日本写真学会誌
Online ISSN : 1884-5932
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60 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • ジヒドロピリジンによるハロゲン化銀結晶の造核
    小尾 直紀, 竹内 淳, 児島 靖彦, 重光 靖郎
    1997 年 60 巻 4 号 p. 228-231
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    著者らが先に見いだしたピリジニウム塩を用いた硬調化システムにおける造核反応メカニズムについて検討した。ピリジニウム塩還元体のモデル化合物として1-benzyl-1, 4-dihydronicotinamide (BNAH) を用い, BNAHの造核活性について検討した。その結果, BNAH自身はハロゲン化銀結晶を造核しないが, ヘキサシアノ鉄 (III) 酸カリウムにより酸化される過程において, 造核活性種を放出することを写真的に証明した。この結果は, ジヒドロピリジン誘導体が, 造核反応の中間体として関与しており, 造核活性種のプレカーサーの役割を担っているという仮説を支持するものである。
  • 岡野 幸夫
    1997 年 60 巻 4 号 p. 232-240
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    MTF (Modulation Transfer Function) は画像システムの像特性を表現するのには, 最適の方法である。結像システム総合のMTF特性は要素MTFの掛け算として表すことができる。ここではディジタルスチルカメラの総合MTF特性をそれぞれの要素となるMTFを理論的に解析し, 設計MTFを計算した。ディジタルスチルカメラではディジタルフィルタリング処理により, MTF値を特定周波数範囲で1よりも高くし, 画像強調を行うことが可能である。MTF値が1よりも大きい結像特性をもつディジタルスチルカメラのMTF計測を行った。ディジタルスチルカメラのMTF計測には各種の方法が考えられるが, エッジ計測からMTFを計算する方法, 正弦波チャートから計測する方法, 矩型波チャートから求める方法について行った。その結果, 計測MTF曲線は設計MTFとよく似た曲線となるが, 極大値がチャートのコントラストにより変化すると推察された。このため, コントラストを変えたエッジチャートを作成し, そのMTFを計測した。
  • 荒井 宏子, 田中 益男, 久保 走一
    1997 年 60 巻 4 号 p. 241-247
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    Autochrome plateは工業的に生産された最初のカラー感光材料で1907-1933年の問に実用されていた。今日, 残されているAutochrome Plateの色は, 加法混色の3原色微粒子フィルターの退色の程度により可成りの違いがある。ここでは, 撮影後の処理あるいはその後の保存条件などが異なり画像の色にかなりの相違を生じた2枚のAutochrome Plateを試料として, 微粒子フィルターの色を顕微分光測光装置により測定した。その結果, Autochrome Plateの退色は主に青原色フィルターで生じることが明らかになり, 退色した試料の補修方法に対する示唆が得られた。また, Autochrome Plateの原色はNTSCカラーTVの画像再現原色に近似していることも明らかになった。
  • 米澤 義朗, 朝見 賢二, 石澤 英亮
    1997 年 60 巻 4 号 p. 248-256
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    膜中でJ凝集体を形成するシアニン色素;チアカルボシアニン色素 (Th (φ)), ナフトチアカルボシアニン色素 (Nap (φ), Nap (Et)), キノシアニン色素 (Pic, Sch), オキサシアニン色素 (Oxa), チアシアニン色素 (Tha) の中から構造の類似した次の組み合わせを選び, LB膜中で混合J凝集体を作成した;Th (φ) +Nap (φ), Oxa+Tha, Nap (Et) +Nap (φ), Pic+Sch。Th (φ)/Nap (φ)/C20 LB膜, Nap (Et)/Nap (φ)/C20 LB膜の吸収スペクトルは単一のJバンドで特徴づけられるのに対し, Oxa/Tha/HDLB膜とPic/Sch/C20LB膜では2本のJバンドが見い出された。これらの混合J凝集体の吸収特性を, コヒーレントポテンシャル近似 (CPA) にもとついて詳細に検討した。その結果, Th (φ) +Nap (φ), Nap (Et) +Nap (φ) の組み合わせでは融合型 (HA型) 凝集体が生成するのに対し, Oxa+Thaでは自己主張型 (HP型) 凝集体の生成が予測された。Pic+Schの組み合わせはHA型とHP型の中間的性格を持つことが示された。
  • 青柳 象平, 松田 浩之, 上野 義明, 橋口 敬輔
    1997 年 60 巻 4 号 p. 257-262
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ゼラチン溶液のCD測定における濃度と温度の影響を検討した。溶液中に形成されたゼラチンの高次構造は同温下では稀釈後も保たれると云われている。これはCD測定上重要な条件であり, 以下の確認を行った。0.25%溶液を成熟後, 直接および, 25倍稀釈して測定したもの, 対照として最初から0.01%で成熟させ測定したものを比較した。その結果, 稀釈すると一部ではあるが必ず構造の解離が起こることがわかった。その程度は成熟温度が低いほど高い。濃度が高く温度が低いほど弱い分子間構造の割合が高くなるためと思われる。また, 濃度の高いことは基本的に構造形成を促進するが, 濃度の効果は温度の低下と共に減少する。このようにCDの温度依存性がゼラチン濃度により異なることは分子内および分子間トリプルヘリックスの区別がCDにあらわれた1つの徴候ではないかと思われる。
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