日本写真学会誌
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59 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 桑畑 進, 米山 宏
    1996 年 59 巻 6 号 p. 672-679
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    導電性高分子であるポリアニリン膜に, レドックス色素や半導体粒子などの光感受性物質を取り込ませることにより光画像形成能を付与した, 筆者らの一連の研究を概説する。レドックス色素のひとつであるメチレンブルーは, ナフィオン高分子を支持電解質に用いることによって, ポリアニリン膜に取り込ませることができ, 還元剤としてアスコルビン酸を溶解した酸性水溶液中に, 調製した膜を浸漬して光照射すると, メチレンブルーが光還元されて無色のロイコメチレンブルーとなる。この反応の反応速度は, ポリアニリン膜中にメチレンブルーとともにRu (bpy) 32+を取り込ませることにより大幅に向上する。メチレンブルーの光還元反応は, 光を照射した部分のみで起こり, 膜上に光画像を形成することができる。一方, TiO2, wo3, CdSなどの半導体粒子を分散させたアニリンの酸性水溶液を電解酸化することによって, これらの粒子を取り込んだポリアニリン膜を調製することができる。調製した膜を, 正孔捕捉剤としてメタノールが存在する水溶液あるいは非水溶液に入れて光照射を行うと, 半導体粒子の励起電子によるポリアニリンの還元反応が起こる。光照射前にポリアニリンを脱プロトン化すると, 光照射部分のみが光還元されて, 光画像を形成することができる。この反応の場合, 正孔捕捉剤の酸化によって生じるプロトンと光励起電子が反応に関与しており, そのような反応様式が光照射部分のみを還元する環境をもたらす。
  • 彌田 智一, 雑賀 哲行, 王 融
    1996 年 59 巻 6 号 p. 680-689
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    Recent progress in molecular functional materials is described in terms of multifunctionalization and ordered assembly. Multi- mode chemical transducer is introduced as an example of the former and the latter is demonstrated using azobenzene derivative ultra- thin film.
  • 岡野 幸夫
    1996 年 59 巻 6 号 p. 690-698
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ディジタルフィルタリングでは任意の特性をもつ画像を作り出すことができる。
    ここでは画像の特性に大きな影響を与える低域のMTFを制御するため, 1×21の大きなコンボリューションカーネル (LSF) を原画像に掛け合わせた。
    画像の性質, シーンに応じて好ましいMTF特性があり, 12種のMTF特性を設定し, コンボリューションカーネルを計算で求めた。この特性を持つ画像はディジタル演算により作成し, 主観評価を行った。その結果, 視覚感度の高い低周波数領域ではMTFを高くしすぎると評価が低くなり, 最適MTF値が存在した。ポートレート画像では肌色領域のみをローパス特性とし, それ以外の領域の鮮鋭度を高めた画像が最も評価が高かった。
  • 久保 由治
    1996 年 59 巻 6 号 p. 699-704
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    “認識” と “光学的センシング機能” を併せ持つ合成クロモジェニックレセプターの開発を目的とした最近の研究成果として, 二種類のアゾメチン誘導型カリックスアレーン類の合成法とそれらの興味ある性質と機能について述べる.インドアニリンをクロモフォアとして結合させた化合物はウラニルイオンとの選択的錯形成に伴って約60nmの長波長シフトを引き起こし, 当該イオンの比色センサーとしての可能性を示唆した.また他方のビス (インドフェノール) 誘導体はブチルアミン類との形状選択的な酸塩基反応に基づいて大幅に色調が変化することを見出した.
  • 原田 紀枝子, 串田 正人, 杉田 和之
    1996 年 59 巻 6 号 p. 705-710
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    感光性p-N-N一ジメチルアミノベンゼンジアゾニウム塩化亜鉛複塩 (DZn) はカラーブラウン管のフエースプレートのための可視光形成膜-光粘着膜に応用されている。DZnを含む膜へ18-crown-6を添加したところ蛍光体の発光強度が増加した。18-crown-6の亜鉛イオンへの配位はFTIRスペクトルの測定から確認できた。膜中の塩化亜鉛の吸湿性は18-crown-6の亜鉛イオンによる配位により抑制されたため, 塩化亜鉛の着色が防がれ, 発光した光がその分だけ膜を透過することができる。これらの理由により18-crown-6を含む膜の発光強度は増加したと考えられる。18-crown-6の添加で光分解が抑制される。18-crown-6を含む膜中のDZnの加熱しながらの光分解はジアゾニウム部分を18-crown-6との複合体から解離させることにより促進できた。
  • 岩崎 仁, 雜本 崇, 田中 俊夫
    1996 年 59 巻 6 号 p. 711-717
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    マルチチャンネル分光測光法により臭化銀・ヨウ化銀混晶粒子形成の初期過程を研究した。種々のハロゲン化物組成混晶試料の吸収スペクトルの経時変化をそのハロゲン化物組成と対応させて検討した。均一なヨウ臭化銀相を形成する組成よりやや大きい割合でヨウ化銀を含む混晶試料 (Agl: 50mol%) は, 粒子形成のごく初期において純ヨウ化銀クラスターに特徴的な407nmにピークを持つ吸収を示さなかった。このことから粒子形成開始直後の不安定な混晶クラスター中には純ヨウ化銀相は存在しないと結論した。ヨウ化銀形成時の試料液中に過剰イオンとして臭化物イオンが共存すると, ヨウ化銀クラスターの成長がその影響を受けることがわかった。これは生成したクラスターに吸着するイオン種の違いによるものと考えられた。
  • トリフェニルアセトニトリルの光分解
    太田 和男, 上野 剛志
    1996 年 59 巻 6 号 p. 718-728
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    我々はトリフェニルアセトニトリルのシクロヘキサン溶液を酸素および窒素雰囲気中で光照射し, 生じた光分解反応生成物を分離精製し, 機器分析により構造決定した。
    酸素雰囲気中における光分解反応生成物は, 2-ビフェニリル-フェニルアセトニトリル, シアノフェニル-ジフェニルメタンおよびビフェニルであった。窒素雰囲気中の光分解反応生成物は酸素雰囲気中で既に得られた化合物の構造と良く一致し, その収率もビフェニルを除きほゞ同じであった。
    光分解反応の生成過程を調べるために, 得られた光分解反応生成物を再び光照射し, それら生成物問の反応順位をUV吸収スペクトルより調べた。さらに, 薄層クロマトスキャナーにより反応過程の途中で生づる生成物を追跡した。その結果, TPANの光分解反応の過程は二つの生成物の系列で同時的に反応が進行する並列的な反応過程が推定された。
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