前に左下肢の血栓性静脈炎があった.右下肢静脈瘤,右下腿部血栓性静脈炎の診断で,受診翌日に右大伏在静脈血管内レーザー焼灼術を施行した.術翌日,術後8 日での超音波検査にて大伏在静脈・大腿静脈接合部はEHIT1 の状態であり,血栓性静脈炎の伸展はなかった.治療後に1 週間のみ非ステロイド性鎮痛薬を使用したが,血栓性静脈炎部および血管内位焼灼部の痛み自制内に改善していたため,弾性ストッキング着用および歩行励行とし経過観察していた.術後21 日目より右下腿部がむくみ始めたが,痛みは軽快していたため,弾性ストッキングを着用して経過をみていたとのことであった.術後29日目に来院されると右下肢は浮腫んでおり,超音波検査・造影CT 検査をすると,右下肢深部静脈血栓症,肺血栓塞栓症であったため,入院加療とした.採血検査で血栓性素因は認めなかった.血栓性静脈炎を伴った下肢静脈瘤診療において,併存しうる深部静脈血栓症や背景因子を調べることはもとより,慎重に経過をみながら治療方法を検討するべきであり,治療後も下肢や胸部の症状に注意しながら,通常より頻回に超音波検査を行うなど柔軟な対応が必要と思われる.

  • 達 和人, 上江洲 徹, 野村 敬史, 毛利 教生, 洲鎌 盛一, 真栄平 直也
    2016 年 27 巻 3 号 p. 343-347
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は62 歳女性.56 歳時に糖尿病性腎症から末期腎不全に至り血液透析を導入された.右手関節近くで橈骨動脈と橈側皮静脈が側々吻合された内シャントにより血液透析を施行されていた.数カ月前より,右手の腫脹や手背静脈拍動を認めるようになり,精査目的で前医より当院紹介受診となった.血管エコー検査では,吻合部近傍の橈側皮静脈の中枢側でシャント静脈は限局的に閉塞していた.そのため,側々吻合された橈側皮静脈の末梢側へ動脈血流が逆行性に灌流することで手背静脈網の怒張を来し,末梢静脈高血圧症により手が腫脹していると考えられた.動静脈吻合部に問題はなく,シャント閉塞部位は限局しており,閉塞部より中枢側の橈側皮静脈の性状は良好であった.手術は,吻合部近辺から手背にかけて,拡張した橈側皮静脈を剝離し授動化,末梢側を離断し反転させ,閉塞部位より中枢側の橈側皮静脈に端々吻合することで,シャントを再建することができた.

  • 西 智史, 野中 崇夫, 松本 春信, 安達 秀雄
    2016 年 27 巻 3 号 p. 361-364
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    静脈性血管瘤は中枢,内臓,四肢の静脈に認められるが,上肢の報告は少ない.われわれは上肢の静脈性血管瘤の1 例を経験したので報告する.症例は72 歳男性.10 年前より左上肢の限局した膨隆を認め,疼痛を主訴に当科紹介受診となった.左上腕に硬結,発赤,熱感,疼痛を伴う拡張した橈側皮静脈と超音波検査で紡錘状に拡張した橈側皮静脈内腔に血栓を認めた.血栓を伴った上肢静脈性血管瘤の診断で,ワーファリンによる抗凝固療法を開始した.炎症所見は改善し,3 カ月後には血栓はほぼ消失した.血栓症の再発を予防するため,局所麻酔下に静脈性血管瘤の切除を施行した.静脈性血管瘤が表在静脈系に発生した場合は,肺塞栓症の危険が少ないため経過観察とされることが多い.本症例のように表在性の静脈性血管瘤でも血栓形成をきたすことがあるため,症例に応じて外科的治療を検討すべきと考える.

  • 内田 智夫
    2016 年 27 巻 3 号 p. 365-369
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    膝窩静脈の静脈性血管瘤(以下簡便のため膝窩静脈瘤とする)はまれな疾患であるが,時に肺塞栓症の原因となりうるため外科的治療が一般に推奨されている.その報告のほとんどは,紡錘状または囊胞状の単独の形態である.筆者は最近,重複膝窩静脈の一部に膝窩静脈瘤を伴ったきわめてまれな症例を診療したので報告する.症例は左大伏在静脈瘤を主訴に受診した69 歳女性.超音波検査で膝窩静脈瘤が疑われ,造影CT 検査を施行したところ,大腿静脈末梢側から膝窩部にかけて全長約10 cm にわたり,血管径がほぼ同程度の重複した膝窩静脈を確認できた.さらに末梢側合流部が最大径2.2 cm の膝窩静脈瘤となっていた.詳細不明だが60 歳のころ肺塞栓症のため他医で治療を受けた既往があることが判明した.肺塞栓症の再発予防のため手術適応があると判断した.後方アプローチにより膝窩静脈瘤を切除し,合流部の重複膝窩静脈をそれぞれ縫合修復した.下肢静脈瘤の診療にあたって,深部静脈の状態の診断や詳細な病歴聴取が重要であることを再認識させられた.

  • 三宅 啓介, 阪越 信雄, 北林 克清
    2016 年 27 巻 3 号 p. 371-376
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    腎細胞癌の腫瘍栓下大静脈内進展は予後不良因子であり,予後改善のために積極的切除が行われているが,依然として周術期合併症率,死亡率は高く,適切な治療戦略が求められている.今回,当院での治験例を検討し,腫瘍栓下大静脈内進展に対する治療戦略を検討した.当院での腫瘍栓除去手術は,体外循環使用下,末梢側遮断下に,腎静脈流入部で下大静脈を切開し,腫瘍栓を牽引除去する方法を用いてきた.この手法は中枢側遮断のための肝臓脱転が不要であり,術中操作に伴う腫瘍塞栓の可能性を減らしうるが,下大静脈壁内浸潤が生じている場合には腫瘍残存の可能性があり,適応可否の判別が重要であると考えられた.また,分子標的薬を用いた術前補助療法は,腫瘍栓縮小に伴い,術式の低侵襲化を図れる可能性があり,今後検討が必要な治療法であると考えられる.

  • 池添 亨, 布川 雅雄, 細井 温, 窪田 博, 鈴木 裕, 植木 ひさよ, 杉山 政則
    2016 年 27 巻 3 号 p. 393-397
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル オープンアクセス

    腸間膜静脈血栓症は比較的まれな疾患であるが,腸管壊死に進展する可能性のある疾患である.今回われわれは,腸間膜静脈血栓症に対して腹腔鏡による観察を加え治療方針の手助けになった1 例を経験した.症例は23 歳の男性.腹痛を主訴に前医を受診しCT 検査にて門脈および上腸間膜静脈に血栓を認めたため当院に紹介受診となった.来院時に腹膜刺激症状は認めず同日当院で行ったCT 検査では,腹水の貯留や腸管の壁肥厚・拡張などの腸管虚血を示唆する所見は乏しいものの門脈,上腸間膜静脈,下腸間膜静脈に広範な血栓を認めた.腸管虚血の有無の評価として腹腔鏡検査を追加した.その結果,腸管虚血所見は軽微と判断しヘパリン投与と経静脈的血栓溶解療法を選択した.第24 病日に症状が改善したため退院となった.ワルファリンによる経口抗血栓療法を継続し,9 カ月後のCT 検査では血栓は著明に減少した.

  • 内田 智夫
    2016 年 27 巻 3 号 p. 399-403
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル オープンアクセス

    プロテインC 欠損症が誘因となって下肢深部静脈血栓症と門脈血栓症を異時性に発症したと考えられる症例を報告する.35 歳男性.1 年前に長時間の座位が誘因と考えられた左膝窩静脈血栓症を発症しフォンダパリヌクス皮下注射1 週間,ワルファリン内服6 カ月で治療終了した.その7 カ月後,上腹部不快感,発熱を主訴に当院を受診.造影CT 検査で門脈血栓症と診断.入院して絶食,輸液で経過観察し,ヘパリンとウロキナーゼ持続静注を1 週間行った.肝不全や消化管虚血には至らず,徐々に自覚症状も改善した.経口摂取開始しワルファリン内服に切り替え,現在外来で継続している.入院時治療前の検査でプロテインC 活性が54%,抗原量が41%に低下していた.初回の下肢深部静脈血栓症発症時にはアンチトロンビンⅢ以外の血栓性素因をチェックしていなかった.若年発症の血栓症の診療にあたってはプロテインC,プロテインS 等の血栓性素因に関する検査をすべきである.

  • 天野 幾司, 中川 雄介, 千森 義浩, 野崎 秀一, 藤村 博信, 新谷 隆, 渋谷 卓, 松尾 汎
    2016 年 27 巻 3 号 p. 427-431
    発行日: 2016/12/28
    公開日: 2016/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は68歳女性.左大腿内側打撲後の圧痛が持続するため,当院紹介受診となった.初診時の視診(立位状態)で左大腿内側に突出した腫瘤が認められたため,精査を行うことになった.下肢静脈エコーでは左大腿静脈から交通する類円形状の腫瘤エコー像を認め,静脈脈瘤(venous aneurysm)と診断した.1カ月後下肢静脈の再検査を行うと,静脈脈瘤のサイズには縮小が認められず,腫瘤内部に血栓が生じていたため肺塞栓予防のため手術適応と判断した.術後の下肢静脈エコーでは,左大腿静脈にあった静脈脈瘤は消失していた.

その他(手術の工夫)
  • 山内 秀人, 岩田 英理子
    2016 年 27 巻 3 号 p. 355-359
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    当クリニックでは全例Oesch PIN stripper を用いた内翻式抜去術を施行し良好な結果が得られている.その手技をビデオにて供覧し報告した.麻酔は大伏在静脈瘤に対してはエコーガイド下に1%キシロカイン10~20 ml による大腿神経ブロックおよび大伏在神経ブロック施行.さらにTLA を併用している.小伏在静脈瘤の場合局麻下にTLA 施行.1.8 mm 径のステンレス製のOesch のPIN stripper を静脈瘤の中枢側から挿入し大きな分枝のある部で尖刃刀で開けた2 mm 程の穴から出しPIN stripper に開いた穴へ0 号絹糸を通し結紮しPIN stripper と絹糸を両手で把持してゆっくりと内翻抜去していく.平成20 年以降に本術式で手術した下肢静脈瘤は1144 例で全例日帰り手術が可能であった.

プラクティカル・フレボロジー
  • 中村 真潮, 山田 典一, 伊藤 正明
    2016 年 27 巻 3 号 p. 335-342
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/22
    ジャーナル オープンアクセス

    静脈血栓塞栓症(VTE)の治療の第一選択は抗凝固療法であり,従来から日本では用量調節が必要な未分画ヘパリンとワルファリンが使用されてきた.いずれも調節に難渋するためVTE 再発が少なくなく,また出血性合併症も高率だった.近年,非経口Xa 阻害薬フォンダパリヌクス,ならびに非ビタミンK 阻害型経口抗凝固薬(NOAC)/ 直接経口抗凝固薬(DOAC)のエドキサバン,リバーロキサバン,アピキサバンが,日本でもVTE に対して使用できるようになった.従来治療よりも安定した効果を発揮し,その結果,有効性や安全性でより有用性が高いと考えられる.NOAC/DOAC はunprovoked VTE などでより長期間の再発予防を可能にする.また,発症初期からのNOAC/DOAC のみによる治療,ならびに入院期間の短縮や外来治療を可能とする.さらに,癌患者に対するより安全な抗凝固療法など多くの可能性があり,たいへん期待される治療薬である.一方で,脆弱性が高い患者に対する投与法や長期投薬期間など,今後エビデンスを構築しなければならない部分も少なくない.

地方会抄録
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