静脈学
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32 巻, 3 号
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原著
  • 宇藤 純一, 塚本 芳春
    2021 年 32 巻 3 号 p. 319-322
    発行日: 2021/09/28
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル オープンアクセス

    大伏在静脈弁不全154例168肢に対し細径ファイバー(ELVeS radial 2ring slim fiber,直径1.27 mm)を用いて血管内レーザー焼灼を行った.さらに側枝静脈瘤を16 G静脈留置針で穿刺し,内腔へファイバーを挿入し出力5 Wで焼灼した.術後1カ月目に焼灼部位を観察したところ61%の症例で明らかな硬結が認められた.術後6カ月目に再評価したところ,6割の患者で硬結は消失し,エコー上の径は術後1カ月目と比べて44%に縮小していた.瘤焼灼に伴う皮膚熱傷や神経損傷,創感染,血栓性静脈炎などの有害事象は認められず,整容性に優れた治療が可能であった.

  • 春田 直樹, 新原 亮
    2021 年 32 巻 3 号 p. 323-329
    発行日: 2021/11/25
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル オープンアクセス

    下腿うっ滞性皮膚炎や難治性潰瘍皮下に存在する不全穿通枝(incompetent perforating vein: IPV)を遮断する術式として考案されたのが2014年に保険収載された内視鏡下筋膜下穿通枝切離術(subfascial endoscopic perforator surgery: SEPS)である.われわれもSEPSを行ってきたが,SEPSでは対応できないIPVも経験し,この解決策の一つが経皮的穿通枝焼灼術(percutaneous ablation of perforators: PAPs)で,63例65肢のIPV 102本にPAPsを行った.使用機器に変遷があり,現在は1470 nmレーザー装置と外径の細いレーザーファイバーを用い,linear endovenous energy densityは平均68.1±14.9 J/cmであった.PAPsの利点としては,目的のIPV閉塞を術中に超音波検査で確認できることで,術中閉塞率は100%であった.さらに,解剖学的理由でSEPSでは処理できない部位のIPVも処理可能であった.

  • 鉢呂 康平, 木下 武, 白石 昭一郎, 和田 厚幸, 鈴木 友彰
    2021 年 32 巻 3 号 p. 331-335
    発行日: 2021/11/25
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル オープンアクセス

    2019年12月から下肢静脈瘤に対して新たに保険適用になったシアノアクリレート系接着材による血管内塞栓術と血管内高周波焼灼術の術後成績を比較した.当院で2020年6月から2021年2月の間に一次性下肢静脈瘤に対して血管内塞栓術が施行された50例59肢と,2019年7月から2020年6月の間に血管内高周波焼灼術を施行された50例68肢を対象とした.二群間で術後合併症の発生頻度と,術後3カ月における閉塞率に差は見られなかった.治療血管長は血管内塞栓術を施行した群の方が短かったが,術前と術後3カ月における静脈疾患臨床重症度スコアは二群間で差は見られなかった.熱焼灼に伴う合併症がなく,TLA麻酔が不要であるため下肢への穿刺回数が大幅に減った血管内塞栓術は,血管内焼灼術と比較して有効性と安全性が同等なより低侵襲な治療法として重要である.

  • 宇藤 純一, 塚本 芳春
    2021 年 32 巻 3 号 p. 337-341
    発行日: 2021/11/25
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル オープンアクセス

    血管内焼灼術を行った大伏在静脈(GSV)弁不全2876肢を対象に術後神経障害の発生頻度について検討した.神経障害は「術後1カ月の時点で,患肢に明らかな神経症状を新たに有するもの」と定義した.神経障害が70肢(2.4%)に発生した.焼灼距離40 cm未満の患者群での発生頻度は0.8%であったのに対して,焼灼距離40 cm以上群では4.6%と5倍以上の頻度で神経障害が認められた.この傾向はレーザーでも高周波でも同様に観察された.今後は,膝下GSVの焼灼条件を再考する必要があると思われた.

  • 山本 崇
    2021 年 32 巻 3 号 p. 359-365
    発行日: 2021/12/24
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル オープンアクセス

    【はじめに】下肢静脈瘤に対する血管内塞栓術において標準的に行われる手法では治療区間の中枢側に未治療区間(スタンプ)が長く残ることが明らかになっている.それに対し,エコープローブを血管に対して長軸方向に使用することでスタンプ長を短縮する方法(スロープ法)を開発した.【対象と方法】対象は当施設で2020年9月より2021年3月に大伏在静脈に対してスロープ法を用いた血管内塞栓術を行った39人(56肢)で,治療から2–3カ月後に超音波検査でスタンプ長を測定した.【結果】全例において大伏在静脈は閉塞し,27%で大伏在静脈内に限局した一時的な血栓を,9%で塞栓部位に沿った炎症反応を認めたが,いずれも2カ月以内に軽快した.スタンプ長は14.1±7.7 mmであった.【結語】スロープ法を用いるとスタンプ長を短くすることが可能となり,スロープ法に起因する合併症は生じなかった.標準的な治療法で経験を積んだ医師がより治療精度を高めるために有用だと考える.

  • 洞井 和彦, 髙井 文恵, 吉良 浩勝, 植山 浩二
    2021 年 32 巻 3 号 p. 373-376
    発行日: 2021/12/24
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル オープンアクセス

    難治性静脈性皮膚潰瘍症例(VLU)に対して,当施設では早期に手術療法を行い,治療期間の短縮と再発の防止に努めてきた.対象は2007年5月から2018年12月までのVLU症例38例(女性22例,年齢64.2±2.4歳)とした.治療としては圧迫療法を開始して,早期(待機日数:17.5±0.8 (6–22)日)に手術を行い,その2–3週間後に硬化療法を追加施行した.手術はストリッピング手術29例,高位結紮術7例,高周波焼灼術2例で,不全穿通枝には全例,結紮・切離術(36例)あるいは硬化療法(12例)を行った.初診時の皮膚潰瘍のサイズは4.4±0.4 (2–12) cm2であった.術後10カ月以内に全症例の潰瘍は治癒し,その期間は術後3.8±0.3 (2–10)カ月であった.当施設ではVLU症例に対して,圧迫療法に加えて早期に手術療法を行い,良好な成績が得られた.

症例報告
  • 達 和人, 乗松 東吾
    2021 年 32 巻 3 号 p. 313-317
    発行日: 2021/09/28
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は71歳女性.右変形性膝関節症にて当院整形外科に通院中.2021年2月初旬,右腓腹部の発赤,腫脹,熱感が出現し深部静脈血栓症(DVT)を疑われ,当科受診.血管エコー検査では,右膝窩静脈や右大腿静脈に血栓は認めず,右膝窩静脈と併走する比較的太い静脈内に可動性血栓が充満していた.この静脈は筋膜下を走行し,膝関節裏で膝窩静脈に合流していた.DVTと診断,抗凝固療法を開始した.この時期は新型コロナウイルス感染症拡大による医療逼迫が問題で,当院周辺の基幹病院でも肺血栓塞栓症(PTE)など緊急症例の受け入れが困難であった.抗凝固療法中にもPTEを発症するリスクがあること,PTEに対する緊急治療を受けにくい医療情勢であること,血栓が存在する静脈は体表に近くアプローチしやすいことなどを説明し,血栓除去術の方針とした.手術は局所麻酔下に腹臥位で施行,術後の造影CTで腓腹筋静脈血栓症であったと診断した.

  • 岡島 年也
    2021 年 32 巻 3 号 p. 367-372
    発行日: 2021/12/24
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル オープンアクセス

    下大静脈血栓症(inferior vena cava thrombosis: IVCT)は深部静脈血栓症(deep vein thrombosis: DVT)の3~15%の頻度で認められ,一般的なDVTの要因に加えて下大静脈(inferior vena cava: IVC)の先天異常や悪性疾患,外傷などを合併した場合にはIVCTが発症しやすい.また,IVCT診断時には肺血栓塞栓症を12%合併しているとの報告や慢性期には血栓後症候群が危惧されるため,IVCTは急性期から長期にわたり適切な対応が求められる.今回,原因として先天性血栓性素因の関与を明確に否定できなかったが,持続する下痢と下肢脱力を契機に診断し得た無症候性IVCTに対してリバーロキサバン単剤療法で血栓の退縮が認められた1例を経験したので報告する.

地方会抄録
ガイドライン
  • 白杉 望, 小畑 貴司, 杉山 悟, 広川 雅之, 孟 真
    2021 年 32 巻 3 号 p. 349-353
    発行日: 2021/12/23
    公開日: 2021/12/23
    ジャーナル オープンアクセス

    下肢静脈瘤の診断,手術適応を含めた治療計画の決定においては,超音波検査が重要である.したがって,超音波検査が正しく施行されることと同時に,検査結果が正しく記載されることも重要である.一方,令和2年度の診療報酬の改訂において,下肢静脈瘤血管内焼灼術の保険審査が厳格化された.具体的には,焼灼術の保険請求にはガイドラインを遵守することが算定要件に入り,超音波検査では,詳細な記録や画像保存についての算定要件が新設された.これらを踏まえて,日本静脈学会ガイドライン委員会は,「下肢静脈瘤の超音波検査所見の標準的記載法」を定めた.

その他(手術の工夫)
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