導電性高分子であるポリアニリン膜に, レドックス色素や半導体粒子などの光感受性物質を取り込ませることにより光画像形成能を付与した, 筆者らの一連の研究を概説する。レドックス色素のひとつであるメチレンブルーは, ナフィオン高分子を支持電解質に用いることによって, ポリアニリン膜に取り込ませることができ, 還元剤としてアスコルビン酸を溶解した酸性水溶液中に, 調製した膜を浸漬して光照射すると, メチレンブルーが光還元されて無色のロイコメチレンブルーとなる。この反応の反応速度は, ポリアニリン膜中にメチレンブルーとともにRu (bpy)
32+を取り込ませることにより大幅に向上する。メチレンブルーの光還元反応は, 光を照射した部分のみで起こり, 膜上に光画像を形成することができる。一方, TiO
2, wo
3, CdSなどの半導体粒子を分散させたアニリンの酸性水溶液を電解酸化することによって, これらの粒子を取り込んだポリアニリン膜を調製することができる。調製した膜を, 正孔捕捉剤としてメタノールが存在する水溶液あるいは非水溶液に入れて光照射を行うと, 半導体粒子の励起電子によるポリアニリンの還元反応が起こる。光照射前にポリアニリンを脱プロトン化すると, 光照射部分のみが光還元されて, 光画像を形成することができる。この反応の場合, 正孔捕捉剤の酸化によって生じるプロトンと光励起電子が反応に関与しており, そのような反応様式が光照射部分のみを還元する環境をもたらす。
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