悪性腫瘍に静脈血栓症が合併することはしばしば見受けられる.今回,当科で経験した深部静脈血栓症(DVT)を合併した悪性腫瘍症例を検討した.
対象は,当科を2012年1月から2016年末までに初回受診したDVT症例243例中,悪性腫瘍を併発していた59例(24.4%).男女比は26: 33, 平均年齢69.9±5.6歳.悪性腫瘍としては胃癌が15例(25.4%)で最も多かった.DVTの発症部位は中枢型15例(25.4%),末梢型43例(72.9%),上肢1例(1.7%)で,肺塞栓症合併例は3例(5.1%)であった.死亡例19例(32%)はすべて原疾患死であった.Dダイマー,FDP, 病変部位,悪性腫瘍の病期に関して死亡群19例と生存群40例で比較すると,死亡群で有意にDダイマー,FDPが高値(P<0.01)で,病変部位に関しては,死亡群で有意に中枢型が多かった(P<0.001).病期は死亡群で有意に進行度が高かった(P<0.001).
悪性腫瘍に合併したDVT症例では,悪性腫瘍の進行度,Dダイマー,FDP, DVTの病変部位が予後因子として重要であると思われた.
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