静脈学
Online ISSN : 2186-5523
Print ISSN : 0915-7395
ISSN-L : 0915-7395
28 巻 , 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
総説
  • 呂 彩子, 景山 則正, 向井 敏二
    2017 年 28 巻 3 号 p. 309-316
    発行日: 2017/09/08
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー

    下肢深部静脈血栓症の病態につき,解剖学的特徴の観点から概説する.大腿部静脈は下腿静脈より血栓が形成されにくいが,閉塞による臨床症状が出現しやすい.下腿静脈は静脈還流を伴走動脈の拍動に頼る下腿三静脈より,筋ポンプ作用と静脈弁に還流を依存する筋肉内静脈のほうが臥床状態で血栓ができやすい.静脈および筋肉の構造から腓腹筋静脈よりヒラメ筋静脈で血栓ができやすい.ヒラメ筋静脈血栓は還流経路に沿って中枢側に成長する.入院患者などの下肢の不動状態によって生じる肺血栓塞栓症による突然死の予防には,ヒラメ筋静脈血栓形成予防および還流経路における中枢側進展の観察が臨床的に重要である.下肢深部静脈血栓が生じた場合,塞栓化の防止とともに血栓の器質化による静脈弁機能障害に基づく静脈血栓後遺症を避けることが必要である.(AVD2017; 10(2): 99–106の日本語訳)

  • 齊藤 幸裕
    2017 年 28 巻 3 号 p. 343-348
    発行日: 2017/12/21
    公開日: 2017/12/21
    ジャーナル フリー

    リンパ浮腫は進行性難治性疾患で根治的な治療法が存在しない.死には至らないもののADLの制限や醜形により患者のQOLは著しく低下する.肝細胞増殖因子(HGF)は多くの組織で増殖活性を有し,抗線維化作用など効果も多岐にわたる.そこでHGFによるリンパ浮腫の遺伝子治療法の開発を試みた.細胞レベルでは,リンパ管内皮細胞(LEC)にHGF受容体が発現し,LECにヒトHGFタンパクを添加すると細胞増殖能と遊走能が増加することを確認した.ラットリンパ浮腫モデルで,HGF遺伝子を導入した群のみで有意に浮腫の改善を認め,HGF遺伝子治療によるリンパ管新生作用が確認できた.これらの結果から,原発性リンパ浮腫患者を対象とした第1/2a相治験を2013年10月より行っている.観察期間は2017年3月に終了し合計19例の患者が登録された.本研究成果がリンパ浮腫の根治的治療法となることを願っている.

原著
  • 宇藤 純一, 塚本 芳春, 信岡 博済
    2017 年 28 巻 3 号 p. 317-321
    発行日: 2017/09/08
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー

    無床診療所における下肢静脈瘤に対する術式の変遷と成績を検討した.対象は2010年5月以降の7年間に,日帰り手術を行った一次性下肢静脈瘤の5004例.基本術式は不全伏在静脈のストリッピング手術もしくは血管内焼灼術(EVTA)で,Stab avulsion法による瘤切除を付加した.術後合併症がストリッピング手術後の5.7%に,EVTA後の2.8%にみられた.肺塞栓症や中枢型DVT, Class3以上のEHITなどの重篤な合併症は認めなかった.EVTAの割合を年次別にみると,2012年までは0%,2013年は12%,2014年は55%,2015年は82%,2016年は95%,2017年は97%と推移した.術後遠隔期にストリッピング手術後の6例(0.2%)に再発を認め処置を要したが,EVTAの術後に再手術を必要とした症例はなかった.ストリッピング手術でもEVTAでも,早期および中期遠隔成績は安定しており,今後さらに低侵襲な日帰り治療へと向かうことが予想される.

  • 山本 賢二, 山田 知行, 羽室 護, 瀬戸崎 修司, 榎本 栄
    2017 年 28 巻 3 号 p. 323-328
    発行日: 2017/10/06
    公開日: 2017/10/06
    ジャーナル フリー

    【目的】血管内焼灼術に伴う合併症である神経損傷・深部静脈血栓症(DVT)を防ぐには適切な治療戦略が必要である.全例局所麻酔下の手術で,術直後からの積極的な歩行が効果的かどうか検証した.【対象】2014年12月から2016年12月まで血管内高周波焼灼術を行った439例を対象.年齢65.0±11.3歳,男性146例,女性293例.【方法】手術は1泊2日入院で,片足ずつ局所麻酔下で施行.神経損傷を避けるために,下腿末梢1/3のGSV本幹をマーキング.瘤切除はstab avulsion法を使用.DVT予防にはガイドラインを順守.術後は病棟内200 m歩行を4~5回/hr促した.術中の疼痛はOkamura pain scale(以下OPS: 0–5)を用いて客観的に評価.術後にnumerical rating scale(NRS:0–10)を問診.【結果】TLA: 615.9±153.4 mL, stab avulsion: 12.3±8.3カ所.手術時間:39.2±15.2分.術直後より全例歩行可能.直近164例のOPS scoreは1.8±1.3, NRS scoreは3.2±2.0.DVT, 肺塞栓症の発生なし.【結論】神経損傷とDVTを予防するには,局所麻酔下に手術を施行し,術直後からの十分な歩行が重要であった.

  • 内田 智夫
    2017 年 28 巻 3 号 p. 337-342
    発行日: 2017/11/27
    公開日: 2017/11/27
    ジャーナル フリー

    下肢静脈瘤に対する硬化療法は2000年ころを境に硬化剤をそのまま使用する液状硬化療法から効果の高いフォーム硬化療法に切り替わってきた.本邦でもフォーム硬化療法に関する報告が散見されるようになったが,その多くは主に伏在静脈瘤に対する治療報告であり,標準的な手術が向かない定型的な分類が困難な複雑な形態をした下肢静脈瘤に対するフォーム硬化療法単独によるまとまった治療報告は検索しうる限りみあたらない.筆者は16例21肢(男性4例4肢,女性12例17肢)の非伏在型下肢静脈瘤に対するフォーム硬化療法単独の治療を行った.色素沈着や内腔の血栓による硬結が出現する場合もあったが,多くは徐々に改善し,概ね良好な治療効果が得られた.複雑な形態をした非伏在型静脈瘤に対して手術的に切除する方法に比べフォーム硬化療法は簡便であり第一選択となりうると考えられる.

症例報告
  • 高木 正剛, 高木 克典, 江口 智早, 橋口 麻夕子
    2017 年 28 巻 3 号 p. 289-291
    発行日: 2017/06/08
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー

    82歳男性の右手第3・4指間に生じた静脈瘤に静脈結石phlebolithを随伴した症例を経験した.静脈瘤は弁不全によるものではなく静脈脈瘤venous aneurysm様であった.静脈結石phlebolithの報告の多くは海綿状血管腫に随伴するもので通常の静脈瘤に随伴するものとしては今回われわれが検索した限りにおいて眼窩に生じた静脈瘤に随伴した静脈結石phlebolithが脳外科医により報告されているのみで,四肢静脈瘤に生じたものは見いだし得なかった.

  • 白杉 望, 堀口 定昭, 川上 利光, 白土 裕之, 小野 寿子, 森田 直巳, 関 順彦, 川島 悠, 滝川 一, 新見 正則, 塚本 充 ...
    2017 年 28 巻 3 号 p. 293-299
    発行日: 2017/06/08
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー

    症例:73歳女性.主訴「右足首が硬く腫れて痛い」.主訴自覚1カ月後に当院初診.既往歴:50歳代に左乳癌手術加療,術後15年フォローされ診療終了.初診時身体所見:両下肢静脈瘤や表在静脈怒張なし.深部静脈血栓症を疑わせる腫脹もなし.右外踝に表在性血栓性静脈炎あり.血中D-dimer: 9.9 µg/mLと異常高値.Duplex scanにて右ヒラメ筋中央・外側静脈に血栓,胸部CT検査にて両肺動脈血栓を認めた.表在性血栓性静脈炎,下腿限局型深部静脈血栓症,無症候性肺動脈血栓塞栓症の診断,エドキサバンにより内服加療した.採血検査にて血栓性素因なく誘因不明の血栓症と診断,全身検索したところ,肝弯曲部大腸癌が発見された.本症例は,下肢静脈瘤等,静脈うっ滞の乏しい患者における下肢静脈血栓症では,悪性腫瘍等向血栓性疾患の併存有無を精査するべきことを示唆している.文献的考察を踏まえて報告する.

  • 斉藤 貴明, 犬塚 和徳, 海野 直樹, 山本 尚人, 佐野 真規, 杉澤 良太
    2017 年 28 巻 3 号 p. 301-304
    発行日: 2017/08/02
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル フリー

    膝窩静脈性血管瘤(popliteal venous aneurysm; PVA)は限局的拡張病変で稀な疾患である.無症状のことが多いが,肺塞栓症の原因となることがあり,外科治療の適応となる.症例は62歳女性.呼吸困難を主訴に当院救急外来を受診し,造影CT検査で両側肺動脈塞栓症および内腔に血栓を有し多発する右PVAを認めた.当院入院後,血栓溶解療法と抗凝固療法により,呼吸症状は改善したが,肺塞栓症の原因となったPVAに対して手術を行うこととした.腹臥位での後方アプローチで,PVAの中枢側は縫縮術,末梢側は瘤切除と端々吻合術を施行した.術後の造影CT検査で肺塞栓は消失し,再建した膝窩静脈に狭窄や血栓を認めず,第9病日に退院となった.

  • 新谷 隆, 藤村 博信
    2017 年 28 巻 3 号 p. 305-308
    発行日: 2017/08/18
    公開日: 2017/08/18
    ジャーナル フリー

    慢性静脈不全にて生じる難治性鬱滞性潰瘍の要因の一つとして長時間立位が考えられ,日常生活に改善を要する場合がある.長時間立位の原因として精神発達遅延があり,介入にて良好な経過を得られた症例を経験した.症例は53歳,女性.外傷後を契機とした両下腿潰瘍を発症し近医にて創処置を施行されていたが難治であり両下肢静脈瘤による静脈鬱滞が原因と考えられ手術目的に当院へ紹介となった.患者背景としてPrader-Willi症候群による精神発達遅延のため共同作業所にて長時間の立ち仕事および座り仕事を余儀なくされていた.下肢静脈瘤に対しラジオ波焼灼術を施行し,下肢挙上と弾性包帯による圧迫療法を継続,術1カ月後に両下腿潰瘍の治癒を得た.精神発達遅延をきたしている患者は作業所などで長時間の立ち仕事を余儀なくされるなど社会的背景は良好とは言い難い.日常的な静脈鬱滞状態の改善や外科的治療など積極的な治療介入やその周知,啓蒙の必要性があると考える.

プラクティカル・フレボロジー
  • 山本 崇
    2017 年 28 巻 3 号 p. 329-335
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/10/31
    ジャーナル フリー

    下肢静脈瘤の手術の中で分枝静脈瘤へのstab avulsionは,単に整容的な満足度を高めるためのものではなく,症状の改善に貢献し,追加治療の必要性および再発率の軽減に繋がる術式である.その手順を詳説する.まず対象となる血管の周囲に,0.1%リドカイン溶液を中心とした溶液を大量に浸潤させて局所麻酔を行い,18G注射針もしくはメスを用いて2 mm程度の穿刺孔を設ける.穿刺孔よりフックを挿入し,皮膚に置いた対側の手指との間で挟むようにして対象となる血管を同定し,鉤に引っ掛けて穿刺孔より引き出す.引き出された血管を鉗子で把持し,血管の走行や枝分かれを確認した後,血管周囲の組織を動かすことにより血管を剝離し,摘出する.合併症は出血・神経障害・感染などで,注意して行う限りはいずれも軽度なものである.

feedback
Top