日本写真学会誌
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62 巻, 1 号
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  • 香川 宣明, 中村 正樹, Zheliu CHEN, 水上 裕道, 押山 智寛, 森田 直子
    1999 年 62 巻 1 号 p. 2-10
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    メチン鎖のα-位にフッ素原子を置換した新規なシアニン色素を合成し, これら色素の吸収スペクトル, 酸化還元電位を測定して無置換色素と特性比較を行った。F置換色素は溶液吸収極大が25-30nm長波長シフトし, 分子吸光係数を低下させ, 半値幅が広がったスペクトルを与え, 色素の酸化電位を卑に, 還元電位を貴にシフトさせた。また, 漂白定着溶液と安定化溶液中の色素消色反応を加速させる一方で, ハロゲン化銀乳剤への吸着を低下させた。これらの新規色素は対応するメチン基無置換色素に写真特性が近似した分光増感能を有していた。
  • 日置 孝徳
    1999 年 62 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    分光増感において強色増感, 特に正孔捕獲型強色増感は重要な技術である。強色増感剤の正孔捕獲能力の速度論的指標を得るために, 正孔捕獲型強色増感剤から1電子酸化されたシアニン色素 (色素正孔) への1電子移動反応の速度定数を, pH=2から12の範囲で測定する方法を開発した。次に, 電子移動反応の再配置エネルギーを, 速度定数と反応の自由エネルギー変化の間の関係に基づいて求めた。再配置エネルギーは小さいほど, 電子移動は速く進行する。正孔捕獲型強色増感剤に共有結合で連結されたシアニン色素に関する蛍光消光実験により, 小さな再配置エネルギーを持つ強色増感剤部分は, シアニン部分からの蛍光を効果的に消光し, 対照的に大きな再配置エネルギーを持つ強色増感剤部分は, シアニン部分からの蛍光を消光しないことが分かった。
  • 大屋 豊尚, 日置 孝徳
    1999 年 62 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    イミダゾ [4, 5-b] キノキサリン環と9-オキソピラゾロ [5, 1-b] キナゾリン環とを有する新規なテトラメチン減感色素1を合成し, その構造と物性との関係を調べた。色素1のイミダゾ [4, 5-b] キノキサリン環に電子吸引性基を導入すると, 色素の酸化電位および還元電位は貴になり, HOMOおよびLUMOレベルが低下することが示唆された。色素1は求核試薬と容易に反応し, メチン鎖炭素への付加体を与えた。色素1へのOH-の求核付加反応をアセトニトリル溶媒中で行うことにより付加体を単離し, 機器分析により構造を明らかにした。付加反応の速度は色素のLUMOレベルと相関した。
  • カプラーの親水性が与える影響
    須田 美彦, 朝武 敦
    1999 年 62 巻 1 号 p. 22-30
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    イエローカプラーが塩化銀の現像速度に及ぼす影響を調べたところ, 親水性のバラスト基を有するカプラーが現像の開始を遅らせることを見出した。このようなカプラーを含む油滴は疎水性のバラスト基を有するカプラーを含有する油滴より多量の現像主薬を吸収する。その結果, 現像初期において親水性ゼラチン相の現像主薬濃度が不足し, 現像の開始が遅れると考察した。
  • 分子内水素結合を利用した画像色素の新しい安定化技術
    北 弘志, 飯塚 宏之, 大福 幸司
    1999 年 62 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    画像安定剤を分子内に組み込んだ1H-ピラゾロ [5, 1-c]-1, 2.4-トリアゾールマゼンタカプラーについて合成した。このカプラーから誘導される画像色素 (CD-3アゾメチン色素) の耐光性は, 安定剤とカプラー骨格をつなぐ連結基の長さに影響されることがわかり, 原子数5の連結基を有する色素で耐光性が極大になることがわかった。この要因を1HNMRと分子動力学計算から解析したところ, 連結基の原子数が4または5の場合に, 画像安定剤末端のスルポニル基 (-SO2-) とCD-3に由来するスルホンアミド基 (-NHSO2-) の間に分子内水素結合形成が認められ, その結果, 画像安定剤部分と色素母核とが接近し, 混み合ったコンフォメーションをとることで, 耐光性を向上させていることが示唆された。
  • 北 弘志, 佐藤 浩一
    1999 年 62 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ピラゾロトリアゾールマゼンタ色素 (以下PT色素と略記) をシリカゲル表面に化学結合させたHPLC固定相 (SP-1) を用い, 有機溶媒 (HPLCの展開溶媒) 中におけるPT色素とアミノフェノール系画像安定剤との相互作用エンタルピー (-ΔH0) を測定した。さらに, 得られた相互作用エンタルピー (-ΔH0) と一重項酸素消光速度 (log kq) とを用いることにより, この両者と画像安定剤の槌色防止効果との間に良好な相関があることを見い出した。
  • 吉川 将, 佐々木 博友, 市川 慎一, 小島 哲郎
    1999 年 62 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    漂白定着液の低補充化に伴うチオ硫酸塩の分解に起因した硫黄の析出 (硫化) を抑制することが出来る, スルフィン酸類を開発した。
    置換基の異なるアリールスルフィン酸類を数種合成し, これらの単体硫黄との二次反応速度定数 (log k2) と, 硫化が始まる時間との相関から, 硫化防止に効果的なlog k2の範囲を示すことが出来た。
  • 小林 裕幸, 遠藤 正也, 大川 祐輔, 大野 隆司
    1999 年 62 巻 1 号 p. 50-52
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    いわゆる “ヒドラジン効果” の機構はSirnsonによって提案されている。それによると, PQ現像液中ではN'-アシルーN-フェニルヒドラジン (R-Ph-NHNH-COR1) はp一ベンゾキノン (Q) によってN1-アシルーN-フェニルジアゼン (R-Ph-N=N-COR') に酸化され, R-Ph-N=N-COR'は加水分解され, 強還元性物質フェニルジアゼン (R-Ph-N=NH) となり, 未露光ハロゲン化銀をカブラせる。今日この機構は一般に受け入れられているが, R-Ph-N=NHの生成をうらづけるような実験結果は未だ報告されていない。本研究は分光電気化学法を用いてこのうらづけを得ることを試みたものである。実用の系に近いpH11.5のアセトニトリル/水 (1/1) 溶液中でN一ホルミルーN-(4-フェニルスルフォンアミドフェニル) ヒドラジンをQで酸化すると, 350nmに吸収をもつ物質が生成した。この溶液のサイクリックボルタモグラムと同時に測定された350nmでの吸光度変化から, 350nmに吸収極大をもつこの物質が-1.1Vvs.Ag/AgCl付近で還元され始めること, そしてこの還元生成物の一つはこれと同じ電位-1.1V付近で, もう一つの生成物は-0.5V付近で酸化される非常に強力な還元性物質であることがわかった。
  • 田部 洋, 本永 雅郎, 和田 安弘, 山田 勝実, 浜野 裕司
    1999 年 62 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    還元増感剤として用いられるジメチルアミンボラン (DMAB) による写真乳剤の還元処理におけるカブリ核形成とその成長過程について検討された。DMABのアルカリ溶液で処理した単粒子層臭化銀乳剤の透過電子顕微鏡観察からは, DMABによって臭化銀結晶表面に多数の微小銀核がランダムに形成され, 球形の銀粒子へ成長していく様子が示された。また, 銀電極でのDMABのアルカリ水溶液のアノード反応はゼラチンの吸着によって著しく抑制されることが判った。DMABによる写真乳剤の還元過程は, 銀核での自己触媒的還元反応ではなく, 結晶表面のAg+イオンとの酸化還元反応で進行し, 生成した銀原子が凝集してカブリ核を形成すると考えられた。
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