静脈学
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原著
  • 島袋 伸洋, 孟 真, 橋山 直樹, 松原 忍, 根本 寛子, 小林 由幸, 益田 宗孝
    2018 年 29 巻 3 号 p. 309-314
    発行日: 2018/07/11
    公開日: 2018/07/11
    ジャーナル フリー

    深部静脈血栓症(DVT: deep vein thrombosis)の中で,無症候性末梢型DVTの臨床経過は明らかではない.初発の無症候性末梢型DVT患者に対し,抗凝固療法を施行せず3カ月後,1年後の臨床経過を検討した.【対象と方法】2014年5月から2016年9月に当院で初発性DVTが疑われ,超音波検査で無症候性末梢型DVTと診断された127人159肢を対象とした.抗凝固療法を施行しないで,3カ月後,1年後の静脈血栓症塞栓症の再発,超音波検査上の血栓伸展の有無を確認した.【結果】3カ月および1年間に観察できた患者はそれぞれ125人,109人であった.観察期間中,すべての患者に症候性静脈血栓塞栓症の発症はなかった.超音波検査では43人(56肢)を観察し2人(2肢)を除き,中枢静脈への血栓伸展を認めなかった.【結語】抗凝固療法を施行していない無症候性末梢型血栓症は予後良好であった.

  • 橋本 紘吉, 戸崎 綾子, 松田 奈菜絵
    2018 年 29 巻 3 号 p. 315-321
    発行日: 2018/07/11
    公開日: 2018/07/11
    ジャーナル フリー

    集中排液期で弾性ストッキングを用いた報告は少ない.われわれは浮腫減少と左右肢周径差(浮腫率)の改善について弾性ストッキングの有用性を共同研究による先行論文で示した.本報告は共同研究の着圧データ(圧勾配,重ね履きなど)から有用性を考察することにある.対象は続発性下肢リンパ浮腫20人.1週毎計4回の各回マッサージ後の周径とリンパ機能から弾性ストッキングを選定・装着し着圧を測定した.治療前と1週後の下肢の体積は6402 mLから6025 mLに減少し(P<0.001),浮腫率はリンパ管機能障害が小さいほど改善がみられた.正規化した着圧分布は再現性がみられた.重ね履きの効果は1.2~1.7倍であった.因子を重症度とし着圧を予測する数理モデルは予測実測値に高い相関があり(R=0.9881)最適な着圧の弾性ストッキング選定の標準化ができることを示唆した.弾性ストッキングの有用性は部位と治療回数によらない安定した着圧であった.

  • 三岡 裕貴, 石橋 宏之, 杉本 郁夫, 山田 哲也, 折本 有貴, 丸山 優貴, 今枝 佑輔, 細川 慶二郎, 内藤 宗和, 中野 隆
    2018 年 29 巻 3 号 p. 323-327
    発行日: 2018/07/11
    公開日: 2018/07/11
    ジャーナル フリー

    左腕頭静脈(left brachiocephalic vein: LBV)は中心静脈狭窄好発部位の1つで,胸骨と大動脈弓の圧迫が狭窄の原因の1つと考えられている.LBVはiliac vein compression症候群で知られる左総腸骨静脈と類似した周囲構造物を有しているが解剖学的検討は少ない.そこで,まず胸部造影CTを施行した30例(平均年齢63.9歳)で検討を行った.しかし年代別の症例数でばらつきが多いため,さらに31例を対象として腕頭動脈と前方の骨の距離を測定し,年齢による変化を検討した.LBVは腕頭動脈や左総頸動脈と接することが多く,LBVと腕頭動脈の距離,LBV短径および断面積は,65歳未満と比べ65歳以上で有意に小さかった(p<0.05~0.01).さらに腕頭動脈と前方の骨の距離と年齢とは有意に負の相関を認めた(p<0.03).LBVを挟む前方の胸骨と後方の動脈の距離は,加齢性に短縮し狭窄部位になる可能性が示唆された.LBVは透析患者の狭窄部位の1つでシャント効率の低下を認め,その原因の1つに加齢性変化が関与する可能性が示唆された.

  • 佐藤 俊充, 小林 昌義, 高木 靖
    2018 年 29 巻 3 号 p. 335-339
    発行日: 2018/07/18
    公開日: 2018/07/18
    ジャーナル フリー

    悪性腫瘍に静脈血栓症が合併することはしばしば見受けられる.今回,当科で経験した深部静脈血栓症(DVT)を合併した悪性腫瘍症例を検討した.

    対象は,当科を2012年1月から2016年末までに初回受診したDVT症例243例中,悪性腫瘍を併発していた59例(24.4%).男女比は26: 33, 平均年齢69.9±5.6歳.悪性腫瘍としては胃癌が15例(25.4%)で最も多かった.DVTの発症部位は中枢型15例(25.4%),末梢型43例(72.9%),上肢1例(1.7%)で,肺塞栓症合併例は3例(5.1%)であった.死亡例19例(32%)はすべて原疾患死であった.Dダイマー,FDP, 病変部位,悪性腫瘍の病期に関して死亡群19例と生存群40例で比較すると,死亡群で有意にDダイマー,FDPが高値(P<0.01)で,病変部位に関しては,死亡群で有意に中枢型が多かった(P<0.001).病期は死亡群で有意に進行度が高かった(P<0.001).

    悪性腫瘍に合併したDVT症例では,悪性腫瘍の進行度,Dダイマー,FDP, DVTの病変部位が予後因子として重要であると思われた.

  • 金本 亮, 廣松 伸一, 桜井 日直子, 今井 伸一, 吉田 尚平, 奈田 慎一, 大塚 裕之, 田中 啓之
    2018 年 29 巻 3 号 p. 349-355
    発行日: 2018/08/01
    公開日: 2018/08/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】静脈血栓塞栓症(VTE)の治療として,エドキサバンとリバーロキサバンの当院における使用経験を報告する.【対象と方法】2014年11月~2016年9月までにVTEに対しエドキサバンとリバーロキサバンで治療した患者を後向きに検討した.【結果】患者背景において,エドキサバン群は外傷や術後安静等の一過性リスクに多く使用され,リバーロキサバン群は悪性腫瘍群に多く使用されていた.有効性の評価として,血栓塞栓症イベントはエドキサバン群(5.6%) vs. リバーロキサバン群(0%)であったが,統計学的に有意差はなかった(P=0.362).安全性の評価としての出血性合併症は,エドキサバン群(14.1%) vs. リバーロキサバン群(9.5%)で,両群に有意差(P=0.719)はなかった.経過観察中(平均観察期間148日)の死亡はエドキサバン群(8.0%) vs. リバーロキサバン群(4.6%)と有意差(P=0.271)はなく,死因は全て癌死であり,VTE関連の死亡は両群ともなかった.【結語】患者背景の相違はあるが,本検討でエドキサバンとリバーロキサバンのVTE治療成績は,安全性,有効性ともほぼ同等であった.

  • 伊從 敬二, 三森 義崇, 橋本 良一, 出口 順啓
    2018 年 29 巻 3 号 p. 357-361
    発行日: 2018/08/01
    公開日: 2018/08/01
    ジャーナル フリー

    大伏在静脈(GSV)に対する血管内焼灼術(EVLA)後の大伏在–大腿静脈接合部(SFJ)の開存分枝は静脈瘤再発の原因になり得る.より高位からのEVLAで開存分枝を減らすことが可能か波長1470 nmレーザーとradial 2ring fiberで検討した.対象は2016年7月~2017年6月のGSV瘤78例101肢で,焼灼開始部はSFJの末梢6.6±1.3 mmとした.術後,3~5日(1期),8~11日(2期),1カ月(3期)に超音波で観察した.EHITはclass 1: 15.8%,2: 13.9%,3: 2.0%であった.開存分枝は0~3本で,0本は1期54.5%,2期50.5%,3期42.6%であった.3期のGSV断端長は全肢で7.1±5.8 mm, また,開存分枝0本の群で2.4±4.0 mm,1~3本の群で10.7±4.2 mmで,0本の群で短かった(p<0.001).高位からのEVLAで4割は開存分枝のない短い断端となりSFJでの再発の減少が期待される.

  • 内田 智夫
    2018 年 29 巻 3 号 p. 399-403
    発行日: 2018/11/01
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー

    Baker cyst(ベーカー囊腫)は主に整形外科で診療する疾患だが,血管外科医が下肢血管疾患の診療中に偶然発見することもあり適切な対応が必要である.そこで当科で2009年から2017年までに診療したベーカー囊腫について報告する.深部静脈血栓症が疑われた患者310例中6例(1.9%),下肢静脈瘤患者2,135例中13例(0.6%)にベーカー囊腫が発見された.深部静脈血栓症の疑い6例のうち4例はベーカー囊腫破裂と診断し1例は残存した囊腫に対して穿刺吸引を行った.他の2例は破裂を伴わないベーカー囊腫で穿刺吸引を行った.下肢静脈瘤患者のうち8例は大伏在静脈瘤で,いずれも同側にベーカー囊腫を認めた.そのうち1例に血管内焼灼術と穿刺吸引,1例に抜去術と穿刺吸引,1例に穿刺吸引が行われた.下肢静脈瘤患者のうち残りの5例は非伏在静脈瘤で,このうち2例に穿刺吸引を行った.いずれも症状は改善し感染などの合併症は生じなかった.吸引のみでは再発がありうることを説明したうえで症例によっては,血管外科医もベーカー囊腫に対して穿刺吸引処置を行うことは許容される行為だと考える.

症例報告
  • 松田 奈菜絵, 戸崎 綾子, 橋本 紘吉
    2018 年 29 巻 3 号 p. 329-334
    発行日: 2018/07/11
    公開日: 2018/07/11
    ジャーナル フリー

    リンパ浮腫の集中排液治療は弾性包帯を使用した報告が多く,平編み弾性ストッキング(ES)を使用した報告はない.当院ではリンパ機能に基づいて平編みESを使用し,3~4回の通院による集中排液治療を行っている.平編みESは伸び硬度が高く着圧が安定している.着脱が難しいため,着脱方法の指導が非常に重要であるが,適切な着用が可能であれば治療効果は大きい.

  • 内田 智夫
    2018 年 29 巻 3 号 p. 341-344
    発行日: 2018/07/18
    公開日: 2018/07/18
    ジャーナル フリー

    骨盤内静脈瘤はまれであるが,とくに女性の卵巣静脈瘤は時に下腹部鈍痛の原因となることがあり,骨盤内鬱滞症候群とも呼ばれ報告が散見される.これに相当する男性の精索静脈瘤に関する治療報告も多数あるが,骨盤内静脈瘤が男性に発見されることはきわめてまれである.今回,大腸癌の術前検査で偶然発見された男性の骨盤内静脈瘤の1例を治療したので報告する.症例は70歳男性.下血の精査でS状結腸癌と診断された.術前CT検査で直腸近傍の仙骨前面に沿って蛇行した静脈瘤を認めた.静脈瘤は両側内腸骨静脈および下腸間膜静脈と交通して拡張していた.腹腔鏡下S状結腸切除術,器械吻合が行われた.下腸間膜静脈は門脈合流部近傍で切離し,腸管切除に際しては拡張した静脈の処理に特段の問題は生じなかった.術後6カ月後に施行したCT検査では一部遺残した仙骨周囲の静脈瘤は虚脱していた.明らかな門脈圧亢進症を疑う所見はなく,先天性のものが疑われた.

  • 村松 賢一, 渡邊 正明
    2018 年 29 巻 3 号 p. 345-348
    発行日: 2018/07/18
    公開日: 2018/07/18
    ジャーナル フリー

    症例は41歳女性.数日前から右下肢の痛みを自覚し,腫脹および発赤を認めたが改善したため放置した.しかし,2日前から左下腿にも同様な所見を自覚したため,当院当科受診となった.血管エコーでは両側大伏在静脈に充満する血栓を認め,造影CTでは両肺動脈分枝部に血栓が認められた.両大腿静脈内に及ぶ大伏在静脈内の血栓が多く認められた.手術は大伏在静脈を高位で切開し中枢の血栓を除去した後に高位結紮を行った.術後経過良好である.本症例のように血栓が伏在静脈本管に発生し中枢へ進展していくものは上行性血栓性静脈炎と称され深部静脈血栓症や肺塞栓症の原因となり,時に致命的となり注意が必要である.

  • 中村 峻輔, 藤本 竜平, 竹中 皇, 谷口 裕一, 中西 浩之
    2018 年 29 巻 3 号 p. 395-398
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー

    血栓性静脈炎を合併した下肢静脈瘤に対して悪性疾患スクリーニングを行い早期腎癌を発見した症例を経験した.症例;81歳男性.主訴;左大腿内側部痛,両下肢静脈瘤.既往歴;高血圧,虫垂炎.現病歴;約10年前より下肢静脈瘤を認め,1カ月ほど前から左大腿部の発赤,疼痛出現し,近医受診.加療目的にて当科紹介.両下肢静脈瘤および左下肢の血栓性静脈炎を認めた.血管エコーでは両側の大伏在静脈の逆流および左大伏在静脈内に血栓を認めた.全身単純CTを行い,右腎に5 cmの腫瘤を認めた.造影CTで腎細胞癌が疑われた.左下肢静脈瘤に対して大伏在静脈のストリッピング手術および血栓除去を施行した.3カ月後,右腎摘出術を施行.病理所見は,淡明細胞型腎細胞癌の診断であった.3カ月後,右下肢静脈瘤に対し血管内焼灼術を行った.術後経過は良好であった.血栓性静脈炎を合併した下肢静脈瘤は悪性疾患の合併も考え,全身スクリーニングの必要もあると考えられた.

  • 光岡 明人, 笹栗 志朗, 井上 芳徳
    2018 年 29 巻 3 号 p. 405-408
    発行日: 2018/11/15
    公開日: 2018/11/15
    ジャーナル フリー

    大腿骨転子部骨折術後に大腿深動脈仮性動脈瘤が発生し,さらに動静脈瘻が合併した症例報告は非常にまれである.【症例】80歳男性【現病歴】右大腿骨転子部骨折の診断で大腿骨頭固定術が施行された.術後鼠径部疼痛が持続したが,術後疼痛として経過観察された.2カ月後,右鼠径部の拍動性腫瘤が指摘され,次第に増大してきたため当院転院搬送された.下肢超音波,CTにて大腿深動脈に61×82 mm大の仮性動脈瘤が指摘された.【手術方法】左総大腿動脈を逆行性穿刺し,対側アプローチにて穿孔部大腿深動脈をバルーン遮断にて血流遮断後,仮性動脈瘤壁を切開した.しかし仮性動脈瘤の内部からの逆流にて止血困難であり,動脈瘤内より出血部位を同定すると大腿静脈と仮性動脈瘤が交通していた.【まとめ】大腿骨転子部骨折術後に仮性動脈瘤に動静脈瘻が合併する可能性を十分念頭に入れる必要がある.

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