慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の発症機序は不明で,深部静脈血栓症(DVT)の既往は約半数にしか認められない.われわれは,肺動脈血栓内膜摘除術(PEA)を施行した22例を対象に,病歴,臨床所見,術前下肢静脈画像所見と,Jamieson分類について解析した.急性肺血栓塞栓症の既往は3例,DVTの既往は11例にあった.PEA術前検査では13例(59.1%)にDVTを認めた.DVTの既往がない11名中5例にもDVTを認めており,22例中,計16例(72.7%)には,既往歴あるいは術前検査でDVTが存在していた.また,DVT合併例16例のうち12例が,Jamieson分類1型であり,有意に多く見られた(p=0.0327).PEA手術患者において,既往歴だけでなく,術前検査でのDVT陽性例も含めると,高い頻度でDVTが合併していた.また,DVT合併と中枢型CTEPH発症の関連が示唆された.