静脈学
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27 巻, 1 号
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原著
  • 猪狩 公宏, 工藤 敏文, 豊福 崇浩, 井上 芳徳, 木原 和徳
    2016 年 27 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】腎細胞癌では,静脈内へ腫瘍進展が認められる症例があり,同症例に対する当院での術式の工夫について,検討した.【対象と方法】過去22 年間で,静脈内腫瘍進展を伴う腎細胞癌に対し手術治療を施行した66 例のうち,Level I;腫瘍先進部が腎静脈合流部より2 cm 以内に進展する症例,Level II;腫瘍先進部が肝静脈流入部より尾側の下大静脈まで進展する症例,Level III;腫瘍先進部が肝静脈流入部よりも頭側の下大静脈に進展する症例,を対象とし,いずれも体外循環を用いずに治療した.【結果】腫瘍の先進部はLevel I;10 例,Level II;17 例,Level III;3 例.全例で腫瘍遺残なく手術治療を完遂し,周術期死亡は認めなかった.9 例で術後合併症を認めたが,いずれも保存的に軽快した.【結語】当院で行っている体外循環を使用せずに行う腫瘍摘除および下大静脈縫合閉鎖術により,満足のいく手術成績が得られた.
  • 武内 謙輔
    2016 年 27 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル オープンアクセス
    膝変形性関節症手術は深部静脈血栓症(以下DVT)発症のハイリスク群で,当院では手術前後にエコーを行いDVT の早期発見に努めた.293 例の手術例のうち101 例(34.5%)でDVT が発症し,とくに人工関節置換術では44.1%にみられたがほとんどの症例においてヒラメ筋静脈レベルで診断し(99例),早期に治療を開始することができた.血栓群では伏在静脈とヒラメ筋静脈の拡張,ターニケットの駆血時間の延長がみられた.またDVT は67.3%で消失し平均消失期間は34.4 日であった.
  • 山本 尚人, 海野 直樹, 犬塚 和徳, 佐野 真規, 斉藤 貴明, 杉澤 良太, 片橋 一人, 矢田 達朗, 嘉山 貴文
    2016 年 27 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル オープンアクセス
    【背景】院内発症の有症状静脈血栓塞栓症(VTE)症例を検討した.【対象と方法】2005 年から2014 年に経験した有症状の肺血栓塞栓症(PTE)と深部静脈血栓症(DVT)107 例を対象とし,外科系群と非外科系群とで検討した.【結果】外科系群:PTE 20 例,DVT 35 例.手術リスクは,最高リスク1 例,高リスク29 例,中リスク23 例,低リスク2 例.術後予防的抗凝固療法は,最高リスクの1/1 例,高リスクの1/29 例,中リスクの4/23 例で施行されていた.VTE 発症後は抗凝固療法が51/55 例で行われ,下大静脈フィルターは5 例で使用した.非外科系群:PTE 10 例,DVT 42 例.基本リスクは,強い9 例(8 例で複数の基本リスク,1 例で急性期リスク),中程度39 例(16 例で複数リスク,6 例で急性期リスク),弱い4 例(2 例で急性期リスク).理学的予防が行われていたのは10 例.【考察】外科系群では高リスク症例でVTEが発症していた.抗凝固可能となった時点から予防的抗凝固療法を考慮すべきである.非外科系群では,多くのリスクを持つ患者に対して予防および定期的なリスク評価が必要である.
症例報告
  • 呂 彩子, 景山 則正, 安藤 太三, 金子 完, 樋口 義郎
    2016 年 27 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル オープンアクセス
    72 歳の男性.約6 年前よりCTEPH で内科的治療していたがNYHA III 度となり手術目的で入院.PA(m)=75/28(48)mmHg,PVR=701 dyn/ 秒/cm-5.血栓性素因,DVT なし.PEA が施行され,右肺動脈では大量の血栓内膜摘除施行.術中気道出血多く,PCPS 装着して終了するも術後呼吸循環動態が改善せずに,術84 日後死亡した.病理解剖で確認された肺動脈の血栓分布は,臨床評価と同様右肺が中枢型,左肺が末梢型であった.中枢側動脈は,右肺では広範囲に内弾性板が摘除されており,内腔に反応性に二次性血栓が認められた.左肺では内膜が残存し,区域動脈および末梢側に器質化血栓によるband & web を多数認めた.末梢筋性動脈は,肺高血圧による高度の内膜肥厚や器質化血栓が多く存在する一方,静脈様変化が認められた.筋性動脈の静脈様変化は右肺の中枢高度閉塞部の末梢で認められ,再灌流時の気道出血の一因と考えられた.
  • 中島 正彌, 小林 昌義
    2016 年 27 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は71 歳女性.左足関節痛,両下肢違和感にて当院受診した.両大腿内側から下腿に伏在静脈瘤を認めた.下肢静脈超音波にて両側大腿- 大伏在静脈接合部に逆流を認めたため,全身麻酔にて両下肢に血管内レーザー焼灼術(endovenous laser ablation: EVLA),静脈瘤切除,硬化療法を施行した.術後1 日目病棟歩行時突然の呼吸困難,背部痛にてCT 室搬送となり,心停止により緊急挿管された.ポータブルUS にて右心系収縮不全あり,術後DVT,PTE を疑い緊急下大静脈フィルター留置し,ヘパリン,ウロキナーゼ投与するも全身動態に安定みられず同日夜永眠となった.本邦の文献を調べた限り下肢静脈瘤に対するEVLA 後に肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism: PTE)を併発した死亡症例の報告はないため,この誌を借りて報告する.
  • 内田 智夫
    2016 年 27 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル オープンアクセス
    Nutcracker 症候群は左腎静脈が上腸間膜動脈と腹部大動脈の間で圧迫されることにより,骨盤内鬱滞症状を生じるまれな疾患である.バルーン拡張術により症状改善がえられた症例を経験したので報告する.症例は52 歳女性.左下腹部の痛みを主訴に当院を受診.腹部CT 検査により著明な左卵巣静脈瘤を伴う骨盤内鬱滞症候群と診断した.Nutcracker distance は3 mm で上腸間膜動脈と腹部大動脈の角度は13 度であった.右大腿静脈アプローチによりバルーン拡張術を行った.MUSTANG 8 mm×40 mm を使用し,6 気圧で狭窄部を拡張したところ圧較差は治療前4 mmHg であったが拡張後ほぼ消失した.治療後約1 年経過したが,現在のところ自覚症状は改善している.左腎静脈転位手術や自家腎移植術は侵襲が少なくはない.ステント留置やコイル塞栓術による治療報告があるが,長期に異物を体内に留置することによる諸問題が懸念される.再狭窄の可能性はあるが,侵襲が少なく繰り返し治療が可能なバルーンカテーテルによる拡張術は妥当な治療法と考える.
プラクティカル・フレボロジー
  • 大峰 高広, 岩佐 憲臣, 山岡 輝年
    2016 年 27 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル オープンアクセス
    血管内レーザー焼灼術は伏在型静脈瘤のために最も受け入られる治療選択肢の一つである.皮膚炎を呈する伏在型静脈瘤の場合,不全穿通枝を伴うことも多いが,これに対する治療は確立されていない.確実性は高いものの局所麻酔では施行困難で比較的侵襲が高い内視鏡下不全穿通枝結紮術(sub-fascial endoscopic perforating vein surgery: SEPS)か,閉塞が比較的不確実なものの局所麻酔にて施行可能で低侵襲な硬化療法が汎用されている.経皮的不全穿通枝焼灼術(percutaneous ablation of perforators: PAPs)は伏在型静脈瘤に対するEVLA 施行の際に併施することが可能な新しい手技である.局所麻酔にて施行可能で確実性は高いが,いまだ本邦での報告は少ない.そこで筆者らが施行している超音波ガイド下経皮的不全穿通枝焼灼術について紹介する.
  • 孟 真, 根本 寛子, 益田 宗孝
    2016 年 27 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/25
    ジャーナル オープンアクセス
    圧迫療法は静脈,リンパ疾患の基礎的な治療である.弾性着衣が圧迫圧を発揮する機序は複雑で,PLACE:P(Pressure):圧,La(Layer):層,C(Component):構成要素,E(Elasticity):伸縮性と分けてそれぞれの要素を考えるとわかりやすく,診療の現場でも治療方針決定の手助けとなる.また圧迫療法の成功には患者のコンプライアンスの向上が必須であり,やはりPLACE の因子を考慮にいれながら患者の受け入れられる圧迫療法を行うことが大切である.
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